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Aesther Chang エスター チャン Interview
Q:moor gallery ) Aestherさんは、軽やかに世界中を飛び回りながら制作と展示を行っている姿が印象的です。街の景色を、まるで清らかな視線で眺めているように感じます。旅先で得た新たな気づきはありましたか?
A:Aesther Chang ) 旅は制作に必要不可欠なことで、いつも新しい気づきを与えてくれます。特に心を動かしてくれるのが、その土地の自然から得られる力です。
昨年パリと京都に滞在して、制作と展示を行いました。パリの街並みは、都市的で自然から離れているように感じていましたが、雨が降り注ぐさまや徐々にオレンジ色の輝きが差し込む夕焼けから突如インスピレーションが湧いてきました。
一方、京都での滞在では、豊かな歴史文化のある地域や自然の調和に安らぎを感じました。静かな自然の中で感じる平穏さは、私の作品にも反映されていると思います。
Q:moor gallery ) 作品は台湾をはじめとするお茶を使用してキャンバスを染めてから描かれるそうですね。どのように作品は生まれているのでしょうか。
A:Aesther Chang ) お茶を使うのは私のルーツにつながるということ以上に、有機的な変化という考えの象徴でもあります。キャンバスにお茶の層を塗ると、何が起こるかを完全にコントロールすることはできません。絵の具や素材が独自に進化することがとても重要で、私自身はプロセスの一部でしかないと考えています。
まず、お茶の染料を使ってキャンバスに1層目を塗り、 その後に油絵の具をかさねていきます。私は色の相互作用にとても興味があり、特定の色を組み合わせることで、絵に奥行きを加えることが好きです。油絵具の層を薄く塗ることで、水彩画のように透明感を出すことができます。
このプロセスが最も時間を要するステップで、絵の中で色が調和し、バランスと同時に緊張とコントラストを生み出すポイントに到達するまで行っていきます。
そして最後に質感をだすために、大理石の粉を使います。最近はミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチも使ったと言われるイタリアのカッラーラ産の大理石をよく使っています。すぐには劇的な変化はありませんが、時間の経過とともに有機的に変化する自然由来の素材を使用しています。人々を自然要素により近づけるというのが私の意図です。
Q:moor gallery ) 過去の作品を拝見すると肖像画も書いていらっしゃるようですが、現在の作風となるまでの変化はありましたか。
A:Aesther Chang ) 今のアブストラクト・アートを始める前は、まったく違う表現をしていました。
当時はオールドマスターの絵の描き方を勉強するためにイタリアにいて、人物画をたくさん描いていました。例えば、カラヴァッジョやルネッサンス期の画家たちの絵です。彼らは間接画といわれるテクニックを使っています。この技法は、油絵の具を重ねることで奥行きを出すという技法とよく似ています。どういうわけか、伝統的なテクニックを抽象的な作品に取り入れることができました。
例えば、フルタイムでアートを追求するために新しい街へ移住したという大きな選択から、家族や友人との時間を大切にする日常的な選択に至るまで、私がこれまでに行ったすべての選択が今の私を作り上げてきました。そして、新しい一日が始まるたびに、私はその一瞬一瞬を祝うという選択をすることができるのです。
moor gallery)Happy International Women's Day! この展示にメッセージをいただけますか。
Aesther Chang ) ”Find your truth,live your truth.Be yourself,there is no one better. ”
自分の真実を見つけ、自分の真実を生きる。自分自身であれ。
Aesther Chang エスター チャン Profile
エスター チャン(1994年)は、人間の精神、自然と物理的なニュアンスをのびやかに描き出し、伝統的な時間と空間の概念を超越した雰囲気のある瞑想的な構図で知られている、台湾系アメリカ人のアーティスト。
チャンの作品は、希釈された顔料の控えめな色合いと身振りを交えた筆使いによって表現されている。自分の存在の中でより深い次元、心身ともに自然と物理的な素材の緊張感と調和をとらえることを目指している。
ハーバード大学で教育学の修士号を、メリーランド・インスティテュート・カレッジ・オブ・アートで絵画の美術学士号を取得。チャンの作品はUne Fille Aux Cheveux Noirs(パリ)、Hollis Taggart(ニューヨーク)、Yadoya Hibi(京都)、Jean Jacobs Gallery(コネチカット)、Kate Oh Gallery(ニューヨーク)、Galleria Numeroventi(フィレンツェ)などで国際的に展示されている。ニューヨーク、パリ、京都を行き来する彼女の作品は、ニューヨーク、パリ、ロンドン、台北、東京など、世界中の個人および公的コレクションに収蔵されている。
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