【対談】気になるあの人に会いに行く。
フードエッセイスト 平野紗季子さん~前編~

【対談】気になるあの人に会いに行く。フードエッセイスト 平野紗季子さん~前編~

ファッションにとどまらず、東京のカルチャーやムーブメントを世に発信してきた三越伊勢丹のコンセプトショップTOKYO解放区。長年バイヤーを務めてきた寺澤真理が、様々な業界のおもしろい人たちとおしゃべりをしながら頭の中を紐解いていきます。

今回のゲストは、2015年にTOKYO解放区で開催したイベント「平野紗季子の(食べれない)フード天国」以来のお付き合いになるフードエッセイストの平野紗季子さん。食べるの大好きとおっしゃる平野さんとは、どんな人物なのか?どんな経験が今の平野さんを作り出したのか?寺澤が根ほり葉ほり、聞き出します!

今回のゲスト
フードエッセイスト 平野紗季子さん
フードエッセイスト 平野紗季子さん
MD計画部 プランニングスタッフ 寺澤真理
MD計画部 プランニングスタッフ 寺澤真理
 

「レストランは夢なんだ!」と気付いた小学生の頃の原体験が今に続く

寺澤 今日は、フードエッセイストの平野紗季子さんをお迎えして、お話を伺いたいと思います。

平野 よろしくお願いします。

寺澤 私がなぜ、平野さんをお呼びしたいと思ったかと言うと、前にTOKYO解放区というコーナーでイベントをやらせていただいた時に、すごく大変だったけど、すごく楽しかったので。

平野 本当に1から100まで支えていただいて、ありがとうございました。

寺澤 平野さんって方がいるよと教えてもらって、それで何か楽しいイベントはできないかなと考えたらワクワクしてきて。じゃあ、これはすぐにお話をしようと。あの時、友人からもそうだし、お客さまからも、うちの従業員もそうだったんですけど、あのイベントは楽しかったとみんなに言ってもらえて、私もたくさんイベントをやってきたけれど、かなり思い入れのあるものになりました。

平野 辛かった分だけ(笑)。汗と涙の結晶、みたいな。

寺澤 本当、汗と涙の結晶みたい(笑)。

TOKYO解放区で開催されたイベント「平野紗季子の(食べれない)フード天国」
TOKYO解放区で開催されたイベント「平野紗季子の(食べれない)フード天国」

平野 その節は、本当にありがとうございました。私もすごく楽しかったし、突然、伊勢丹新宿店で謎のインディーズな食イベントがやれて、評判もすごく良かったし、いい経験になりました。あれがきっかけで他のイベントにも繋がっていっているので、すごく感謝しています。

寺澤 とんでもない!その時の話を振り返ったことがないので、今日、してみたいのですが、色々とお話した一連のやりとりがとても面白い出来事でした。お仕事でのミーティングではあったんですけど、どちらかと言うと文化祭を作る感じに近かったなと。

平野 そうですね。私は食べ物の仕事をしているので当然「食」がテーマなんですけど、会場が2階のTOKYO解放区という今は無くなってしまったファッションのコーナーで。だから、食べられないもので「食」のイベントをやるという、ちょっと一捻りある状態と言うか、敢えて地下1階(食品フロア)の企画ではなく2階で食×クリエイティブのイベントをやるチャレンジングなことに伊勢丹さんも理解を示してくださり、一緒に動いてくれて。

寺澤 あれは、もう思い付いちゃったみたいなところに近いんですけど、そのきっかけになったのが、平野さんって方がいて、こんな活動をしててって話を知り合いから聞いて。面白い子だから紹介するよって。それで一度お会いしてみたいと会いに行ったんです。

平野 そうかそうか、そうでしたね。

寺澤 平野さんってどんな人なんだろって色々とみていたら、そこからだんだん想像が広がって行ったんです。今はお客さまの価値観や商品の選び方も変わってきているので、婦人服のフロアで食べ物を販売したりもするんですけど、敢えて食べ物を売らないのも面白いかもと思ったりして。

平野 そうですね。「食」っていうのはグルメ的な視点だけではなくて、カルチャーの文脈で楽しむことができますし、その流れがこの10年とかで増したような気がしていて。

寺澤 それは結構、平野さんの影響が大きかったりして。

平野 いやいや、私はその流れになんとなく乗っている感じなので。

寺澤 でもその時もなぜ平野さんでお願いしたい、一緒にお仕事したいと思ったかと言うと、当時は確か女の子で食と言えばパンケーキやマカロンなど色も可愛いファンシーなものがトレンドだったんですけど、そうじゃなく、平野さんのように定食を食べに行き、純喫茶にお茶をしに行きみたいな、そっちの方がやりたいと。

