4名のバイヤーが語る、THE MOMENTSに込めた想いとファッションの未来
ファッションの在り方や存在価値が大きく変貌しつつある昨今。
伊勢丹新宿店も、これまでにない商品のセレクトやイベントなど、新しい発信に取り組んでいます。
これからの伊勢丹新宿店が目指すべきところ、ファッションとの出合いやショッピング体験をどう演出するか・・・。今を切り取ることを「THE MOMENTS」として捉え、ご提案。
今回は、THE MOMENTS誕生の背景や込めた想いを、4名のバイヤーが語ります。
THE MOMENTS
□2023年1月25日(水)から
□伊勢丹新宿店 本館3階 センターパーク/プロモーション、リ・スタイル、インターナショナルクリエーターズ、インターナショナルデザイナーズ
□伊勢丹新宿店 メンズ館1階 ザ・ステージ、メンズ館2階 メンズクリエーターズ、メンズ館6階 メンズコンテンポラリー
-
-
國友 崇裕 (くにとも たかひろ)
伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズコンテンポラリー2 バイヤー
入社以来、商品領域を長く担当。日本のファッションに少しでも貢献したいと考えている。
-
-
鳥山 脩 (とりやま しゅう)
伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズコンテンポラリー1 バイヤー
カルチャーをミックスしたスタイルが好きで、百貨店の領域を超えたフロアを目指している。
-
-
中西 祥子 (なかにし しょうこ)
伊勢丹新宿店 本館3階 モード1 バイヤー
クリエーターズゾーンでブランドと自主編集ショップ「リ・スタイル プラス」を担当しながら、クリエーションやカルチャーの発信を行なっている。
-
-
橋本 航平 (はしもと こうへい)
伊勢丹新宿店 本館3階 モード2 バイヤー
インターナショナルデザイナーズで、さまざまな切り口からブランドの垣根を超えた出合いを提案している。
時代とともに形を変えるファッション
それだけに、さまざまなジャンルに関心を持っていないと、トレンドが生まれる瞬間に立ち会えなくなりました。お客さまの反応を見ていても、従来と同じ品揃えでは響きづらいのを感じます。だからこそユースカルチャーを紹介したり、ヴィンテージアイテムを扱うイベントを開催するなど、これまでのメンズ館とは違うアプローチにも取り組むようにしています。
自分たちがいいと思うものを一方的に紹介する従来型ではなく、ニーズやお客さまの声を直接聞いたうえでそれに答えていくというスタイルに変わりつつありますね。
ショッピングでいうと、コロナ禍でオンラインショッピングが浸透したことで、百貨店のようなリアル店舗は、改めて価値や存在意義を問われていると思います。リアルだからこそできる買物体験のアプローチや、購入までのプロセスのような目に見えない部分が求められているのではないかと。
そうですね。モノの価値だけだと、お客さまに伝わりづらいと感じます。何かを紹介する場合でも、ただ情報が伝わればよいわけではなくなりました。
日本には茶室の露地や料亭小道のような、ものごとに至るまでの導入を大切にする文化がありますが、そういった部分にまでこだわらないといけないのかもしれません。お客さまがファッションに出合う瞬間をどう演出するかを考えるようになりました。
ブランドのイベントでも、これまではシーズンの立ち上がりに開催するコレクションのお披露目会のようなものが主流でした。ですが、デザイナーがインスパイアされたものにフォーカスしたうえで商品を紹介するなど、商品の裏側を見せてお客さまにも体験・共感してもらうイベントが増えつつありますね。
イベント会場では商品を売らず、ブランドの世界観に触れることができるギャラリーのような感じです。そこで共感していただき、商品はショップで見ていただくような二段構えの試みでしたが好評でした。イベントを通して初めてブランドを知ったというお客さまが購入に至ったケースも多く、やはり出合いの大切さを実感しました。
そういう体験が求められているのはすごく感じます。昔は情報がなかったから、そのために来店し、接客を通じて商品や情報を得るしか方法がなかった。でもオンラインが発達し、誰もが簡単に情報をピックアップできるようになったことで、商品だけではなくその背景や本質が重要視されているのかもしれないですね。
どういうお客さまに対して、どういう目的で伝えたいのか、ターゲットを明確にすることの重要性も感じますね。情報に対するリテラシーが上がって、有益な情報を自分から取りに行ける人が増えているから、より顕著なのかもしれません。
少人数限定のイベントでも、チームで1日かけてどうすればきちんと伝わるかを考えることもあります。そんなの非効率だと思うかもしれませんが、ここを丁寧にやることで全然違うんです。たとえば5人に向けた純度の高い情報を発信することで、それが20人に強く刺さり、さらにその先にいる300人に伝わるようなことが普通に起こり得るのが今の時代なんだなと思います。
ニーズが細分化してきたからこそ、マスに向けた一方的な情報だと伝わりづらいのかもしれないですね。
こういう話をしていると、“自分軸”というキーワードがよく出るんですが、自分軸で選ぶということが大切なのかなと感じます。私たちは、お客さまが自分軸でファッションに出合えるような瞬間のお手伝いをすればいいのかなと。
まだ自分軸を探っている方に対しても、ファッション以外のアプローチで自分をより深く知る手助けをするような機会を設ける予定です。セッションを通して世界に一つしかないご自身だけの香りを作るイベントなどを通して、いいきっかけづくりができればいいと思っています。
トレンドの生まれ方だけでなく、お客さまの感度、センスも変化している自由な時代だからこそ、私たち伊勢丹の在り方も、ファッションとの出合い方ももっと自由でいいのかもしれませんね。
服と出合い、選び、身にまとい、装う・・・。
ファッションにまつわる一連の動作に思いを馳せてみると
そこにはいつも、そのときの気分が隠れているはずです。
ファッションは、自己表現のためのツールである。
そう捉えることで、さらに身近なものになっていくのではないでしょうか。
自分らしさを自由な形で表現できるようになった時代だからこそ
ファッションももっと枠にとらわれないものへ・・・。
装うことで気持ちを明るく。足取りを軽やかに。いつもと違う自分に。
私たちを新しい場所へと導いてくれる可能性に満ちているのです。
わたしたちの気分を変え、自分軸を拡張し、
自分らしく世の中とリンクできるもの。
そのすべてがファッションであり、自分のスタイルになる。
この瞬間に寄り添った在り方と楽しみ方を提案していきます。
コロナ、環境問題やSDGsに対する意識の高まり、SNSの発達など、世の中の変革とともにファッションの立ち位置も大きく変わりつつありますよね。THE MOMENTSは、そんな中で改めてファッションの意義や楽しみ方を再定義していこうという試みなわけですが、最近のファッションの在り方について思うところはありますか?
昔はわかりやすいトレンドがあって、どこの店でも売れているものはあまり変わりませんでした。ただ目新しいものやトレンドアイテムを紹介するだけでお客さまに満足していただけましたが、今は全然違いますね。ブランドやスタイルなどの選択肢が増えたこともあり、より細分化していると思います。