おいしさを創る。おいしさを届ける。

2024.7.31 UP

静岡県静岡市用宗(もちむね)港に醸造所を構える<ウエスト コースト ブルーイング>。ホップが強烈に香るIPAで、2019年の誕生から瞬く間に全国区へ。飲みごたえのある西海岸流ビール造りの舞台裏に迫る。

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左から、<ウエスト コースト ブルーイング>セールス・イベント企画・小楠瞬太、伊勢丹新宿店 粋の座・和酒・惣菜バイヤー・長谷川豊康、<ウエスト コースト ブルーイング>代表取締役社長/建築家・バストン・デレック。

日本で飲める西海岸の芳醇なビール。 飲みたいビールがあったから、自分たちのブルワリーを作った。

静岡駅から車で約20分の用宗(もちむね)港は、しらす漁が盛んな駿河湾沿いの小さな漁港だ。ここに、かつてマグロ加工場だった建物を利用した温泉施設と、クラフトビール醸造所<ウエスト コースト ブルーイング>がある。「用宗は、県内でも昔からの古い町並みが残る稀少なエリア。のんびりした小さな町だけれど、東京や大阪といった都市からのアクセスも抜群にいい」。そう語るのは、2019年にブルワリーを始めたバストン・デレックさんだ。シアトル出身の建築家で、約20年前に縁あってたまたま静岡市へ移住。県内で仕事を手がけるうち、用宗港に温泉施設を作る依頼が舞い込んだ。ちょうどその直前にウイスキーの蒸留所を設計していた経験もあり、同じ建物内に念願であったブルワリーの併設を実現させた。通年で雨が少なく、晴れた日には富士山も見える。その穏やかなロケーションに、氏が愛するアメリカ西海岸のホッピーなクラフトビールが重なった。

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駿河湾沿いの用宗港。向こう岸の細長い建物が、デレック氏が建築設計を手がけた<用宗みなと温泉>とブルワリー。

 

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醸造所エントランス。建物の右側は温泉施設。

 

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個性豊かなビールを創造する醸造家たち。

 

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日本とアメリカ、フランス、ブラジルの4カ国から計8名が在籍し、ブルワリーの壁面には各国の国旗が掲げられている。

 

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商品は500ml缶で統一。アートワークが目立つ。

 

「あの味を日本で飲んでみたい」。それは明快なビジョンだった。

最近は日本でも認知されてきた感のあるIPA。ホップの香りと苦みを強調したボディー感のある味は、本来サンディエゴを発祥とする西海岸のクラフトビールブームから火がついた。「アメリカからも醸造家を招いています。大量に使うホップは主にアメリカやニュージーランド産。やはり本場のホップでないとあの香りと苦みは出せないんです」と教えてくれたのは、営業の小楠瞬太さん。これまで醸してきたビールは5年間で約300種にのぼる。ビールの醸造には約1カ月を要するため、単純計算でも月に5種類くらいのビールを造り続けてきたことになる。「水にも恵まれています。この辺りの地下水は超軟水で、味につながる水質をコントロールしやすいんです」。最近の人気はヘイジーIPAという濁りのあるビール。フルーティーかつ複雑な奥深い味で、ビール好きの層を拡げている。実はバイヤーの長谷川豊康も、クラフトビールからビールに魅せられた一人だ。「『イセタンクラフトビアバー』では約230種類の国内外のビールを扱っていますが、クラフトビールは常に新作がリリースされるため、その時にしか出会えない味という楽しみがあります」。ブルワリーで初醸造されたフラッグシップIPA「スターウォッチャー」は定番の味で、比較的入手しやすい。一方、ブレンドしたビールをワイン樽で熟成したボトル入りの「パーマネント・プレス・甲州」などは、店頭で出会えたら幸運な商品のひとつ。複数の醸造家のアイデアが色濃く反映される彼らのビールは、大半がその時期、そのタイミングでしか味わえないところに妙味がある。

 

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焙煎した麦芽の色。これがビールの色を決める。

 

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味のベースとなる麦芽(モルト)は、主に欧州から輸入。

 

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仕込み用のタンクに粉砕したモルトと70度前後の湯を投入。麦芽のデンプンが糖に変わり甘い麦汁ができる。

 

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ホップを加えて煮沸した麦汁に、さらに香りを付ける“ホップバッグ”という特殊な装置。香り高く芳醇なHazy IPAには欠かせないひと手間。

 

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12基の発酵タンク。

 

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麦芽を糖化させた麦汁を試飲してみる。「香ばしくて甘い、おかゆのような味です」

 

そんな独自のスタンスの象徴ともいえるのが、ラベルに描かれる「ホップ デュード」というキャラクターだ。新たなビールを醸すたび、その味わいから「ホップ デュード」にまつわるさまざまなストーリーを描いてラベルに表現し、飲み手を自分たちの世界へと誘う。2022年には、醸造所の隣にビールが楽しめるホテルも開業。わずか5年で社員は40人以上になった。こういったブランディングを通して醸される“ウエストコースト”の空気感も、新たなフォロワーの呼び水となっている。

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右から <ウエスト コースト ブルーイング>スターウォッチャー(500ml)1,089円

パーマネント・プレス・甲州(750ml)3,204円

伊勢丹新宿店 本館地下1階 粋の座・和酒

 

それでも、デレック氏は最後にこう念を押した。「ブルワリーを作るときにまず大切にしなければならないのは、どんな味わいのビールを造りたいのか、ということ」。西海岸のクラフトビールを知りたいなら、まずは定番のIPA「スターウォッチャー」を飲んでみるといい。そう迷いなく言い切れる本質的なクラフトビールが、ここにはある。

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ブルワリー隣のタップルームで、出来たてのビールと食事を。

 

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樽熟成に特化した特別なビールが飲めるバレルラウンジも併設されており、上階にはホテルもある。

 

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樽熟成に特化した特別なビールが飲めるバレルラウンジも併設されており、上階にはホテルもある。

 

※20歳未満の方の飲酒は法律で禁止されています。

 

 

写真:福田喜一 

取材・文:小堀真子

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