2023.9.15 UP
芋煮や玉こんにゃく、さくらんぼなど、豊かな食文化や名産品を数多く有する山形県。なかでも知る人ぞ知る味といえば、日本三大和牛のひとつに数えられる「米沢牛」だろう。質の良い脂の中に、ほんのりとした甘さと旨みが感じられる銘柄牛は、現地を訪れたなら一度は食べてみたいごちそう。一方で地元の米沢市では、その米沢牛の挽肉を使った手軽なコロッケが昔ながらの故郷の味として愛されてきた。近年はご当地グルメのひとつとして県外への認知度も高まっており、現在の山形県内には、じつに200種を超える米沢牛入りのコロッケが存在するという。
<米沢 琥珀堂>は、そんな同地で2006年に創業した。米沢牛を使ったコロッケにしか出せない地元の味わいを、県外にも広めたい。そんな熱く純粋な思いからスタートして今に至る。商品はコロッケやメンチカツに始まり、米沢牛ステーキなどを盛り付けた弁当類も高い評価を得ているが、なかでも看板商品の「米沢牛コロッケ」は、2年以上もの歳月をかけて開発した自信作だ。銘柄牛の名を冠するからには、手軽に食べられるコロッケといえど、“素材と味”について妥協はできなかった。
国産のじゃがいもを蒸す。産地は固定せず、季節によって最も理想的な味わいとなるものを、全国からチョイスしている。
じゃがいもは季節によって水分量が異なるため、人の手で柔らかさやテクスチャを確かめながらじっくりとマッシュしている。
肉の旨みを引き立てるこっくりとした味付けのベースは、県内の醸造所を何軒も回って探し当てた地元の醤油。これを使った特製のたれで炊いた米沢牛のそぼろ煮を、人の手で丁寧にマッシュしたじゃがいもに混ぜ合わせて種を作る。なめらかな舌触りとやさしい甘みはどこか品がよく、しつこさが全く感じられない。女性でもするっと口に入ってしまうこの絶妙な味わいに辿り着くまで、材料やその配合、調理のタイミングなどに何度も試行錯誤を重ねたという。
コロッケの命ともいえるさっくりとした歯応えの秘訣は、荒目と中目の2種類の大きさの生パン粉を混ぜ合わせた衣にある。爆発を防ぐ特注のバッター液に浸してパン粉をつけたら、時間をおかずに急速冷凍。おいしさを保ったまま配送され、どの店舗で揚げても同じクオリティに仕上がるよう設計されている。
特製のたれで煮あげたそぼろ煮は、味を安定させるため粗熱をとってからじゃがいもと混ぜ合わせる。
種ができたら機械に入れて成形。さらに、パン粉が全体に均等につくように人の手で丸みを加える。
荒目と中目、大きさの違う2種類のパン粉を手早くまぶしていく。種類を変えることでサクッと小気味いい歯応えが生まれる。「米沢牛コロッケ」は、米沢市内の工場で1日5000個ほど生産して店舗へ配送。ふっくらと丸い形も食欲をそそる。
米沢牛コロッケ(1個)328円
1個で満足感のあるボリューム。おすすめの食べ方は、何もつけずにそのままで。ほんのり甘い米沢牛の特徴を見事に引き出した味付けは、生まれながらに完成度の高い一品として、これまで各地のグルメグランプリ等で受賞を果たしている。
同店の米沢牛に対するこだわりをさらに追求したのが、肉の味わいを全面に出した「米沢牛スペシャルメンチ」だ。よくある合挽肉ではなく、米沢牛を100%贅沢に使用した妥協なきメンチカツは、先の「米沢牛コロッケ」とは違ったパン粉の配合にし、軽めに仕上げている。揚げ物としてのサクサク感は残しつつも、肉の旨みや食感の方に重きを置いているのだ。同店でも味のバリエーションとして合挽肉を使用したメンチカツはラインナップしているが、米沢牛100%のメンチカツとなると、山形県内でもそうお目にかかれないとか。付属の塩で食べると肉の旨味もさらに深まる。胃袋に余裕があったなら、ぜひ食べ比べを楽しんでみたい。
米沢牛スペシャルメンチ(1個)638円
肉汁をじゅわっと感じる、食べ応えのあるメンチカツ。ソースではなく、添付の塩をつけていただくのがポイントだ。
まるごと玉子のふわとろメンチ(1個)483円
とろける半熟卵がまるごと1個入ったやわらかい合挽肉のメンチカツは、断面の美しさが食卓に映えると評判。付属のタルタルソースは、コクがありつつもさっぱりと食べられてリピーターも多い。
肉だんご~甘酢あんかけ~(1個)192円
パン粉をつけて揚げた丸い肉団子に、こっくりとした甘酢あんをかけたユニークな一品。もともと甘酢あんソースを使った新メニューを考案していたところ、メンチカツよりも小さな肉団子の形状が最もマッチしたという。
Text : Mako Kobori
Photo : Yuya Wada