今飲みたい、クラフトビール!!横断解説。

2020年春から、伊勢丹新宿店のビールのラインナップが密かに進化中です。決して大きなスペースではないのですが、国内外の最先端かつ高品質な珠玉のビールをぎゅっとセレクト。ビールを語ったらとまらないスタイリスト、吉澤拓也さんに話を聞きました。
文中でご紹介の商品は、一部を除き伊勢丹新宿店本館地下1階和酒にてお取扱いがございます。

吉澤拓也さん
日本酒類販売株式会社、伊勢丹新宿店販売促進担当として6年勤務。ソムリエ(日本ソムリエ協会認定)・唎酒師(SSI認定)・焼酎唎酒師(SSI認定)。酒担当バイヤーと二人三脚で酒のマーチャンダイジングに関わってきた。目下、クラフトビールラインナップを強化中。

 

まずは、ビールの基本的なこと。日本のビール定義に変化あり。

ビールの基本原料は、麦芽(小麦もあるが主に大麦)、ホップ、水。この基本原料に酵母を加えて発酵させたお酒がビール。そう聞くと随分シンプルなのですが、実際にはビールのスタイルは100種類以上とも言われています。なぜそんなことに?大きな要素はビール製造に使うことが許可されている副原料と言われる存在が大きいのです。

ベルギービールが日本ではビールの規定外で発泡酒扱いだったという話はご存知の方も多いと思いますが、副原料は国によって許容ルールに違いがあります。例えばドイツでは、ビール純粋令というものがあり、1516年に定められた法律「ビールは麦芽、ホップ、水、酵母のみを原料とする」を今も遵守。対照的なのが隣りのベルギーです。ベルギーのビールの多様性は世界一と言われ、副原料がその多様性の大きな特色です。原料にフルーツ、ハーブ、スパイスの使用が認められていて熟成期間も様々。常温で飲むアルコール度数の高いビールも多い。その背景には、冷涼な気候でブドウ栽培ができなかったことがワインへの憧れを強め、ワインのような香りや味わいの豊かさを表現するビールを生んだという事情があったと言われています。

さて、我が国ですが2018年4月に大きなルール変更がありました。それまで日本では「麦芽比率が約67%以上で、副原料は麦、米、とうもろこし」を使用したものがビールとして認められていたのですが、2018年の酒税法改正でビールの定義が変わり、麦芽比率が約50%以上に引き下げられた他、副原料として果実、香辛料、ハーブや一部香味料まで認めるというかなり緩やかなビールの定義に。この改正により、日本でもより多様なスタイルの飲料がビールとして流通するようになりました。

ビールのスタイルを知るキーワード

日本のビールの定義が広がったことも鑑みて、様々なビールスタイルから、日本人的に知っておくと良いと思われるものをまとめてみましょう。まずは、よく聞く「ラガー」と「エール」。これは発酵スタイルの違いで、酵母も異なります。この二つに加え、ベルギーの伝統的なスタイルで自然酵母を取り込むのが「ランビック」です。

上記の中で、日本の定番ビールとして定着してきた、いわゆる喉越しスッキリタイプのビールがラガービールです。ここでラガーとセットで覚えておきたいのが「ピルスナー」というスタイル。「ピルスナー」はチェコ発祥のスタイルで、透き通って軽い口当たりと喉越しが特長。長年、日本人は香りや味わいよりも喉越しを重視する傾向があり、料理の種類に問わず合わせられることから万能スタイルの「ピルスナー」が好まれてきました。これは裏を返せば、ビール自体のキャラクターはおとなし目ということが言えると思います。そして、ビールの嗜好性が高くなることで増えてきたのがエールタイプのバリエーションです。最近よく聞くビール用語で、それって何?と思ったら、それはエールタイプのスタイルを言っていることが多いかもしれません。表の代表的なスタイルで挙げたものを補足しましょう。

「ペールエール」は、ペール(=淡い)な色合いで、フルーティーな香り。スッキリとして飲みやすさもあり、イギリスのビアパブの定番です。18世紀末の大英帝国時代、大英帝国は植民地のインド在住の英国人に「ペールエール」を輸出することを考えます。長旅に耐えられるように製造したのが「IPA(インディア・ペールエール)」でした。ホップはビールに苦味を与えると同時に、殺菌性を高める効果があります。この殺菌性目的に採用された醸造法でしたが、現代になって、クラフトビールの波が盛り上がったアメリカで、ビールの特長を出すのに面白いと重宝されるようになります。アメリカ産ホップを大量に使い、ホップ由来の柑橘系の香りと苦味を効かした「IPA」や、さらにホップ量を増やした「インペリアルIPA(ダブルIPA)」が、アメリカのクラフトビールを代表するスタイルとして人気を博します。

一方、「セゾン」はベルギーで生まれたビアスタイル(主にエールタイプ)で、「IPA」のような苦味の強調ではなく、もともと農民が夏、喉を潤すためのビールだったと言われるように、爽やかかつフルーティで、ドライな口当たりが特徴です。

そして、3つ目の野生酵母を取り込むランビックは、乳酸発酵することから豊かな酸に特長があります。ベルギー近郊の酒場では常温でランビックビールが提供されるのが普通です。

