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ISETAN MEN’S + 丸正

ISETAN MEN’S + 丸正

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モノつくりサイト#16は、メンズのビジネスベルトについてのストーリー。ベルトというと、ほとんどの方は、真直ぐのものを思い浮かべると思うのですが、今回ご紹介するのは、緩やかな円弧状の“カーブベルト”。伊勢丹メンズ館で、発売当初からのロングセラー商品です。身体に馴染むよう設計されたこのベルトは、着けたときのフィット感が心地よく、ベルト自体にも負荷がかかりにくいので、傷みが軽減できるという特徴があります。

カーブベルトの生みの親でもある株式会社丸正の太田さんと、イセタンメンズのバイヤー田畑さんにお話を伺い、熟練の職人さんたちによる「すべて手作業」のモノつくりの現場で、その人気の秘密を探っていきます。


すべての世代のお客さまから支持されるベストセラー、カーブベルト

すべての世代のお客さまから支持されるベストセラー、カーブベルト

田畑 智康
ISETAN MEN’S バイヤー

新宿のメンズ館のベルト売り場では、様々なブランドの品揃えがある中で“ISETAN MEN’S”のベルトの売り上げが全体の3割を占めるのですが、中でも一番ご好評いただいているのが、今回ご紹介するこのカーブベルトです。メンズ館だけでも年間2000本お買い求めいただいています。すごいのは、若い方からご年配の方まで、幅広い世代のお客さまから支持していただいていることですね。

ベルトというアイテムは、どちらかというと脇役。アクセサリーであると同時に道具でもある。ブランドの知名度などより、道具としての“モノの良さ”で選ばれるお客さまが多いことが、その理由だと思います。


太田 雅之
株式会社 丸正
常務執行役員

弊社は1956年に浅草で創業し、今年61年目を迎えるベルトを中心としたサプライヤーメーカーです。創業当初は、クロコダイルやトカゲなど、爬虫類のベルトを中心に扱っていましたが、時代とともに牛革が中心となってきました。

カーブベルトの開発は今から8年前、伊勢丹の当時の商品本部長さんから「何か今までと違った紳士物のベルトを作って欲しい」とリクエストをいただいたことがきっかけです。そこから、様々な開発への試行錯誤が始まったわけです。



身体にフィットし、スーツのシルエットを崩さない

身体にフィットし、スーツのシルエットを崩さない

田畑:
伊勢丹メンズ館には、ビジネスマンのお客さまがたくさん来店されます。ベルトを選ぶ際、もちろんファッショントレンドも気にしていらっしゃるが、スーツのシルエットを崩したくないという方が多い。一般的なストレートベルトだと、座ったときにパンツの後ろに浮きが出てしまう。カーブベルトは、身体にフィットするので、パンツのシルエットを崩さない。つけ心地の良さと、大切なスーツのシルエットを崩さない、というのがカーブベルトの最大の特徴です。

太田:
通常のストレートベルトは、長年使用するうちに徐々に身体に馴染んで、カーブ状に伸びて変形します。しかし、馴染んだ頃には、ベルトが傷んで使えない状態になっている。最初からカーブしているということは、買ったその日から身体にフィットするということなのです。

ベルトをカーブさせる発想は、もともとレディース・ベルトから生まれたものです。80年代、ボディコンシャス・ブームのときに太いベルトが流行ったのですが、ベルトの幅が太いと、身体にフィットせず心地よくない。それを解消するため、ベルトにカーブをつけたのが始まりです。そのアイデアを、紳士用のベルトに応用できないかと考えました。スラックスを分解して、ウエストのカーブの角度を探るなど、試行錯誤を繰り返し完成に至りました


熟練職人の「手」による、見事なしごと

熟練職人の「手」による、見事なしごと

田畑:
カーブベルトは、すべての工程を職人さんの手作業で作っていただいています。革は天然のものなので、一つひとつ状態が違う。素材の状態に合わせて、裁断やすきや仕上げの方法を調整するのは、機械化されたところでは対応できない、手作業でなければできない技術なのです。

