田宮 亜紀(陶芸家)×庄司 愛(RESSOURCES)|うつわとみどり “土”が育む豊かな暮らし Aki Tamiya exhibition

うつわとみどり土が育む豊かな暮らしのメインビジュアル

2026年3月18日(水)より伊勢丹新宿店 本館5階 イセタンホームエッセンス/ギャラリーにて開催されるAki Tamiya exhibitionでは、陶芸家・田宮 亜紀さんが生み出す大地そのもののような力強い「器」を中心とした作品群を展示販売いたします。また、本展示に際し、観葉植物専門店<ルスルス>代表・庄司 愛さんが提案する個性豊かな「植物」とのコラボレーションが実現。“うつわとみどりの調和”をテーマに、現代社会における真の「豊かさ」を体現する数々の作品を展示販売します。

この画期的な共創を前に、庄司さんが静岡市奥藁科にある田宮さんのアトリエ兼ご自宅を訪問。陶芸にとっても、植物にとっても不可欠な元素である「土」へのこだわり、無機質な住環境にも彩りと潤いをもたらす植物との付き合い方、本イベントへの期待や意気込みなど、さまざまな想いを交換しました。

Aki Tamiya exhibition

□2026年3月18日(水)~3月31日(火)
□伊勢丹新宿店 本館5階 イセタンホームエッセンス/ギャラリー
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三越伊勢丹オンラインストア 販売期間

□2026年4月1日(水)午前10時~4月14日(火)午後8時

※諸般の事情により、営業日・営業時間、予定しておりましたイベントなどが変更・中止になる場合がございます。必ず事前にホームページを確認してからご来店ください。

※2026年4月1日(水)午前10時公開予定

田宮亜紀のプロフィール画
田宮 亜紀/Aki Tamiya
東京都生まれ。出版社に勤務するかたわら器を作り始め、今成 誠一氏、故・青木 亮氏らと交流を重ねながら、陶芸家として本格的な活動を開始する。
1996年、益子で築窯。1999年に静岡市・奥藁科へと移り、穴窯を完成し現在に至る。無釉の焼締にこだわり、素朴で力強く、自然の表情豊かな壺の制作を中心としながら、大地や自然との繋がりを感じさせ、暮らしに溶け込むような温もりのある作陶を続けている。
庄司愛のプロフィール画像
庄司 愛/Ai Shoji
ボタニカルアトリエ<ルスルス>代表
埼玉県生まれ。観葉植物コーナーを併設するインテリアショップでキャリアを積み、2009年に独立。
「都会の小さな森づくり」をコンセプトに、小さな一鉢から商業施設の空間演出、個人邸宅のインテリアやエクステリアまで手掛けるボタニカルアトリエ<ルスルス>を、東京・白金にオープンした。
2018年にアトリエを池袋へと移し、2022年からは伊勢丹新宿店 本館5階セレクト(現ISETAN HOME ESSENCE)に売場を常設。池袋のアトリエでは、不定期で鉢の植え替えサービス(要予約)を行っている。

田宮 亜紀(陶芸家)×庄司 愛<ルスルス>スペシャル対談

─東海道新幹線の静岡駅から、路線バスに揺られること約50分。駅前にはあった都会の喧騒はあっという間に遠ざかり、窓の外には濃い緑に覆われた雄大な山々、整然とした茶畑、美しい藁科川のせせらぎが広がります。そんな山間の一軒家に住まい、隣接のアトリエで作陶を続ける田宮 亜紀さんは、まるで久しぶりに帰省した家族のように温かく、ご自宅やアトリエへと迎え入れてくれました。柔らかな光と空気に包まれたリビングでの語り合いは、庄司さんが肌で感じた“静岡の風”の話題から始まります。

森の画像

庄司:今日は東京から参りましたが、静岡駅に降り立った時には駅前の賑やかさに驚きました。でも、そこからクルマで移動し始めると、すぐに山が見え始め、川沿いを上ってくる道のりがとても清々しい。今日は本当に天気に恵まれ温かく、窓から舞い込む風がとても気持ちよかったです。

田宮:この辺りは駅からそれほど遠くはないのですが、自然がとても豊か。アトリエの周りもあえて手を入れすぎず、整備しすぎないありのままの自然を大切にしているんです。すぐ近くの小川では、蛍を見ることもできるんですよ。

