【日本橋三越本店】バイヤーが行く日本全国美味発見|清らかな水と街道が繋ぐ文化 岐阜・美濃に息づく職人の技を訪ねて
「飛山濃水」——。
山岳地帯の飛騨と、水に恵まれた美濃。この言葉が示すように、岐阜県の風土は森と水に育まれてきました。県土の八割を占める豊かな森が水を湛え、木曽川・長良川・揖斐川という木曽三川の源となり、古くからこの地の暮らしを支えています。
良質な水は農作物を育むだけでなく、旨い酒や味噌造りにも欠かせません。そして川は、かつて物流の大動脈でした。山間部の良質な檜は川で運ばれ、下流で加工される流れから木工産業が発達。川湊が設けられた要所は主要な街道と繋がり、日本の中央に位置する岐阜は、東西から人や物が行き交う“文化の交錯地点”として栄えていったのです。
そんな独特の風土が育んだ文化を、今もさまざまな職人たちが受け継いでいます。彼らの造る品からは、時間をかけて積み重ねられた技の温かみと、伝統への深い敬意が感じられます。水の記憶をたどるように、四つの工房を訪ねました。
中津川宿で200余年。時と水が磨く伝統の酒<はざま酒造>
江戸時代の宿場町、中山道・中津川宿。往時の旅人たちが行き交った面影を残す町並みに、溶け込むようにある酒蔵が<はざま酒造>です。
創業は江戸中期。以来、二百年を超えてこの地で酒を醸してきました。
時を経ても変わらぬ造りの要は仕込み水。井戸から湧く清らかな恵那山の伏流水は、酒の六割を占める要素——その質こそが味を決める、と蔵人たちは語ります。岐阜らしい軟水は、酒に柔らかさとほどよいキレをもたらすのです。
厳しい寒さに、良い水。こうした自然の恵みに加え、やはり大切なのは「人」だと話すのは、醸造責任者の岩ヶ谷 雄之さん。「自然まかせではなく、人の手と判断があって初めて理想の酒ができる」と話します。
重要な麹作りは、温度計を使わず手の感覚で調整。米の洗浄や吸水も人の手で。こうした昔ながらの手法は大切にしながらも、四季醸造(通年日本酒を作ること)にするなど、現代のニーズに合わせた進化もしています。
酒米も従来の山田錦に加え、岐阜ならではの米も積極的に使用。岐阜の水と相性が良く、口当たりがまろやかですっきりとした後味を生む岐阜の酒米「ひだほまれ」や、新種の「酔むずび」などを使い、米の甘みを感じつつも、すっと切れる味わいを目指します。
こうした“うまい酒を造りたい”という情熱と進化は、国際的な舞台でも認められる酒を生み出しています。「恵那山 純米酒」はInternational Wine Challenge 2024 純米部門で第一位を受賞するなど、世界的にも評価されました。
伝統ある蔵を守りながら、未来へと進む酒蔵。昔から変わらない清らかな水と蔵人の情熱が、味わい深い酒を造り続けています。
百年の味を受け継ぐ味噌蔵<マルコ醸造>
岐阜県恵那市の街道沿い。クルマで走っていると目に入る、煙突が印象的な風情ある建物が<マルコ醸造>です。創業は明治31年。以来、受け継ぐ創業時の味「百年伝承味噌」にはこの地域の歴史と物語が溶け込んでいます。
日本のほぼ中央に位置する岐阜は、主要な街道が多く通る交通の要所として栄えてきました。<マルコ醸造>の前もまた、古くから多くの人が行き交う街道。中馬街道を伝って三河の豆味噌文化が、中山道を経て信州の米味噌文化が伝わり、豆、米の2種の麹で造る合わせ味噌が地域で愛されていました。
そこに初代・小木曽 初治が九州の麦味噌の存在を知り、麦麹をブレンド。米麹が甘味を、麦麹が香りを、豆麹が深いコクと色を生み出す独自の味噌が誕生したのです。
仕込みは昔ながらの木桶仕込み。蒸した大豆に三種の麹と塩、水を加え、空気を抜きながら木槌で叩き入れ、深さ二メートル強もある大樽で二年半以上かけて熟成させます。古いものは大正時代から使われているという大樽に抱かれた味噌は、この蔵に積み重なる時間を隠し味にして商品になるのです。
見た目は驚くほど真っ黒ですが、見た目に反して味はふっくらとまろやか。椀に溶けば丸みのある旨味が広がります。味噌汁にはいつもの半分の量で十分。根菜や豚汁など具だくさんの汁ものによく合います。
<マルコ醸造>の「百年伝承味噌」で作る汁物の味は、深みがあるのにどこか懐かしい。それは日本各地で育まれてきた味噌文化が岐阜の地で融合して生まれたここだけの味なのです。
清らかな水が育む里山の花の蜜<堀養蜂園>
岐阜県は、実は日本の近代養蜂の発祥の地だというのをご存知でしょうか。
明治時代、県内の養蜂家たちが中心となって西洋式の養蜂を広めたことから始まります。やがて大正時代には、岐阜を通る街道が全国を旅して蜜を採る「転地養蜂」家たちの経由地となり、技術が集う場として発展しました。
そんな岐阜県の瑞浪市で自然と共に蜜づくりを続けるのが、<堀養蜂園>の三代目・堀 孝之さんです。昭和四十二年創業の家業を継ぎ、現在は三代目として現場のすべてを担っています。
堀さんが集めるのは、野山の自然の蜜が中心。採蜜するための巣箱を置く場所が重要ですが、そこに堀さんの目利きが光ります。
幼いころから地バチ取りで山を駆け回り、蜂や里山の生態を肌で覚えてきたという堀さん。樹木医の下で働いていたこともあり、山の植生の知識を生かして蜜源となる樹木の種類や分布を確かめます。
