ファッションショーは、単なる商品のお披露目会ではありません。それはシーズンに一度限りのブランドの世界観を最大限に表現する舞台であり、それは商品化できないコンセプチュアルなアイテムや空間を彩るオブジェ、音楽、モデル、メイクなど様々なアートが絡み合う総合芸術です。しかしこの素晴らしいアートたちは、従来は一度ショーが終われば記憶に残るだけで、再び日の目を浴びることはありませんでした。
そこに着目したのが〈プラダ〉です。〈プラダ〉は、これらのアートたちをこの社会の危機に役立てようと、チャリティオークション「Tools of Memory」を2020年10月に開催しました。
〈プラダ〉が行った、「Tools of Memory」とは
“記憶を作ったものたち“と題されたこのオークションは、〈プラダ〉がオークションハウス「サザビーズ」とタッグを組み、オンラインで10月2~15日に開催されました。出品されたのは、〈プラダ〉の2020年秋冬メンズ&ウィメンズのファッションショーにまつわる、72点の唯一無二のアートピースたちです。ショーでモデルが着用した世界に1着しかないウェアや、ショーにすらも登場しなかった初公開のドレス。更に、フォトグラファー/ダニエル・アーノルドやフィル・ミーチなどが撮影したバックステージでモデルがフィッティングやリラックスする様子の写真や、ショーで採用されたサウンドデザイナー/フレデリック・サンチェスによるレコードなど、ファッションアイテムに限らず、ショーを彩ったあらゆるアイテムがオークションにかけられました。
そして、オークションのハイライトとして登場したのが、実際のメンズ、ウィメンズそれぞれのショーステージで飾られたレム・コールハースによる二つのアートオブジェです。レム・コールハースは、オランダの建築設計事務所OMAと、そのデザイン研究機関AMOを率いる建築家で、2015年にオープンしたプラダ財団のアート複合施設を設計した〈プラダ〉と関わりの深い人物です。当然アートには様々な権利が絡みますが、今回のプロジェクトは〈プラダ〉と、〈プラダ〉に共感する人々の想いが一つとなったからこそ実現できたことが窺えます。
オークションには、〈プラダ〉ファンのみならず、ファッションやアートに興味のある世界中の人々が参加し、27か国から595件の入札が集まりました。そしてその売上総額は事前の予想を大きく上回り、439,362ユーロ(約5,450万円)に上りました。
〈プラダ〉はオークションの収益をユネスコのCOVID-19国際教育連合の取り組み、特に「Keeping girls in the picture」という新しいキャンペーンと「Gender Flagship」事業に寄付することを表明しています。これらは、新型コロナウイルスの蔓延によって未曾有の緊急事態に直面している、世界中の、特に女性の生徒・学生の教育を支援する取り組みです。
パンデミックのピーク時には、世界の学生の90%に相当する、15億人の子供や若者の教育が中断されたと言われています。この事実を受けて、<プラダ>が行った-ファッションにできること-「Tools of Memory」は、私たちの記憶に残る取り組みでした。
□12月16日(水)~23日(火) □伊勢丹新宿店本館1階 ザ・ステージ