
「マートの中にはアートがある」をコンセプトに、“アート感覚の日用品”を提案する三越伊勢丹初となるオンライン限定のセレクトショップ「イセタンマート」が2020年12月に誕生しました。今回は、この新機軸のプロジェクトに取り組む仕掛人、新規開発・プロモーションマーチャンダイザーである渡邉 駿にフォーカス。
コロナ禍でさまざまな視点から生活様式が見直されるなか、アートをフィルターにした新しいライフスタイルを発信するに至った背景、ショップのコンセプトなど、「イセタンマート」にかける思いを自身のエピソードを交えて答えます。

メンズ担当から「イセタンマート」の仕掛人に
青春時代は、生まれ育った北海道旭川市で洋服販売のアルバイト。いずれは地元で、自身のアパレルショップの経営をと願っていたほど、ファッション好きだった渡邉。大学生のときに訪れたイセタンメンズ館で、自分が雑誌で見ていたブランドそのままのラインナップや規模の大きさに衝撃を受け、吸い寄せられるように入社します。その後はメンズファッション一筋、バイヤーとして限定商品の開発やイベントの企画などを手がけ、多くの実績を残します。そんな渡邉に2020年の春、今まで携わったことのない分野への異動の辞令がでました。
「イセタンマート」の担当になってはじめてとりかかった、矢尾板克則展(2021年1月20日(水)~2月2日(火)まで開催)。
気になった作家やアーティストに率先してコンタクトを取り、会いに行く渡邉。この時もインスタグラムでダイレクトメッセージを送るも返信がなかったため、直接個展に会いに行き出店を熱望。当時のことを思い出しながら談笑する矢尾板克則さんと渡邉。(こちらの詳しいインタビュー記事は2020年1月13日(水)に公開予定)
「イセタンマート」にかける思い、実現したいことを渡邉 駿に質問!
Q1. 経験のない分野への異動が決まったとき、ためらいはありませんでしたか?
実は、とてもワクワクしました(笑)。 年齢も30歳を過ぎ、結婚して子どもが産まれたこともあると思うんですけど、興味や関心の目が洋服以外にも向きだしていたんです。メンズ館時代も家具や生活雑貨ブランドとコラボレーションする企画などを担当した経験はありましたが、プロダクトを深掘りができない事も多く……、いま振り返れば反省点もありますね。 ただ、それらの経験を機にライフスタイル全般にも視野が広がったので、いつかはライフデザイン全般の提案をしたいと考えるようになりました。ですので、今回の異動は私の中では絶好のタイミングでした。
Q2. 伊勢丹史上はじめてとなる実店舗をもたないオンライン限定ショップの魅力はどんなところですか?
お客さまとの対面コミュニケーションを筆頭に、リアルショップならではの価値はなくならないと思っています。ただリアルショップには、シーズンやキャンペーンに合わせたお買場の演出、煩雑な販売オペレーションなど、お客さまの目には見えない業務や制約もたくさん(笑)。ですがオンラインショップなら商品を掲載するまでの仕組みがいたってシンプル。その分、じっくり商品開発や企画づくりに取り組む時間がもてるため、とことん自分でも納得のいく品揃えができるのではと楽しみにしています。
12月にオープンした「イセタンマート」キービジュアル
Q3. 「イセタンマート」を、どんなショップにしたいですか?
アートというテーマ性をもたせた商品を発信するショップというスタンスですが、美術品や芸術品といった鑑賞目的ではなく、日常生活を豊かにする“アート感覚の日用品”を提案していきたいです。 ショップ名に悩んでいたときにフッと、MART(市場)はARTを包括した綴りだと気づいて(笑)。生活感や日常感を連想する、大衆性の中にDAILYなLIFEの中に、アート性がある。このテーマを表現するのにぴったりのワードだと思いました。
これにイセタンを冠づけて、「伊勢丹が提案するアートな日用品のショップ」。まさに、私たちの使命を代弁してくれているような気がします。 さらに言えば、オンラインが可能にしてくれるプレイスレス。「イセタンマート」を通して、伊勢丹が持っているファッション性やアート性の新たな側面を多くの人々に届けられればと思います。
Q4. 「イセタンマート」では、月替わりでさまざまな企画を発信するようですが、どのような内容になりますか?
著名アーティストの作品といった一般的に連想できるものだけではなく、クリエイターやデザイナーの創造性、作品に関わる人たちのユーモアや、作家の生き方そのものなど。さらに自然の中にもアート性は潜んでいると思っているので、題材には事欠かないと(笑)。逆に、ファッションや工芸品などの手仕事の要素も入ってくるといった、先程も話しましたが、アートと異なるジャンルが相互に包括しあう作用というか、それらが生み出す化学反応にも注目したいです。身の回りにあるものでアート性を感じてもらえること、アートという非日常的なものを日常に落とし込むこと、まずはこれらを伝えるための企画を考えていきたいと思います。

アート作品であるバンクシーを日用品に落とし込んだ企画はマートらしいと社内外から大好評。

自ら矢尾板さんに会いに行き交渉、コラボレーションが実現した。写真は渡邉が惚れ込んだ矢尾板さんの作品マグカップ。
Q5. 「イセタンマート」のコンセプトは“アート感覚の日用品”。具体的にどのような商品となりますか?また、セレクトのポイントは?
基本は「アートを感じることができる日用品」ということをテーマに集めていますが、人によって感じ方は異なるので、用途などに縛りを設けず、お客さまが感じたままを愉しんで欲しいと思います。例えばスケートボードをアートのように飾るといった使い方があるように、実際に使う人もいれば、飾っておく人もいますよね。使う人が、アートを感じることが大切だと思います。 「イセタンマート」では、リアルショップの商品カテゴリーをクロスオーバーさせ、さらにアート性を加えることで新しい提案ができたらと思っています。
また、お客さまのマインドに響くようなセレクトも心がけたい。つい訪れたくなるような高揚感があるアイテム編集をめざしたいです。具体的に欲しいものがなくても、どんなモノがあるんだろうと楽しめる、宝探し的な発見がある、カテゴリーに捉われないラインナップを目指したいですね。“お買物で遊べるイセタンマート”へ、ぜひ遊びにきてください!そんなイメージです。
「イセタンマート」で取り扱いのアイテムたち。今後は「MART偏愛会議」と題した連載記事にて、商品の背景やアート性について紹介していきます。乞うご期待!
一答ごとに、渡邉 駿の「イセタンマート」への信念や心意気が伝わってきます。 続きは「10問10答・後編」で!
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