「衣食住のすべてがその人らしさのあらわれであり、ファッションである」と捉える＜KEITA MARUYAMA/ケイタ マルヤマ＞のデザイナー丸山 敬太さん。1994年にコレクションデビューをした当初から食というコンテンツに関心があったそうで、「相手を思って選び、おいしいものを召し上がっていただきたい」という日本の美しいおもたせの精神を残していきたいと2021年に立ち上げたのが「KEITA MARUYAMA OMOTASE PROJECT」です。その第一弾で発表されたクッキー缶が2022年8月に三越伊勢丹オンラインストアで販売されるにあたり、丸山さんに「OMOTASE PROJECT」への想いをお話しいただきました。

－誰かの人生を彩る、ポジティブな感情を呼び起こす。丸山さんにとっては食のプロデュースも洋服作りもまったく同じこと

丸山：僕自身は洋服だけがファッションだとは思っていなくて、衣食住のすべてがファッションだと考えています。百貨店だと洋服のフロア、食料品のフロアとカテゴリーの区分がありますが、僕は服と食は別物とは捉えていません。ファッションというのは「生きていくうえでのスタイル」でもあるので、「OMOTASE PROJECT」は自分が長年やってきた＜ケイタマルヤマ＞というファッションブランドの表現のひとつです。「新たに食にも進出した」なんて意識はないですよ(笑)。ずっと作りたかったモノが、ようやく実現できたという感じです。おもたせもそうですし、お中元やお歳暮など日本には相手を思って選ぶ素敵なギフトの風習があるので、それを多くの人に愛されるクッキーというベーシックなお菓子で表現しました。誰かの人生に彩りを与えたい、喜びを届けたいという意味では洋服を作ることとまったく同じですね。「かわいい」や「きれい」、「うれしい」、「おいしい」など感情を呼び起こすモノがファッションだと思っているので、このクッキー缶にもそんな想いが込められています。クッキーはあくまで第一弾なので、これからも「OMOTASE PROJECT」ではいろんなことをやっていきたいと思っています。

－コンセプトは「おもたせ」でも、まずは自分へのご褒美として選びたい。胸躍るような＜ケイタマルヤマ＞ファンならピンとくるアーカイブ柄がベース

丸山：＜ケイタマルヤマ＞はブランドとして28年の歴史があるので、アーカイブ柄も500近くはあると思います。＜ケイタマルヤマ＞の洋服を選んでくれる方はずっと長く着てくれているので、アーカイブ柄を採用したクッキー缶というのはブランドのファンにとってはエモーショナルな接点なのかなと思っています。その一方で、実は＜ケイタマルヤマ＞の洋服は知らなかったけど、「かわいいクッキー缶を買ったらとてもおいしかった」という口コミもあって、そこからブランドを知っていただくというケースも増えています。自分が気に入ったレモン缶を誰かに贈ったら「かわいい！」「どこのブランド？」「＜ケイタマルヤマ＞のクッキーだ！」と会話が弾むこともあるかもしれません。そんなコミュニケーションのツールにもなってくれたらうれしいですね。

－7月に登場したレモン缶を含めてクッキー缶のデザインは現在は4種類。丸山さんが取り組んだテーマは「レトロでありながらモダンな雰囲気」であること

丸山：クッキー缶のデザインを展開していくうえで、まずは「BASIC」と呼ばれるものをひとつ作りたかったので、＜ケイタマルヤマ＞のシグネチャーカラーともいわれているサックスブルーを採用して、こちらはシンプルにブランドロゴのみを配しました。花鳥風月をあしらった「Oriental Flower」もブランドを象徴するような人気のプリント柄です。「BASIC」の中身は自分も大好きなクラシックなクッキーですが、「Oriental Flower」は8種類の詰め合わせになっています。詰め合わせはどうしても作りたかったんですけど、それは開けた時に夢があるからです(笑)。これからもクッキーの味にあわせたり、お客さまのリクエストに応えたり、クリスマスやお正月、バレンタインをイメージさせる柄にしたり、クッキー缶のデザインは増やしていくつもりです。ちょっとスペシャルなデザインのクッキー缶も投入したいですね。ありがたいことに「コンプリートしたい」という声も多くいただいています。

－「おいしいのは当たり前で、さらにワクワクするようなデザイン」。そんな付加価値を食にも常に新しい刺激を求めている伊勢丹新宿店のお客さまへ

丸山：伊勢丹新宿店を訪れるお客さまと＜ケイタマルヤマ＞のお客さまはリンクする部分は多いと感じているので、8月に三越伊勢丹オンラインストアで＜ケイタマルヤマ＞のクッキー缶を紹介していただけることで、より多くの人の目に触れることになり、選んでいただけたらうれしいです。伊勢丹新宿店はブランドがデビューした頃からとてもお世話になっている百貨店なので、お客さまからすると＜ケイタマルヤマ＞といえば洋服というイメージが強いかもしれません。ですが「ファッションブランドが作ったクッキー」という色眼鏡で見ないでいただきたいです(笑)。缶のデザインは付加価値のひとつで、クッキーそのものの味には菓子研究家の渡辺 千尋さんや、「noki(ノキ)」やましろあけみさんに監修いただいてかなりこだわっています。僕から言えるのは「食べてみてください、本当においしいです！」、それだけです。

－ご自身が好きな和菓子、洋菓子を選びに伊勢丹新宿店の食料品フロアを頻繁に訪れているという丸山さん。友人へのおもたせを探すことも多い

丸山：友人へのおもたせを選ぶときは、やはり相手のことをいちばんに考えますね。和が好きな人、洋が好きな人、見映え重視の人など、いろいろありますから。食料品フロアにはコンシェルジュの方がいるので、悩んだときはいろいろ聞いています。こちらの希望、要望を伝えるとたくさん教えてくれるのでとても助かっています。なにを聞いても詳しく答えてくれるコンシェルジュさんというのは百貨店ならではの存在ですよね。

－クッキーを第一弾とした「OMOTASE PROJECT」は2023年のバレンタインに向けて着々と進行。さらに「いずれは」と構想は広がる

丸山：2月のバレンタインに向けてショコラを作りたいと思っているので、今は国内外を問わず⼀緒に取り組めるショコラティエを探していて、缶のデザインもクッキーとはがらりと変えるつもりです。クッキー缶も新しいバレンタインバージョンを作る予定ですよ。いずれは「＜ケイタマルヤマ＞のお中元・お歳暮」みたいに、おもたせをセレクトや編集で提案してみたいです。昔のCDショップではないですけれど、ギフトにもライナーノーツのような誰かの視点での解説なんかが付いているとすごく選びやすいはずなので。大切な人への贈り物って、自分が気に入ったモノや信頼できるお店やブランドで選ぶと思うんです。なので「OMOTASE PROJECT」もそういう存在になりたいです。洋服だけがファッションではないということを「OMOTASE PROJECT」を通じて広げていきたいですし、サステナブルではないですけれど丁寧なモノづくり、捨てられないモノづくりをしていきたいです。缶だけではなく、ずっと手元に残しておきたくなるような瓶なんかもやってみたいと思っています。

※2022年8月1日(月)限定販売予定
※なくなり次第終了