ただひたすら大豆と向き合い、豆乳と豆腐の うまさを追い求めて。

24.3.1 UP

昭和のはじめに東京・日本橋浜町で創業し、今もなお、日本の日常食を支える「小さな豆腐店」のポリシーを掲げる<MINOSUKE>。豆腐店の真髄ともいえる、豆乳の味を最大限生かした「生ゆば」、そして看板商品の製造工程を追った。

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豆乳の味を極めて作る、ごちそう感覚のゆば

初代茂木三之助が、昭和のはじめに日本橋で創業した「もぎ豆腐店」。〈MINOSUKE〉は、江戸前のすっきりした豆腐が評判を得た初代のこだわりを受け継ぐべく、その名を店名に冠し、大豆のうまさと風味をとことん楽しめる一丁を作り続けてきた。

 

日本の食卓の“日常”に欠かせない食材の一つ、豆腐の原料は大豆と海水にがり、そして水のみ。そこに職人の技と感性を加え、また食べたいと思わせる豆腐が出来上がる。

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豆乳の甘い香りが充満する作業場。京都の湯葉の名店から譲り受けた「ゆば槽」がずらりと並ぶ。

ひたすら大豆と向き合ってきたこの店の、新たな看板商品が「生ゆば」だ。大豆のおいしさをストレートに味わってもらいたい、と先代が商品化を夢見ていたが、システム構築などの難しさから断念していたものを、当代が具現化。京都からゆば作りに必須のゆば槽を取り寄せ、試行錯誤の上、2022年に誕生した。

 

ゆばに必要なのは大豆と水のみ。凝固を促すにがりは使用しない。日本各地の農家が生産した良質な国産大豆から、その時期最適な豆を精選し、水は地下深くから汲み上げた、ミネラルたっぷりの地下水を使用している。とは言え、同じ水、同じ大豆を使ってもおいしいゆばが作れるほど簡単なことではない。その時々の大豆の状態に合わせ、職人が大豆の浸漬、擦り、煮え立つ香りを見極めながら、ゆばに適した豆乳を作ることが求められる。

 

火にかけるとやがて槽の表面に薄い膜が張る。これがゆば(湯葉)だ。職人はその張り具合を確かめながら、一枚一枚丁寧にすくい上げる。これを繰り返す。作業は単純に見えるが、豆乳の味、ゆばの張りやすい濃度や温度、すくい上げるタイミングのどれが狂っても味や食感が変化してしまうから、職人も気が抜けない。

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ゆばの張り具合が変化して、味や食感が変わってしまわないよう、その日の温度や湿度に細心の注意を払い、槽の表面にゆばが張り出したらタイミングを見極め、そっと丁寧にすくい上げる。

もくもくと湯気が立ち込めるゆば槽からすくい上げられた美しい乳白色の1枚は、大豆の持つ旨みがたっぷり。おいしくてやさしい、“日常”のごちそうになる一品だ。

 

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引き上げたゆばと合わせて、豆乳も一緒にパック詰めする。

 

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生ゆば(3枚入)1,001円

※消費期限は5日

生ゆばは、すっきりとしながらも豆の味をしっかり残した豆乳と一緒にパックされている。そのため、作りたてそのままのゆばが持つ、甘みがより際立つ。やわらかな食感と繊細な風味が持ち味なので、何もつけずそのまま食べてもおいしい。寒い季節は、だし汁で少し温めいただくのも一興。そのほか、期間限定で麺のように食べる「湯葉そば」も販売。最近では、良質なたんぱく質やカルシウム、鉄分が豊富で、低カロリーな点が注目されて、おいしい健康食品として愛用する人も増えている。

極めてシンプル、ゆえにごまかしが効かない。

ゆば槽から離れて工場内を歩くと、看板の豆腐作りの現場に遭遇した。豆腐で大切な工程“盛り込み”という作業だ。凝固したばかりの豆腐を、布を敷いた型箱に盛り込んでしっかり水を抜くこの工程は、ふんわりと絶妙な加減で盛り込むには、職人の感性と技量が求められる。原材料も製造工程も、それ自体はいたってシンプル。ゆえにごまかしがきかないのだ。

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柔らかな食感が特徴の木綿豆腐「只管豆腐」の大切な工程“盛り込み”。

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型に入れたら、豆腐の重みでゆっくり水分が抜けていくのを待つ。

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只管豆腐(400g)584円

その一事のみに心を向け、一途に豆腐づくりに精を出す、という思いを込めて只管(ひたすら)と命名した豆腐。絹豆腐に近い、やわらかな食感の木綿とうふは、釜の調整がめっぽう難しい職人泣かせの一品。とろけるような舌触り、ほのかな甘み、上品で繊細な味に「これを食べるとほかの豆腐が食べられない」と言うリピーターも多い。

 

生ゆばや豆腐だけでなく、揚げやがんもも、味を左右する大切な工程は職人の手作業や感性に任せるのが、<MINOSUKE>が今後も守り続けたいポリシー。それこそ、昭和のはじめに誕生した「小さな豆腐店」の味を伝えるために欠かせない柱なのだ。

 

工場内は、毎日数時間かけて掃除しているおかげでどこもピカピカに磨かれている。職人たちが実直に丁寧に「また食べたくなる味」を生み出すのにふさわしい場所だ。

 

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「京あげ」の仕上げの工程は職人の手で。上下に返しながら、素材に負担をかけずに徐々に火を入れていく。

 

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がんもを揚げる前に成形。絶妙な空気の抜き加減でふんわり食感が生まれる。

 

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揚げ物に使うのは今では希少な伝統的圧搾製法で搾油した国産の菜種油。ふっくら仕上がり、香りにも味にも違いが出る。

 

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京あげ(1枚入)480円

通常の油揚げよりも大きく厚く、ふっくら仕上げた京風の油揚げ。職人が一枚ずつじっくり丁寧に揚げる。ふんわりとした食感があり、食べ応えもある。大豆と国産菜種油の旨みが調和しているので、油抜きせずにそのまま料理に使うのがおすすめ。焼くと香ばしく、煮物やおでんに使うとジューシーに。

 

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まいたけがんも(1個入)330円

香り豊かな国産まいたけを使用。きのこ類でも特に香り高いとされるまいたけ独特の香りとシャキッとした食感が、ふわふわ食感の豆腐生地と好相性。煮物におすすめだが、がんもそのもののおいしさを味わうなら、サッと炊くくらいがちょうど良い。ほかにたまねぎやごぼうの定番のがんもがあり、ゆり根など季節限定の商品も人気。

 

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奏 (かなで)110g 350円

※期間限定商品となります。次回の販売時期は秋頃を予定しております。

 

北海道の農家から「この豆で豆腐が作れないか」と持ちかけられた「鞍掛大豆」を使い、試行錯誤で完成した新商品。店自慢のおぼろ豆腐と組み合わせることで、青大豆のような黒大豆のような「鞍掛大豆」の独特な旨みと食感が生きる一品となった。おぼろ豆腐は軟らかい層と少し硬い層があり、豆腐を混ぜ合わせながらいただくとすべての味の調和が取れる。

 

 

 

 

Text : Mikiko Itakura

Photo:Mariko Tosa,Yuya Wada

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