平野紗季子さん&寺澤真理

平野 渋めな嗜好の(笑)。

寺澤 それにファッションのクリエーターも食をモチーフに表現する人も多くなってきていた時で。

平野 そうなんですよね。だから一緒に作ったクローカさんっていう、今でも伊勢丹で空間演出などにも携わっている彼女たちと話してて、食券のキーホルダーを作って、それがピアスになったりとか。はんぺんのクッションを作ったりとか、わけわからないけど最高!みたいに私たち舞い上がってて。来てくれた方々も想像以上に共感してくれて、はんぺんクッション売れるんだぁって感慨深かったです。

イベント開催時の店頭の様子
イベント開催時の店頭の様子
イベントで販売した「KLOKA(クローカ)」の食券のキーホルダー
イベントで販売した「KLOKA(クローカ)」の食券のキーホルダー

寺澤 持って写真撮ったりしてましたもんね。なんかあのイベントはどこをとっても楽しかった。あとは、D JみそしるとMCごはんさんとかもあの時にたまたま違う映像を観ていた時に、面白いミュージシャンの方がいると思って、このイベントでと平野さんに提案したら、面白いですねってなって。

平野 そうそう。私も元々、みそちゃん(※D JみそしるとMCごはんさんのニックネーム)とは友達だったのでまさかこんなところでコラボできるなんてってすごく楽しかった。

寺澤 それで、みそちゃんにもお話したら、楽しいって盛り上がってくれて、新曲を書き下ろしてくれて。

平野 そうですよね。イベントの中にオリジナルの曲があるって、超豪華!

寺澤 さらにミュージックビデオもこの食品コーナーで撮影して、最後に平野さんも一瞬出てきますよね。伊勢丹でロケするのって結構ないことでして。面白かったなぁと思います。

平野さんと「DJみそしるとMCごはん」さんがコラボしている、真夜中の伊勢丹を舞台にしたとっても楽しいミュージックビデオ『THIS IS ISETAN UNDERGROUND』
平野さんと「DJみそしるとMCごはん」さんがコラボしている、真夜中の伊勢丹を舞台にしたとっても楽しいミュージックビデオ『THIS IS ISETAN UNDERGROUND』

平野 また何かやりましょうよ。

寺澤 ぜひ!やりましょう。昨年、渋谷のパルコさんがオープンした時、ギャラリーロケットさんがやったフードのショップでもイベントをされてましたよね。

平野 そうなんですよ。渋谷パルコのリオープンのこけら落としで何かイベントをやりませんかって声を掛けてもらって、じゃあ、一週間「HIRANO FOOD SERVICE」って言う架空の中小企業をテーマにして、いろんな食のブランドを、それはちゃんと食べられるやつ(笑)を集めて。私が手掛けている食のブランド3つずつ、3日間ずつのイベントをやりました。それもすごく盛り上がって。伊勢丹でイベントをやらせてもらった時よりは、ちょっとは成長かなと(笑)。

寺澤 色々、スムーズに。

平野 はい、年を経て、伊勢丹を経て、色々とスムーズにできるようなりました(笑)。

寺澤 伊勢丹TOKYO解放区でのイベントの時は完全に手探りでしたからね。

平野 あれは本当にやばかったんで、今回はだいぶ、大人になった状態でやれました。あの企画以降も「HIRANO FOOD SERVICE」で、うちでやりませんか?など色々なお声がけをいただいていて。

寺澤 そう言えば、今年2月に本館1階のザ・ステージでやったmameさん(※ブランドの〈Mame Kurogouchi〉)とのイベントはすごかったですね。私、買えなかったです。

平野 1階のザ・ステージで〈Mame Kurogouchi〉のポップアップショップをやるので、お菓子を作りたいんだけど一緒にやらないかとmameさんに誘ってもらったので、企画というか全体的なお手伝いという形で私が入らせてもらって、お菓子作家さんを繋いだり、文章を書いたりとか、色々とやらせていただいて、琥珀糖を作りました。

寺澤 美しいお菓子でしたよね。あれはパッケージのディレクションもされたんですか?

