ファッションをミライへ紡ぐ!
文化服装学院のデザイナー集団による学生最後の服づくり
2022年3月23日(水)から伊勢丹新宿店で開催される「デニム de ミライ~Denim Project~」。
賛同してくださったファッションデザイナーやクリエーターの数は約60にものぼりますが、本企画のリーダーでもある伊勢丹新宿店のリ・スタイル バイヤー神谷将太が構想初期からアタマに描いていたのが、これからのファッションの「ミライ」を担う世代にも参画を呼びかけること。そこで、ユーズドストック※のデニム生地での作品制作を依頼したのが文化服装学院のデザイナー集団「マスターイノベーション」のメンバーです。現在は商品ではなく、作品として服づくりと向き合う彼らの持続可能なファッションへの想いとは?チームを代表して、リーダーの冨永錠さんにお話しを伺いました。
※:ユーズドストック=着用されたデニムパンツ・デニム生地
ルールにとらわれず活動する「マスターイノベーション」とは
校内で決められた作品づくりのルールの範囲内では「自分たちが伝えたいファッションを表現できない」という想いから、文化服装学院の11名の学生により結成されたデザイナー集団。ファッションショーなども学生たちだけで企画・運営し、校内を飛び出して校外でのステージでも積極的に作品を発表してきた。ときには文化服装学院に対して異を唱えるような強いメッセージを発信したことも。2022年3月でメンバー全員が卒業となるため、解散することが決まっている。
— マスターイノベーションを結成したきっかけは
冨永:コロナ禍というのは自分たち学生の生活にも大きな影響があったと思います。いちばんは新しい友だちができる機会が圧倒的に減ったことです。なので、人とのつながりをもっと生まれるようにしていきたいという想いから、同じ考えを持つ学生たちが集えるコミュニティとして「マスターイノベーション」を立ち上げました。
— 実際に立ち上げて活動してみてどうでしたか
冨永:これまでは毎日学校に行くことが当たり前でした。それが授業もオンラインになって自分たちの時間が生まれるようになったこともありメンバー同士で集まりやすくもなりました。それによって作品づくりについても何度も話し合うことができ、コミュケーションは深まったと思います。校外でのファッションショーは授業がオンラインになったからこそ実現できたという部分はあります。
—「デニム de ミライ~Denim Project~」へのオファーをどう思いましたか
冨永:実は神谷さんからお話しをいただいたときは、ファッションショーを直前に控えていてとても忙しい時期ではありました。でも迷ったのは一瞬で、メンバー全員が「やったほうがいいよね」って勢いで引き受けました(笑)。マスターイノベーションはファッションを通じてメッセージを発信する集団なので、オファーがあるということはこれまでの活動が認められたような気がしてうれしかったです。
— 普段の学校での課題制作と違いなどはありましたか
冨永:すべて古着のデニムなので、色落ちやダメージも一本一本異なっていて、そこからアイデアが生まれることもありました。メンバーみんなが試行錯誤していて、僕自身も最初にイメージしていたデザインから方向性が大きく変わることもありました。古着の表情も活かしながら、自分のスタイルも前面に出せたと思っているので、卒業制作としても満足しています。
— これまでに古着の生地で制作したことはありましたか
冨永:デニムに限らずほとんどないと思います。いただいたデニムを一枚の生地にするのにステッチをほどいて解体したのですが、「リペアすれば穿けるのにもったいないな」と感じながら作業していました。まだまだ生きている服に対して、罪悪感のような申し訳ない気持ちもありました。だからこそポケットの一部でも、パーツもすべて無駄にしたくないという想いは自然と生まれました。
— 冨永さんが考えるファッションの「ミライ」とは
冨永:メンバーともよく話すんですが、これからはサステナブルであることは特別なことではなくて服づくりの常識だと思っています。それを前提として、自分としては「喜ばせたいひとを喜ばせる服」を作り続けていきたいという想いがあります。ファッションが好きなので、とにかくファッション業界にずっと関わり続けたいです。それはブランドを立ち上げる、パタンナーになるなどマスターイノベーションのメンバー全員の想いでもあるので、10年後にまた同じメンバーで集まって、一緒に仕事をするのが夢です。
デニムの個性も自分たちの個性も活かした「マスターイノベーション」の作品
文化服装学院の卒業制作としてマスターイノベーションのメンバーが取り組んだ、今回の「デニム de ミライ」の作品。制作期間は約1カ月半。これがファッション業界を新しく切り拓く、ひとつの「ミライ」の姿です。
アパレル技術科3年 冨永 錠氏
今回は卒業制作だったので、3年間の学生生活を通してみえてきた自分のスタイルや好きなものをデニムを通して制作しました。リメイク感を出しつつ、どこかリメイクではできないそういったアイテムを制作しました。
アパレル技術科3年 イ・チャンミン氏
人間と機械の結合
これから数百年、 数千年後の人類は果たしてどんな姿だろうか?私はこの新しい未来の人類を想像して服を作ってみました。 冷たくて人為的な機械を連想させるデザインと人間の身体の解剖学的なラインを組み合わせて服を作ることができました。
アパレル技術科3年 上田 悠人氏
70年代のデニムを着た不良を描いたoutsiderという映画に因んだフレーズ。破棄されるデニムを使って、ハンティングウェアやワークウェアを製作しました。古着なので、新しい物を生み出すバランスを考えて制作しました。
アパレル技術科3年 井上 真輝氏
デニムのエイジングに焦点を当て制作しました。あえてコンセプトや意図を表に出さず、着る人に委ねたいという思いで制作に取り組んでいます。
生産システムコース3年 稲田 翔太氏
今回のデニムプロジェクトでは、主にパッチワークをメインに制作し破けて、履けなくなったデニムをまた新しい生地として再構築し、服のさまざまな箇所にデザインとして取り入れました。
アパレルデザイン科3年 川井 笙汰氏
デニムジャケットは自分の好きな曲線切り替えをデザインに落とし込みました。ボトムスは、膝のあたりにデザインとして奇妙な模様をパッチワークしました。自分自身日頃からデニムをよく履いているので親近感もあり、さまざまな状態のデニムを選び使用させていただきとても楽しく制作できました。貴重な体験をさせていただきありがとうございました。
卒業制作作品のプレゼント応募企画
「デニム de ミライ×文化服装学院 マスターイノベーション」の共同企画として、ファッション業界の未来を担う学生たちの卒業制作作品を、応募いただいたお客さまの中から抽選でプレゼントいたします。
※ご自身のインスタグラムアカウントでの本企画に関する投稿をもって、応募受付とさせていただきます。
※詳細は下記よりご確認ください。
「商品でもなく作品でもないその中間のクオリティと自由さのある服」として制作された学生ならではのエネルギーに満ちたクリエーションに共感いただいた方は、ぜひインスタグラムのアカウントにて学生への応援コメント・作品の感想・イベントの感想等々をご記入のうえ、投稿をお寄せください!
イベント情報
デニム de ミライ×文化服装学院 マスターイノベーション
□2022年3月23日(水)~3月29日(火)
□伊勢丹新宿店 本館3階 センターパーク/プロモーション
※作品は展示のみとなります。販売はございません。