
「みらいへつなぐ贈りもの。」をテーマに、人と自然が調和して生きる豊かなみらいにつながるギフトをご提案している三越伊勢丹。この夏とくに注目したのが、「コウノトリ育む農法」で育てられたお米です。兵庫県豊岡市の人々が、コウノトリが棲みやすい環境をつくるために時間をかけて確立してきたこの農法について、そして、そのお米の美味しさについて、三越伊勢丹バイヤーの大澤邦英に話をききました。
いちどは日本で絶滅してしまった野生のコウノトリ。その復活を願い兵庫県豊岡市の人たちが「コウノトリの棲みやすい環境」を取り戻すために生み出したこの農法は、多くの生き物の力を借りてお米を育む、人にも自然にも優しい栽培方法です。
―はじめに、なぜ今回「コウノトリ育む農法」にスポットを当てたのでしょう?
実は、三越伊勢丹のギフトで「コウノトリ育む農法」をご紹介したのは今回がはじめてではないんです。13年前のお歳暮カタログを見てみると、すでに「グリーンギフト」というエコを切り口にしたテーマで「コウノトリ米」をご紹介しています。当時の記録によると、いちど絶滅した野生のコウノトリが30羽まで復活したと書いてありますが、いまはでは200羽まで増えていますし、コウノトリ育むお米の作付面積も増加している。SDGsなどさらに環境に対する関心度があがったいまこそ、もう一度「コウノトリ育む農法」について知っていただきたいと思いました。
―あらためて、コウノトリという鳥について教えてください
コウノトリは全長120cmくらい、翼を広げると2m以上にもなる大きな鳥。カエルや小魚などをエサにする肉食で、一日に400〜500gもたいらげる大食漢なんです。そのため、たくさんのエサが必要。かつては日本各地で野生のコウノトリが生息していましたが、戦中戦後の環境の変化で1971年にとうとう日本のコウノトリは絶滅してしまいます。
絶滅に至った理由は主にふたつ。ひとつは、コウノトリの巣となる松の木が大量に伐採されたこと。これは、松の木から油をとるためです。
もうひとつは、農業の近代化。湿田が減り、農薬が使われ、コウノトリのエサ場が激減してしまったんですね。
国内最後の生息地となった兵庫県豊岡市で、いつの日かかならずコウノトリを空にかえそうと誓い、長い年月をかけて取り組んできたのが「コウノトリ育む農法」なんです。
―コウノトリ育む農法とは、どういう農法なのでしょう
特徴的なのは、ほぼ1年を通して田んぼに水を張った状態を保ち、生きものが棲みやすい環境をつくっていること。
春から初夏にかけて生まれるオタマジャクシやヤゴのため、田植えの1カ月前から水を張り、そのオタマジャクシがカエルに、ヤゴがトンボに成長する7月まで中干しを遅らせます。
中干しというのは、田んぼの水を抜くこと。通常6月に水を抜くところを1カ月遅らせることが重要なんです。
なぜなら、その間に成長したカエルやカマキリなどが、稲を食い荒らす害虫を補食してくれるから。自然の生きもののチカラを借りることで、農薬に頼らず稲を育てることができます。
「コウノトリ育む農法」では、冬の間も田んぼに水を張っています。微生物のはたらきで土壌が豊かになるだけでなく、水辺の生きものが暮らせるようにすることで、コウノトリのエサも確保されるというわけです。
―自然の循環を大切に育てられた「コウノトリ米」には、どんな特徴がありますか?
よいお米を表現するとき「米がたっている」という言葉を使いますが、まさしくそれ。粘り気と旨みが強く、そのまま食べるのはもちろんですが、米粉に加工したときにもそのよさが際立ちます。 今回は「コウノトリ米」の米粉を使ってスイーツもつくっているのですが、米の甘みがいきていますし、粘り気の強さがもっちりとした食感を生み出して、非常に可能性を感じました。
>>>米粉からつくったスイーツについて、詳しくはこちら―「コウノトリ育む農法」をギフトのテーマに選んだことで感じたこと、届けたいメッセージなどありますか?
豊岡のみなさんが続けてこられたこの取り組みに心から共感しますし、13年前のギフトでもご一緒した酒蔵さんが、いまも当時のお酒を大切に守ってくださっていたことに感激しました。
お客さまだけでなく、お取り組み先さまにも喜んでいただき、地球のためにもなる。そんな“三方よし”を目指していきたいと、あらためて想いを強くしています。
たいせつな方には、自分が本当にいいと思ったものを贈りたいですよね。この「コウノトリ育む農法」の取り組みに共感してくださった方がいたら、ぜひ一度、この美味しさを体感していただきたいと思います。
食べること、贈ることが、豊かなみらいにつながると思うと、こんなにしあわせなことはないですよね。