平野 パッケージはアートディレクターさんに入ってもらって、色々なイメージソースがある中から、こんなのいいですよねと相談しながら。でも、あれもみんなで夢を語るみたいな、超幸せなだけのモノづくりで。料理研究家の内田真美さんに監修で入ってもらっていたんですけど、真美さんの家で美味しいケーキとお茶を飲みながら、あれやこれやって感じで。そうやってまず自分たちがワクワクしたり、ドキドキしたり、作っている時からもう可愛すぎて悲鳴が上がるみたいな。そう言うものを世の中に出すと、やっぱりみんな同じようにわぁっと言ってくれるし、そこに嘘がなければ、絶対に響くし、それをすごい今回、実感しました。

寺澤 それはわかります。それは私が平野さんとイベントやった時も思ったし、他のイベントをやっていても、なんかその気持ちはショップや商品という形になるとすぐに伝わるなと。

平野 寺澤さんはすごく熱狂しているイメージ(笑)。めっちゃ慌ただしい中でも、一つずつの企画にちゃんと向き合って、真実の心で、ちゃんとワクワクしたり、ドキドキしたりしながら、前に進んでいるイメージがあって。そういう人が真ん中にいることは、本当に素晴らしいことだなと。

寺澤 本当ですか(笑)。ありがとうございます。いや、なので刹那的に生きてるみたいな感じで、疲労感も半端ないんですよ(笑)。すごいなんか燃え尽きてるみたいな。

平野 そうですよね。一個ずつ、流さないで向き合ってたらやっぱりね。

寺澤 でもなんか、その楽しい気持ちを持ち続けていれば、さっきおっしゃったみたいに必ず受け取ってくれる人に伝わると思うので。イベントをやっててすごく思ったのは、本当に平野さんは「食」が大好きなんだなって。本当にって言い方もあれですけど、「食」のどう言うところに平野さんはぐっと来ますか?「食」のどんなところに魅了されるんですか?

平野 本当に私の場合は思い込みっていうか、「レストランって夢なんだ!」って小学生の時に原体験みたいに思ったことがあって。私は福岡で生まれたんですが、小学校の低学年の頃に東京に引っ越してきて、両親も東京でテンションが上がってまして、お上りグルメじゃないですけど、家族で週末に色々なレストランに行く習慣ができたんですよ。その時に行くレストランは、料理も給食で出てくるものと違う、サービスの方にもお姫様みたいに扱ってもらえる、蛍光灯じゃないロマンチックな灯の下で食事をするとか、夢のような空間だと思って。その時にレストランって本当にファンタジーなんだなと実感して、それを日記に書き始めたんですよね。その日、何が美味しかったとか。それが本になって、今に繋がっていると。

寺澤 平野さんはどういう人なんだろう?と思いながら本を拝読して、おぉこれは食べ物日記があるぞ?!と。

平野 小学生の時の日記も本の中にいれたんですが、当時は毒舌がすごいですね。めっちゃ批評してるんです(笑)。

寺澤 イベントでご一緒した時も、平野さんは外食の人、みそちゃんは自炊の人で。外食、自炊ノートとか作りましたよね。

平野 作った、作った!あれ、いまだに使ってくれている人がいてめっちゃうれしかったです。

寺澤 食べ物って、お洋服などよりもっとお金をかけずに、その一瞬で幸せになれますよね。

平野 最高級の車は何千万とか何億もするし、最高級のバッグも何百万とか。でも、最高級のショートケーキなら数千円じゃないですか。本当にその道を極めた、本物の体験っていうのが「食」だと、例えば洋菓子だったら数千円で手に入る。だから食って一番身近な夢のある体験なのかなと思っていて。ワインとかとなると何百万ってなってきちゃうので、また話が変わりますけど。

寺澤 それもあのイベントを通じて、その時、改めて感じたことでした。そういう風に思いながら企画もしたし、平野さんとも話を進めてきたけど、なんかやっぱりそうなんだって強く思いましたね。

平野 「食」の感動ってすごいですよね。私は食べている時以外は、本当に疲れているから、食べることに助けられてるし、「食」に対する課金はかなり積極的です。

寺澤 インスタでも沢山のところに行ってらっしゃいますもんね。どのお店も行きたくなる。

平野 バレンタインシーズンのチョコレートの催事とかもみんなすごいじゃないですか。両手いっぱいにチョコレート買ってて。結構、自分用だったりして。でもあの感じ、すごい共感します。

寺澤 そして今回は、うちの食品部の人ともぜひ話したいとのリクエストだったので、今日、食品担当を呼んであります。

平野 わー、やったー!

寺澤 色々と詳しいことも知っていたり、バイイングやイベントも企画しているので、強い思いを持って仕事している人なので。呼んでみますね。

平野 超リスペクトです。お願いします!


このインタビューのノーカット動画はこちら
 
 
後編に続く...近日公開予定

2020年3月取材撮影

 
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