ファッションと工芸の“いい関係”を探る。中川政七商店と伊勢丹のあらたな挑戦

ファッションと工芸の“いい関係”を探る。中川政七商店と伊勢丹のあらたな挑戦

日本の工芸を元気にする!をビジョンに掲げ、全国各地の素材や技術、風習に根差したものづくりに光を当ててきた中川政七商店。今回イセタンシード&リーフでは、そんな中川政七商店が手がける「服」をクローズアップしたポップアップイベントを開催します。工芸をいかにファッションとしてたのしむか、日本のいいものを着る意味とは…。中川政七商店の開発スタッフと伊勢丹バイヤーが本音で語り合いました。

今回対談したのは
本イベントを統括する伊勢丹の雑貨バイヤー小林と、中川政七商店で商品開発を担当する中野さん、野村さん。話題は、小林バイヤーが近年抱えている“課題”からスタートしました。

工芸をファッションとして表現することのむずかしさ

小林バイヤー:私は伊勢丹でバイイングの仕事に携わって10年になるのですが、サステナブルの観点が大切にされているいま、持続可能なものづくりとは何かということが大きな課題だと感じています。ものをつくること自体が悪ではないですし、価値あるものを大切に着る、ものづくりの背景を知ったうえで愛着をもって長く着るということが重要。そうすることが文化の継承にもつながりますし、バイヤーとして日本のものづくりのすばらしさをお伝えするのが使命だと考えています。でもその一方、伝統工芸をファッションとして表現することのむずかしさを痛感しているのも事実で…。日本の工芸の魅力を再発信しつづけている中川政七商店さんが、ファッションとどう向き合っていらっしゃるのか、すごく関心を持っていました。

中川政七商店のルーツ、“麻”にこだわったアパレルシリーズ

中野さん:ありがとうございます。中川政七商店は300年ほど前に麻の商いからはじまった会社です。近年では、麻だけにとどまらず、日本の工芸全体を盛りあげることをビジョンに掲げてきました。

  • 奈良の工芸“かや織”を活かした看板商品「花ふきん」をはじめ、各地に伝わる工芸品を現代的に再解釈し、あらたな魅力を発信する中川政七商店
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  • でも、やはりルーツである麻を使って、中川政七商店らしいアパレルを展開したいと考えて立ち上げたのが「中川政七商店の麻」というライン。麻×〇〇という掛け合わせで、四季折々に合った麻、日本のものづくりだからこそできる麻の提案を毎月一素材提案し続けています。今年で5年目になります。

    小林バイヤー:今回のポップアップは2月開催で「2月 麻とシルク」というテーマだそうですが、どんな商品になるのでしょうか?

    中野さん:2月は「立春」の月。春の始まりとされています。気持ちよく春を迎えるため、新生活を迎える準備として、麻とシルクの上品なシャツとブラウスをラインナップしています。麻の素材感にシルクのツヤ感やしなやかさをプラスすることで、しっとりとした肌になじむ感覚をたのしんでいただけると思います。

    • タテ糸に麻、ヨコ糸に麻と絹の混紡糸を使って高密度に織りあげた生地。麻のシャリ感をおさえた上品な風合いに仕上がっている
      <二月の麻 麻とシルク>
      麻シルク ノーカラーシャツ(オフ白、オフ白×生成、生成)17,600円 商品を見る
      □伊勢丹新宿店 本館1階 イセタンリーフ
      □三越伊勢丹オンラインストア

    小林バイヤー:なるほど、麻のあたらしい表情を追求されているのがよくわかります。バイヤーのジレンマとしては、どんなにいい素材のものを仕入れても、それだけでは魅力を伝えきれないというところ。このラインは4年前から取り組まれているということですが、お客さまの反応はいかがですか?

    中野さん:正直、まだ完全に魅力を伝えきれているとは言えない部分もありますね。でも、確実に麻のファンは増えていますし、中川政七商店といえば麻というムードがつくれている実感があります。

    小林バイヤー:やはり、あきらめずにじっくり取り組んでいく姿勢が大事なんですね。中川政七商店さんが育ててきた麻の文化を、ファッションというかたちで広げていくお手伝いができたらすごくうれしいです。このブラウスだって、たとえば海外ブランドのジャケットに合わせて着てみようとか、そういうミクスチャー感がおもしろいと思うな。
    私自身はメンズの“一着”というラインをぜひ着てみたいんですが、これはどんな経緯で生まれたのでしょう?

    ファッションとしてかっこいいもの、を目指した“一着”

    中野さん:もともと中川政七商店は男性より女性のお客さまに支持されているブランドだったので、男性にも工芸を知っていただくきっかけになる商材が必要だと思っていました。なので、あまりむずかしいことは考えず、“ファッションとしてかっこいいものをつくろう”という想いではじめたのが初のメンズライン「一着」です。どうかっこいいと思ってほしいか、を考えたとき「どこか日本らしさを感じる一着」というものを掲げて、洋装なんだけれど、デザインのディテールや素材に日本のクールさを感じてもらえたらと思ってつくっています。