庄司:新幹線の駅からそれほど離れていないのに、野生の蛍がいるなんて!アトリエとご自宅へのアプローチも緑にあふれていて気持ち良く、植えられている木々や草花がどれも本当に可愛らしいです。何より、つくり込まれていない“自然のリズム”が感じられました。室内にも、私も大好きなオリヅルランやコウモリランがたくさん。グリーンが身近に感じられる、とても素敵な暮らしをされているなって・・・。

田宮:ありがとうございます。そう言っていただけるとうれしいです。あのオリヅルランは、「増えて楽しいよ」と私が子どもの頃に隣家のおばさんから譲り受けたもの。それが何代にもわたって子孫を残し、いまなお元気でいてくれているんですよ。本当にどんどん増えて家中のあちこちにいます(笑)。

アトリエ内の画像

─元気でたくましく、生き生きとしている田宮家の植物たち。その姿は、庄司さんが営むボタニカルアトリエ<ルスルス>のフィロソフィーと重なるものでした。今年で18年目を迎えるお店で、庄司さんが創業当初から変わらず大切にしている想いとは。

庄司:私もそういう、たくましい植物たちが大好きです。<ルスルス>が創業当初から大切にしているのは、何より「育てやすい」植物であること。見た目の美しさももちろん大事ですが、まずは失敗せずに育てられるという、“成功体験”をお客さまに提供したいと思っているんです。私自身、陶器鉢に自分で穴を開けてみたり、理想の陶器鉢をあちこち探し回ったり・・・。見様見真似で、陶芸にチャレンジしたこともあったんですよ(笑)。鉢の力も借りながら、いかに植物を可愛く、健やかに育てられるかをずっと考えてきたんです。

田宮:まさか植物のために陶芸を学ばれた方がいるなんて(笑)。でも私も自分用に植物の器を作ったりしていたのでお気持ちよくわかります。

庄司:はい。数年前に、1年ほど教室に通わせていただきました。実際に自分の手で土に触れてみて、器をつくることの難しさと奥深さを痛感することになったのですが・・・。でも、だからこそ、さきほどアトリエで拝見した田宮さんがすでに制作されている作品のなかに、鉢として使いやすい穴開きの器を見つけることができて、本当にうれしかったんです。植物の健康を考えるうえで、「通気性」というのは決して妥協できないポイントなので。

穴窯の画像

─焼き物の一大産地として知られる栃木県益子町で活動していた田宮さんが、新たな創作の拠点として選び、腰を据えたのがこの静岡。その背景には、女性陶芸家として直面した厳しい現実と、理想の環境を求める切実な想いがありました。

田宮:益子では売りに出ていた古い農家を格安でお借りして制作していたのですが、そこは買い手が見つかり次第立ち退くというのが条件でした。また益子の冬は風が非常に強く寒さが厳しかったこともあって、もう少し南の暖かい場所で、落ち着いて制作したいと考えていたんです。神奈川や埼玉の奥で探していたのですが、親戚もいて馴染みのあった静岡で理想の土地に出会いました。

庄司:窯を築くともなると、場所探しも一筋縄ではいきませんよね。

田宮:ええ、本当に大変でした。煙が出るので茶畑を含めた周囲への配慮はもちろんですが、「女性の一人暮らしはダメ」と断られたり、窯を作ること自体に反対されたりすることも多くて・・・。ようやく見つけたこの土地は、ほどほどに民家がありながら雰囲気が良く、地元の方々の理解も得られた大切な場所です。ここで制作を始めて、もう20年以上になります。

壺が並んでいる画像

─おふたりの活動を語るうえで欠かすことのできない共通項、それが「土」です。田宮さんは過去に、工事現場から出土した室町時代の粘土を使った制作を試みたこともあるそう。そんなエピソードに、お互いの「土」への探究心は深く共鳴しました。

庄司:田宮さんの作品を拝見すると、女性がつくっているとは思えないほど力強くてダイナミックです。しかしプリミティブな荒々しさのなかにも、独特の品格がある。特に田宮さんがこだわっていらっしゃるという「焼き締め」の器は、釉薬を使わず高温で焼き上げているため通気性がいいですよね。ただ美しいだけではなく、土と器を通して呼吸がしやすい。植物にとっては、「土」そのもののような優しい器だと思います。