以上のようなビールの基本を頭に入れていざ、伊勢丹新宿店のビールを覗いてみましょう。今回は、紹介するビールのタイプをマップ化してみました。左下に、日本で最も一般的なピルスナータイプ(ラガー)をおいています。そして横軸に食事に合わせやすい万能タイプか、ユニークな香りや味わいでビールだけで味わうと良い個性的なタイプか。縦軸は、アルコール度数(図1)とホップ感(図2)の2軸を用意しました。

アルコール度数(図1)は、一般的には低ければさっぱりとして軽く、高ければ重厚な味わいになるのですが、現在の様々な醸造方法やスタイルにより、アルコール度数が高くても軽やかに感じたり、逆にアルコール度数が低くても香り高く複雑に感じるものもあります。そこを見ていただくための図がこちらです。

(図1)

また、今のクラフトビールを語る上で欠かせないホップから見た場合のマップがこちら(図2)です。ホップの特性である香りや苦味を生かしているかそうでないか。また、近年のユニークなビールには、ホップ感にこだわらず、長期熟成や酸の強さ勝負している個性派ビールもありますので、自分の好みとシチュエーション(食事と合わせたいのか、ビールだけで味わいたいのか)も鑑みながら、様々なビールにトライしていただければと思います。

(図2)

それでは、図の中のビールを順にご紹介していきましょう。

 

<長野/志賀高原ビール>ペールエール(330ml)433円 商品を見る
<長野/志賀高原ビール>IPA(330ml)433円 商品を見る
<長野/志賀高原ビール>House IPA(330ml)522円 商品を見る
<長野/志賀高原ビール>其の十/No.10 Anniversary IPA(330ml)522円 商品を見る

志賀高原ビールの一覧を見る

伊勢丹新宿店で以前からラインナップされている<長野/志賀高原ビール>はエールタイプの基本「ペールエール」「IPA」「インペリアルIPA」の入門におすすめなシリーズ。

ペールエール
同社の人気ナンバーワンビールで定番中の定番。幅広い食事と。柑橘系の香り、ホップの苦味が程よくきいたクリーンな味わい。

IPA
同社の代名詞と言われるビール。苦さと旨味のバランスよし。

House IPA
大量のホップを使用しているが決して強すぎない苦味。モルトのボディもしっかり感じられるが、重すぎず、飲み飽きしないインペリアルIPA。

其の十/No.10 Anniversary IPA
同社10周年を記念して誕生。酒米を使用し、バランスよくスッキリとした飲み口に仕上げた。和食と一緒でも楽しめ、日本らしさを感じられるインペリアルIPA。

<愛知/ワイマーケット ブルーイング>イエロースカイ ペールエール(350ml)446円 商品を見る
<愛知/ワイマーケット ブルーイング>ヒステリック IPA(350ml)446円 商品を見る
<愛知/ワイマーケット ブルーイング>パープルスカイ ペールエール(350ml)446円 商品を見る

ワイマーケットの一覧を見る

もう一つ入門におすすめなシリーズとして名古屋初のブリュワリーで全国的に人気の高い<愛知/ワイマーケット ブルーイング>

イエロースカイ ペールエール
ペールエールに柚子の皮をたっぷり漬け込んだ、柑橘感あふれるフルーツエール。

ヒステリック IPA
シトラス、トロピカルなアロマが広がる。苦みも心地よく、キレイでバランスの良いIPA。

パープルスカイ ペールエール
苦味控えめでゴクゴク飲める、アメリカンペールエール。

<京都/京都醸造>一期一会(330ml)616円 (店頭のみ取り扱い)
<京都/京都醸造>一意専心(330ml)660円 (店頭のみ取り扱い)

「セゾン」などフルーティーな香りのビールを楽しむなら、2015年の事業開始と新しいブリュワリーながら存在感のある<京都/京都醸造>。ベルギーとアメリカスタイルのビールをリスペクトし、そこに日本らしい繊細な仕上がりが意識されている。

一期一会
ベルギー産酵母とアメリカ・ニュージーランド産ホップを融合させたセゾンスタイル。食事にも合うし、単体でも楽しめる。フルーティーなアロマとドライな口当たりのバランスが良い。

一意専心
華やかな柑橘系アメリカンホップとフルーティーでスパイシーなベルジャン酵母を使用した、苦すぎない香り高いベルジャンIPA。

伊勢丹新宿店のビールが変わった背景。

伊勢丹新宿店のビールが現在のようなラインナップになったのは、今年の6月以降と極めて最近のことのようです。「国内外のクラフトビールの中でも限定性の高いビールの流通は、タップ(樽生)で提供する飲食店中心でした。その事情が一転したのがコロナ禍です。飲食店が自粛営業となり、行き先を失ったクラフトビールが、ボトルや缶詰めされて流通するようになってきたのです。ポジティブに捉えれば、これまで店でしか味わうことのできなかったビールが、家でも味わえるということ。そこで、ビールラヴァー達が好むような品揃えにも力を入れてきた結果が今の棚です。これまで扱いたくても扱えなかったようなビールが揃ってきました。密かに収集してきたのですが、これまでの品揃えに慣れていたお客様はちょっとびっくりされてしまうかもしれません。自信を持って提供できるものだけをセレクトしていますので、これを機会にクラフトビールの扉を開けていただきたいなと考えています。」