    • 千鳥格子の麻生地に墨汁染めでコーティングを施した独特の風合い。羽織をイメージしたノーカラージャケットは、肩を切り替えず一枚布で仕上げることで、身体に心地よくフィットする
      <一着>
      麻墨のジャケット 29,700円
      麻墨のベスト 19,800円
      麻墨のパンツ 19,800円
      シワになりにくい麻シャツ(生成、紬) 17,600円
      ※店頭のみのお取扱いとなります。
      □伊勢丹新宿店 本館1階 イセタンリーフ
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  • 小林バイヤー:それにはすごく共感できます。やはり、かっこいいとかかわいいとか、ファッションのエモーショナルな価値が先にあって、そのあと左脳で理解するというプロセスがいいですよね。直感でいいと思ったものが、実はこんな背景のあるものだった、というストーリーが愛着につながるんだと思います。
    直感、エモーショナルという意味では、<motta>というハンカチブランドでもとてもおもしろい取り組みをされていますよね。ハンカチパフュームという。

    機能的価値から情緒的価値へ。アップデートした<motta>

    野村さん:そうですね。<motta>は「肩肘張らないハンカチ」を掲げて2013年からスタートしたブランドなんですが、これまでずっと、ちょうどよく手を拭けるサイズとか、アイロン不要とか、機能面でのアプローチがメインでした。でももっと、情緒的な価値をお届けするブランドへとリニューアルしたのが昨年11月のこと。「リズム、ととのう、ハンカチ。」をコンセプトに、ハンカチ専用の香水を開発したり、畳みかたによって表情が変わるハンカチなどをデザインしています。

    • 生地にひと吹きするだけでやさしく香るハンカチパフューム。気分で選べる5種の香りがラインナップしている
    • <motta>のロゴマークをモチーフにした、リズムを感じるパターン。さわやかな朝の光や、深い森を思わせるデザインとカラー展開
      <motta/モッタ>
      ハンカチ 1,540円 商品を見る
      □伊勢丹新宿店 本館1階 イセタンリーフ
      □三越伊勢丹オンラインストア
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  • 小林バイヤー:私たちもまったく同じで、機能的な価値は一回据え置いて、情緒的な価値を大切にしていこうとしているところです。機能的な価値は日進月歩で進んでいくなかで、情緒的な価値や、それがどうして生まれたかという歴史的な部分はどんどん忘れ去られてしまう。そうやって大切なものづくりの文化が失われてしまうことに危機感をおぼえています。 ブランドリニューアルをされて、その情緒の部分はうまくお伝えできている実感がありますか?

    野村さん:まだリニューアル後数ヶ月なので、半分半分というところですね。ただ、パフュームがフックになって、ハンカチを手に取るきっかけになってくれている実感はあります。そうやって毎日ハンカチを使うことで、自然と“ととのっていく”感覚を味わっていただけるといいかなと。まずはプロダクトをきっかけに世界観を体験していただければうれしいです。

    ファッションを愛するお客さまに、工芸がどうみえているか

    小林バイヤー:きっかけづくりって大切ですよね。ハンカチという、きっと100年以上形が変わっていないだろうアイテムに、パフュームというあたらしい使い方の提案をしている。今回のイベントも、中川さんがものづくりに込めた想いを “店頭”というメディアを通じて知っていただくきっかけになれたら私としても非常にうれしいです。

    伊勢丹のお客さまのすごいところは、なんといってもファッションに対する感度の高さ。バイヤーよりも商品やブランドについて詳しいお客さまがいらっしゃるくらいです。その方たちが、中川政七商店さんの服のどんなところに共感されるのか、私自身とても興味があるんですよね。我々は小売業としていい商品をお届けする使命がある一方で、お客さまからいただいた意見をメーカーのみなさんにお伝えすることもひとつの仕事だと考えています。ファッションを愛するお客さまが日本の工芸をどうみているのか、なにを求めていらっしゃるのか。今回のイベントを通じてもっと深く探っていきたいと思っています。

      中野さん:それは私たちとしても本当に楽しみです。伊勢丹のお客さまが、中川政七商店のものづくりをどう受け止めてくださるか。それをしっかりキャッチアップしていきたいですし、なにより、ファッションをきっかけに日本の素晴らしいものづくりを知っていただけたらうれしいです。

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  •   「中川政七商店の麻」や「一着」など、アパレルアイテムを中心に展開するポップアップイベントは2月2日(水)からスタート。中川政七商店が発信する日本のものづくりを、ぜひイセタンシード&リーフでおたのしみください。

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  • 中川政七商店 分店 服

    店頭会期:
    ■2022年2月2日(水)~2月15日(火)
    ■伊勢丹新宿店 本館1階 イセタンリーフ

    オンラインストア:
    ■2022年2月2日(水)午前10時~2月14日(月)午後8時

    ※掲載の情報につきましては、諸般の事情により予告なく変更・中止させていただく場合がございます。予めご了承ください。 ※必ず事前にホームページを確認してからご来店ください。

    イセタンシード&リーフ
    ISETAN Seed&Leaf(イセタンシード&リーフ)
    “毎日が広がっていく、デイリーライフライブラリー”として、
    伊勢丹新宿店全館から普段使いのベストブランドを集積した「ISETAN Seed/イセタンシード」。
    “旬な変化を楽しむタイミングコンセプトショップ”として、
    季節やさまざまなオケージョン関心の高いアイテムをセレクトした「ISETAN Leaf/イセタンリーフ」。
    本館1階の2つのコンセプトショップを起点に、新しい旬なアイテムをジャストタイミングにご紹介します。
    ※画像はすべてイメージです。
    ※価格はすべて税込です。
    ※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。