田宮:ありがとうございます。土の風合いをそのまま引き出した自然の色が好きなので、植物の専門家にそう言っていただけると励みになります。私は陶芸の道に入る前から「焼き締め」に惹かれ、こだわってきました。釉薬をまったく使わないというわけではありませんが、いろいろなものに手を出すのではなく、緻密に追求するというわけでもなく、ただひたすらに“好きなもの”をつくり続けているだけなのですが。

庄司:そうなんですね。普段はどんな土を使っていらっしゃるんですか?

田宮:通常は自分の焼き方に適していると感じる赤土と白土をベースに、数種類の土をブレンドして使っています。でも特定の土に固執するのではなく、その時々の出会いも大切にしているんです。以前、新東名高速道路の工事現場や発掘調査の際に深い地層から見つかった、室町時代の田んぼ跡の粘土をいただいたことがありました。工事の方からすればただの残土として扱われるような土でしたが、試しにそれを使って焼いてみると、その土だけでしか見ることのできないような、とても力強い景色が現れたんです。

庄司:室町時代の土で器を焼くなんて、なんてロマンがあるんでしょう。その土と、その時だけの出会い、まさに一期一会ですね。

田宮:はい。白土のようだと思って焼いたら赤土の反応をしたり、薪窯では灰と土が反応してエメラルドグリーンやブルー、グレイなどの色合いが出たり・・・。長年制作をしていても焼き上がるまで仕上がりが想像できない、得も言われぬ変化があるのです。これこそ、「土」の面白さだと思います。

サイズの異なる壺が並んでいる画像

─「土」へのこだわりなら、庄司さんも負けてはいません。植物それぞれに異なる原産地や性質、状態を考慮し、まるで料理のレシピのようにさまざまな土をブレンドするその手法は、まるで植物にとってのパーソナルサポーターのよう。

庄司:植物を育てるうえで、「土」は大切な要素です。私たちは海外原産の植物を扱うことが多く、機能的なピートモス(泥炭)主体の土で育てている生産者さんも多いのですが、それは生産過程では機能的な一方で、家庭環境では問題が起きやすい。私は、やっぱり植物と環境に合った土に植えてあげたいんです。店で取扱う鉢植えの土は、赤玉土や日向土、さらには木のチップなどを植物の出身地に合わせて細かくブレンドし、手で触っていても気持ちいいくらいの土に植え替えるようにしています。例えば、南国の大きな木によじ登るように成長するモンステラのような植物であれば、土に木のチップを多めに混ぜて、ふわふわとした環境を作ってあげます。そうすると、ちゃんと元気に育ってくれるんです。

田宮:その植物の故郷に近い土に植えてあげるのですね。我が家の鉢植えにもなんとなく元気がない植物があるので、庄司さんに“診て”いただいたほうがいいかもしれません(笑)。

庄司:はい。いますぐにでも、よろこんで(笑)。

壺の画像

─今回の展示のハイライトのひとつとなるのが、田宮さんの代表作のひとつである「灰被(はいかぶり)」シリーズ。薪窯のなかでの激しい炎と降り積もる灰によって生まれるその表情は、まさしく作為を超えた自然の力が生み出す芸術です。

田宮:「灰被」は、薪窯で焼く際、薪をくべる焚き口のすぐ近くに作品を置くことで生まれます。最初は偶然だったんです。窯の焚き口付近は火の勢いが最も強く、灰が大量に降りかかる場所なのですが、たまたまそこに置いていた作品が灰に埋もれて焼き上がった姿を見て、その変化の素晴らしさに気づきました。

庄司:わざと灰の中に埋まるような過酷な環境に置くのですね。

田宮:ええ、薪が当たって壊れるリスクも高い場所ではあるのですが、あえてそこに厚みのある壺などを置くようにしています。焼き上がったものは、まるで海底に沈んでいた壺や沈没船のような、意図的には作り出せない、自然の荒々しさが宿る質感になるんです。

庄司:(手元にある器を眺めながら)「灰被」、本当に力強くて素敵です。この質感には、同じように生命力に溢れた植物を合わせたくなりますね。きれいに整えられた植物よりも、サボテンや野草のような、どこか尖った個性が感じられるものが似合いそう。展示でどんな植物を合わせようか、すでにワクワクが止まりません。