ホップの使い方が新たな潮流(トレンド)を作っている。

吉澤さんが注目してほしいというスタイルの一つが、アメリカの東海岸北東部、ニューイングランド地方で今から5年ほど前に確立された新たなIPA、その名もニューイングランドIPA(NEIPA)。
「ホップのビール醸造における主な役割は、苦味、香り、殺菌です。アメリカのIPAは、長らくホップの苦味を強調したIPAが主流でしたが、ホップの苦味でなく香りの抽出に特化したのがニューイングランドIPA。通常、ホップの苦味は、麦汁にホップを投入し煮沸した時に出るのですが、煮沸時にはホップを入れず、火を入れない状態でホップを漬け込み、香り成分を中心に引き出します。そうすると、同じくホップを大量に使用するIPAとは対照的な仕上がりに。苦味はマイルドで香り高く、ジューシーな味わいです。通常のIPAの4倍ほどホップを使用する贅沢なビールなのですが、これが現在、米国だけでなくワールドワイドで人気になってきました。もちろん日本のブリュワリーで挑戦しているところもあります。」

<長野/志賀高原ビール>SNOW MONKEY IPA(330ml)522円(今シーズンの販売は、終了いたしました。)
<三重/伊勢角屋麦酒>ねこにひき(330ml)880円 商品を見る
<アメリカ/リヴィジョン>DISCO NINJA(473ml)1,007円 (店頭のみ取り扱い)

<長野/志賀高原ビール>SNOW MONKEY IPA
先に紹介した<志賀高原ビール>の限定ビール。毎年地元で開催されているフェス「SNOW MONKEY BEER LIVE」に合わせて限定醸造される。柑橘系のジューシーさがありながら、全体的にドライな口当たりのため食事と合わせられる、ニューイングランドIPA。

<三重/伊勢角屋麦酒>ねこにひき
アメリカのカルミネーション・ブルーイングとのコラボレーションビール。甘くてジューシー、トロピカルな香りで喉越しの柔らかいタイプ。

<アメリカ/リヴィジョン>DISCO NINJA
ニューイングランドIPAの評価が世界的に高い「リヴィジョン・ブリューイング」。ホップ由来の柑橘、南国トロピカルフルーツのアロマが次々弾け、口の中で忍者が美味しさの空手チョップをするイメージ。喉越しはソフトできれいな仕上がり。

「ホップの苦味よりも香り重視のスタイルは、ニューイングランドIPAのスタイルに限らず広がっている」と吉澤さん。これまでIPAの苦味が苦手だった人にも、ぜひ今の潮流のホップの使い方のビールを味わってほしいと言います。ホップが本来持っている柑橘(シトラス系)、トロピカルフルーツ(マンゴー系)の香りを生かした、ジューシーで飲み口の綺麗なビール。そんなタイプが国内外に広がりつつあります。

さらに個性的なクラフトビールにトライするならと紹介してくれたのがこちらの三本。ホップに特色があるというより熟成感や複雑さに特色があり、いずれもアルコール度数は高めです。あまり冷やしすぎずにじっくりビールと向き合って堪能したいタイプ。

<ベルギー/セント ベルナルデュス>セント ベルナルデュス アブト(330ml)720円 (店頭のみ取り扱い)
<宮崎/ひでじビール>栗黒(330ml)990円 商品を見る
<スイス/ビー・エフ・エム>アベッ・デ・セン・ボンシェン2018(750ml)3,692円 (店頭のみ取り扱い)

<ベルギー/セント ベルナルデュス>セント ベルナルデュス アブト
世界のベストビールの一つとして知られる「ウェストフレテレン・アブト」を醸造するべルギーのセント・シクステュス修道院から授けられたレシピで1946年に醸造開始したビール。フルボディのワインのような芳醇さとスパイシーな長い余韻が楽しめる。

<宮崎/ひでじビール>栗黒
深くローストした大麦と宮崎県産の栗ペーストを原料に使い、コーヒー、カラメルのようなローストフレーバーとスイーツのような栗の甘みと香りが融合したインペリアルスタウト。長期の瓶内熟成が可能。

<スイス/ビー・エフ・エム>アベッ・デ・セン・ボンシェン2018
インやスピリッツの樽で1年以上熟成させたビールをブレンドして造り上げるサワーエールビール。野生酵母(自然発酵)や乳酸発酵による際立った酸味、樽熟成によるコク、深み、複雑な香りと余韻が特徴。醸造家ジェローム氏によるブレンド技術の傑作は唯一無二の味わいで、ビールラヴァーの間でカルト的人気。

国産も海外産もますます面白くなっているクラフトビールの世界。この冬は、いろいろ取り寄せて、少しずつ自宅で見識を深め、自分の嗜好性と向き合って見るのも良いのではないでしょうか。

Text:ISETAN FOOD INDEX編集部
Photo: Yu Nakaniwa

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