<京粕漬 魚久>全行程を職人の手仕事で貫き、旬の魚の旨みを十二分に生かして。

2024.9.13 UP

見極めた魚を酒粕で熟成させる、日本伝統の粕漬けを今に伝える老舗。「旬を生かし、味を守る」という創業以来の教えを受け継ぐ、店の心意気とおいしさの秘密が随所に詰まった、製造の現場を訪れた。

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伝統の味は、魚の匠の見極めで勝負が決まる。

酒粕に魚や野菜を漬け込む粕漬けは、保存食として古くから伝わる日本が誇る食文化だ。大正3(1914)年創業の<京粕漬 魚久>では、二代目が定めた「旬を生かし、味を守る」という教えに則った粕漬けの製法を、今も職人が一丸となって支えている。

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人形町にある本店と銀座店では、職人が炭火で焼き上げた粕漬けを定食で味わえる。遠火でじっくりと焼き上げた一品は格別。

 

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皮目はパリッと、身はふっくら焼きあがったぎんだら。自宅で上手に焼くコツを店のスタッフが教えてくれる。

 

前身は「魚久商店」。日本料理の基本や粕漬けの製法を学んだ二代目が、東京・日本橋に当時珍しかった粕漬け専門店を構えた。以来60年。今や日に数トンの量の魚をさばく大店となったが、創業当時の味を守るのは、経験に裏打ちされた職人の目と手。旬の魚を見極める店の門番のような存在が、この道40年以上のベテラン、三浦利男さんだ。

「この見極めを間違えるとすべてが台無しになってしまうので、責任重大です。でも、これまでとにかくたくさん見て、触って確かめてきた経験が力になっていますね」。

今では、魚を見て触れば大体の善し悪しは判別できる匠だが、毎日緊張感を持って一日千本以上のぎんだらを検品している。

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アラスカから届いたぎんだら。脂ののりが良いのは丸くふっくらしたもの。ただ見た目だけ良く、水っぽいものも含まれる事があるので、見極めには注意が必要。

 

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1尾ずつ職人たちが切り揃えた切り身は、正面が決まった美しい形。魚種に応じて最適な大きさにされている。

 

三浦さんが合格点を出した選りすぐりの魚は、これまた卓越した職人の包丁捌きで、丁寧に切り身に加工される。切り身の工程を担当する工場長の室屋浩孝さんを筆頭に、職人たちは各々自分の包丁を持ち、毎日自らが包丁を研いで仕事に臨んでいるという。

 

ぎんだら、本さわら、銀鮭など、魚によって大きさや身の特徴は変わる。魚のどの部分に包丁を入れて切り分ければ、全ての切り身が遜色なく仕上がるか。すべて職人の包丁捌きにかかっているのだ。

「自分で買いたくなるような切り身を目指しています」と室屋さん。

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仕上がりの味わいを左右されると言われるほど重要な工程の「塩振り」。繊細な動きで、雪が舞い降りるよう。骨に近い部分や水分が多い部分など、身の性質に合わせて振りかける量を調節。

 

代々受け継がれる「粕床」は門外不出。

切り身の魚は、続いて仕上がりの味を左右するとも言われる塩振りの工程へ。特に店で一番人気のぎんだらは、身が柔らかい魚なので粕漬けにする前に塩で〆る事が肝心。塩で一旦身が締まることで、焼いた時に身がふっくらと仕上がり、風味豊かになるのだ。一晩寝かせた切り身は、創業以来変わらぬ味を守る、門外不出の酒粕に漬け込む「漬け」の最終工程へと進む。

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切り身に酒粕を塗り、さらに切り身を載せて酒粕を加え、層にして漬け込み熟成させる。職人が季節や魚の種類に応じて酒粕の適量を判断。

 

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創業当時から継承されている、しっとりと粘度のある「漬け床」をベースに、その日使う酒粕を毎日調合。酒粕と砂糖だけのシンプルな原料だが、配合の妙で独自の風味を醸し出す。

 

そもそも魚久が京粕漬と銘打つのは、京都で料理修行を積んだ初代への敬慕と、創業当時粕床に用いたのが、京都・伏見の銘酒の酒粕であることに由来している。継承されている「京粕漬」に加え、「酒粕 白味噌漬」「味噌漬」と魚種によって「漬け床」を使い分け、その色味や硬さを見極め毎日調合するのも職人の仕事。その配合や漬け込む時間などは企業秘密だが、職人たちの長年の経験と技術によって、魚種や季節に応じた最適の条件が見極められる。このように、すべての工程において職人の手仕事を貫き、伝統の味を今に伝えているのだ。

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ぎんだら京粕漬け(1切)1,080円

全身に脂が乗ったぎんだらは、アイナメやホッケに近い魚。<魚久>では、時節ごとに最もおいしい魚を選び抜いており、独自の製法により、酒粕の旨みやコクが切り身の中までしっかり浸透させているので、水洗いしても味は落ちない。粕をよく水洗いし、中火以下で焼くのが上手に焼くポイント。伊勢丹新宿店では、平日は京粕漬の焼魚、毎週水曜日の午前11時半と午後3時からは数量限定でぎんだら京粕漬などが入ったお弁当も販売する。(祝日は販売なし)

*弁当は搬入の都合で時間が前後する可能性がございます。

 

しっかり中まで味を入れている魚久の粕漬けは、ふっくら香ばしい焼きたての味わいはもちろん、冷めてもおいしいのが魅力。魚の味を十二分に生かした一品が、日々の食卓や晩酌をちょっと豊かなものに変えてくれるだろう。

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銀鮭京粕漬(1切)756円

紅鮭よりも脂のノリが良く、身がふっくら柔らかいのが特徴。<魚久>では、身が濃いオレンジ色で、脂が均質に乗ったこだわりの銀鮭。酒粕の風味が鮭の旨みを一層引き立てる仕上がり。

 

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本さわら酒粕白味噌漬(1切)756円

鯖の仲間で、別名・春告魚。ハリがあって身がしっかりしているものとされる。しっとりとした身質で、脂のノリが良いものを選び、白味噌を使い、酒粕に白味噌を加えることで口当たりがよく上品な旨みを生み出している。

 

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詰合せ(G-5) ぎんだら5切入り 5,724円

人気商品ぎんだらの詰合せ。1切れずつ個別包装してあるので、保存もしやすい。冷蔵保存で7日間、冷凍保存で30日間。7切、10切入りもある。

 

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詰合せ(T―10)10,800円

大切な人への贈答品として人気の詰め合わせセット。ぎんだら、銀鮭、めかじき、本さわら(酒粕白味噌漬)、ぶり(酒粕白味噌漬)各2切、まついか1杯、ほたて貝3粒と豪華な詰め合わせ。35.5×27.0×5.0cmの箱入り。

 

Text : Mikiko Itakura

Photo : Yuya Wada

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