田宮さんと庄司さんが話している画像

─いつのまにか話題は、コロナ禍を経て加速した植物ブームへ。しかしその影で、市場には「根のない植物が増えている」と嘆く庄司さん。植物を心から愛するプロフェッショナルとして、そんな現状に強い危機感を抱いていました。

庄司:コロナの頃に、これまでにないほど大きな植物ブームがありました。家で過ごす時間が増えたことでさまざまな植物が飛ぶように売れたのですが、その影響で生産現場は生産が追いつかず大量に出荷して品薄になってしまったんです。市場には、いまその歪みが現れています。

田宮:具体的にはどのようなことでしょうか。

庄司:かつては時間をかけて丁寧に作られていた良質な植物が、市場から消えつつあります。
熟練の生産者さんが高齢化で引退される一方で、十分に根が張っていないものや生産に時間のかかる魅力的な樹形が減ってしまいました。一番の問題は、しっかり根の張っていない植物が市場で売られ、お客さまがすぐに枯らしてしまうこと。仕入れる側も、それをよく確認せずに販売しているのを時々見かけます。だからこそ、私は自分の目で見て、本当に根がしっかり張った元気な子や生産者さんの愛を感じる子を連れてくるようにしているんです。

制作風景の画像

─終盤に差し掛かり、現代社会の象徴ともいうべきタワーマンションでの暮らしが話題となりました。地面から遠く離れた高層階の無機質な空間にこそ、田宮さんの器という「土そのもの」が必要だ、と庄司さんは力を込めます。

庄司:最近は高層マンションのインテリアとして、植物を納める仕事も多くなってきています。そこで直面するのは、現代の住環境の特殊さ。いまのマンションの窓にはUVカットフィルムが貼られていて、植物を窓辺に置いても光合成に必要な光を浴びることができないケースが増えているんです。

田宮:眩しいくらいの光が当たっていても、植物にとっては十分ではないのですね。

庄司:そうなんです。さらにいえば、超高層階の無機質な空間で暮らす方々は、知らず知らずのうちに「土」を求めているように感じます。「人間は土から離れては生きていけない」という本能的な部分かもしれませんね。だからこそ、「土そのもの」のような田宮さんの器を空間に持ち込むことには、非常に大きな意味があると感じています。

田宮:植物も、ですよね(笑)。今回のような取り組みでは、これまで「焼き締め」や「植物」に馴染みがなかったという方であっても、伊勢丹新宿店という“馴染み”の場所で出会うことによって興味をもっていただけるかもしれません。また両者が組み合わさることで生まれる世界観にも、目を留めていただけたらうれしいですね。

庄司:お洒落に見えても無味乾燥な暮らしにこそ、田宮さんの力強い「土」の質感を届けたい。植物を単なる飾りとして置くのではなく、田宮さんの生み出す素晴らしい器とともに愛でながら、末永く共に暮らしていく・・・そんな豊かな体験を提案したいと思っています。今日実際に制作現場で数々の作品を拝見したことで、どのような植物を合わせるか具体的なイメージがどんどん湧いてきています(笑)。作品一点一点にふさわしい、生命力溢れる植物を選んでいきたいと思います。

田宮:うれしいです。私も拝見するのがとても楽しみです。今回の展示では、土鍋やミルクパンなどの耐熱のうつわや使いやすい日常のうつわも多くご用意します。ぜひそちらも庄司さんをはじめとして、皆さまにご覧いただきたいです。

庄司:こちらこそ、お招きいただきありがとうございました。

外に飾られた壺の画像
取材協力:うつわ祥見 KAMAKURA

田宮 亜紀×庄司 愛 コラボレーション作品

  • 作品画像

    植物:ガジュマル、シダ・ダバリア 16,500円 ※セット価格
    器:窯変筒片口 77,000円
    ※店頭のみお取扱いとなります。
  • 作品画像

    植物:ヒルデウィンテラ 8,800円
    器:灰被壺 77,000円
    ※店頭のみお取扱いとなります。

※2026年4月1日(水)午前10時公開予定

制作 STUDIO ALTA