太田:
まず最初に裁断。ストレートベルトは機械で出来ますが、カーブベルトは木型を当て、手で一本一本裁断していきます。表材、裏材、芯材、すべてのパーツを手でカットするのです。

次に、貼り合わせ。大量生産では機械で糊付けしますが、このベルトはすべて手。接着の際に、裏材の端をのりしろ分大きく裁断し、表に返してサイドの裁断面を隠す。これは国内で丸正が一番最初に手掛けた仕様、「フランス仕立て」と言って、手触りがよく耐久性の優れたベルトになるのです。

田畑:
サイドの仕上げがすごくきれいですよね。ベルトは毎日のように使う道具、使用頻度が高いと劣化が早い。縫製がしっかりしてないモノは、ここから壊れてくるんです。

太田:
さらにミシンでステッチをかけ、念力という機械を使って、縫い目に沿って圧着します。盛り上げたシルエットの陰影をはっきりと出していくためです。

職人たちは、時には、道具までをも工夫しながら自作します。みんな、細部までのこだわりを持って作っているんです。最後に、バックルを手縫いで付けます。機械では出せないハンドメイドならではの温かみが出るんです。

田畑:
初めて作業工程を見た時は「ここまで手作業で作っているのか」と、本当に驚きました。



“究極のベーシック”、カーブベルト

“究極のベーシック”、カーブベルト

田畑:
ベルトには、二つの役割があると考えています。一つは、道具としての役割。パンツをしっかり留め、そのシルエットを美しく見せること。もう一つは、アクセサリーとしての役割です。ジャケットを脱いだ瞬間に見える、ベルトのバックルの佇まいや、帯の素材や縫製の美しさは、大変重要な要素だと思います。このカーブベルトは、シンプルなデザインですが、素材や縫製など細部まで拘り抜いた“究極のベーシック”と言えるのではないでしょうか? 大切な洋服のシルエットを崩さない。少し脇役のようなアイテムですが、ビジネス用ベルトにとって、脇役に徹することはとても大切なことだと思います。

太田:
ベルトは、日々使う道具なので耐久性が求められます。また、硬すぎても柔らか過ぎても付け心地はよくありません。カーブベルトはカーブ状なので、しなやかで、型崩れしづらいのです。私は、世界的に考えても、日本のベルトが一番繊細で、完成度が高いと思っているのですが、その中でも、このカーブベルトは、日本で一番のドレスベルトと言っても過言ではないと、自負しています。


歴史の中で培われたモノつくりの技

歴史の中で培われたモノつくりの技

田畑:
使っている革は、フランスの有名タンナー“アノネイ”社のボックスカーフで、知名度も高く高品質の素材です。皮革商品というのは、一同に並ぶと、どれがいい革か、お客さまにもすぐわかる。よい素材でも、価格が高いとやはり倦厭されてしまいます。カーブベルトはこの価格帯のベルトとしては、素材が際立って良いのです。丸正さんは、タンナーさんとダイレクトに近い形で素材の仕入れをされている。それもまた、丸正さんの強みだと思います。

太田:
弊社は、現在日本以外に中国とバングラデシュに工場を持っています。グローバルな展開をすることによって世界の有名タンナーとのつながりが生まれ、良い素材をより安い価格で調達することが可能になりました。また、最初にお話した通り、弊社は爬虫類のベルトから始まった会社。爬虫類は全て手で裁断し接ぎ合わせて作ります。例えば、ベルトのサイド(コバ)のフランス仕立てなど、爬虫類を扱ってきた弊社だからこそ出来る技術なのです。それらすべてが、61年の歴史で培われた弊社のモノつくりの技術だと、私は考えています。


熟練職人が細部までこだわって作り上げた、カーブベルト

熟練職人が細部までこだわって作り上げた、カーブベルト

高級紳士靴でも使用されるフランスの名門タンナー「アノネイ」社のボックスカーフを使用。 ベルトへのダメージが少なく、ウエストラインがきれいに見える様、形はカーブ状になっています。