標高の違いを利用して、花の咲く時期がずれる山々を巡りながら巣箱を設置。低地から高地へと“開花のリレー”を追うことで、採蜜期を長く保ち、自然のリズムに沿った採蜜を可能にしています。
野山の蜜として代表的なものが六月上旬に咲く「ソヨゴ」です。白い小花から採れる蜜は濃厚でありながらすっと切れる後味が特徴で、チーズや乳製品との相性も抜群。地域の七割を占める森林の中で、農薬を使う畑から距離をとり、清らかな水が流れる場所を選ぶのも堀さんのこだわり。「水が良くなければ、木も花も蜂も健やかに育たない。だから、この土地の水が味を決めるんです」と堀さんは言います。
巣箱は防腐剤を使わず、自社の大工が一つひとつ丁寧に手づくり。ミツバチたちはその環境の中でのびのびと飛び回り、四季折々の花々から蜜を集めるのです。
豊かな里山を感じる蜂蜜には、堀さんの情熱と清らかな里山の自然が息づいています。
日本一の枡の産地で伝統を守り進化する<大橋量器>
穀物や油などを量る道具として生まれた枡。岐阜県大垣市はこの枡の全国シェアの約八割を占める一大産地です。しかし現在、手がける会社は急減し、かつて十一社あった専門メーカーは相次いで閉業。そのなかでも生産を続けているのが、昭和二十五年創業の<大橋量器>です。
枡の生産が盛んになったのは、大垣が木曽川の水運の要所だったから。江戸時代には木材を川で運んでいたため、枡職人たちは水路沿いに工場をかまえていました。枡の材料は、狂いが少なく耐久性の高い“檜の柾目”の建築端材。これは江戸時代も今も変わりません。端材の使用は、江戸時代から続く日本人の“無駄にしない”精神が受け継がれているのです。
材料の板を削り、溝を掘り、組み合わせて底板を張り、円盤カンナで仕上げ、角を面取りする——一連の工程すべてに人の手が入っています。たとえば溝を掘るカッターの刃の調整は、漏れ防止と確実な組み立ての要となる職人技。目に見えない細かな調整が、品質を左右します。
仕上げの円盤カンナは、枡を手で持ち、口をつける器として、肌に吸い付くような触感にするため欠かせません。削ることでヒノキの新しい木肌が現れ、爽やかな香りが立ちのぼります。
伝統的な枡以外にも、ビールジョッキや三角錐の酒器、冷凍ご飯をそのまま温められるおひつ「COBITSU」など、現代の暮らしに寄り添う新しい枡も生み出しています。
伝統を守りながら、未来へとつなぐ挑戦を続ける<大橋量器>の枡は、日本の木の文化と職人の誇りを今に伝えています。
1月イベント
「岐阜探訪~食と匠の共演~」
今回日本橋三越本店のバイヤーたちが岐阜の生産者、工場を訪れて買い付けた選りすぐりの品をはじめ、岐阜の食の匠たちの逸品が勢揃いします。
会期:2026年1月21日(水)~1月27日(火)
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<里山きさら>
鹿のパテドカンパーニュ (1個 100g) 972円
□日本橋三越本店 本館地下1階 フードコレクション
地元の猟師が獲った鹿肉・鹿レバーを使いスパイス、香草でマリネして仕上げました。 -
<MERRY BADGE>
Honey Mustard (1瓶 200g) 1,501円
□日本橋三越本店 本館地下1階 フードコレクション
はちみつとパイナップル酢を使い、辛みを抑えてフルーティー。煮物などにも合う万能調味料です。 -
<カセイフィーチョ・サンフランチェスコ>
ブッラータ (1個 280g) 3,901円
□日本橋三越本店 本館地下1階 フードコレクション
搾りたての生乳を使用し、南イタリアの伝統製法で手作りするビッグサイズの生ブッラータです。 -
<あけぼのや>
みたらしだんご (1パック 5本入) 651円
□日本橋三越本店 本館地下1階 フードコレクション
地元産の米や味噌を使用し、炭火で外は香ばしく中はもっちりと焼き上げた、お店の看板商品。 -
<はざま酒造>
恵那山 純米酒 (1本 720ml) 1,705円
□日本橋三越本店 本館地下1階 フードコレクション
霊峰、恵那山の伏流水を仕込み水に、清らかな飲み口。フルーティーで食事に寄り添うお酒です。 -
<堀養蜂園>
野山のはちみつ (1瓶 120g) 1,372円から
□日本橋三越本店 本館地下1階 フードコレクション
四季と自然豊かな地で定置養蜂によって作られるはちみつ。異なる花による味の違いを楽しんで。 -
<マルコ醸造>
百年伝承味噌 (1袋 300g) 756円
□日本橋三越本店 本館地下1階 フードコレクション
米・麦・豆の3種の麹を使い、杉の木桶で2年以上熟成させて造られる、日本唯一の味噌です。 -
<元祖みたけとんちゃん>
甘辛みそ味 (1袋 220g) 648円
□日本橋三越本店 本館地下1階 フードコレクション
豚のホルモンと玉ねぎ、ニラを鉄板で焼き、甘辛みそで味つけした岐阜県御嵩町のソウルフード。 -
<大橋量器>
すいちょこ(1個) 1,980円
□日本橋三越本店 本館5階 キッチン・生活雑貨
盃をイメージした三角形の枡のお猪口。1300年の桝作りの伝統技術と現代デザインが融合。


















