MAKI Galleryが、いま注目の女性作家3名にフォーカスした特別展示を開催。新年を彩る、活気にあふれた作品が勢揃い!

マキギャラリーが、いま注目の女性作家3名にフォーカスした特別展示を開催のメインビジュアル

2024年1月2日(火)より、伊勢丹新宿店 本館2階 イセタン ザ・スペースにて「Justine Hill / Shiori Tono / Ayumu Yamamoto」を開催いたします。2003年の設立以来、世界の第一線で活躍するアーティストを国内外に紹介し続けてきたMAKI Galleryによる本展は、いま注目の女性作家3名にフォーカスしたグループ展です。

今回に向けて制作された新作を数多く含む展示作品は、その鮮やかなエネルギーで会場全体を包み込みます。独自の制作方法で色彩と形態を自由に操るアーティストによる、新年を彩るにふさわしい活気あふれる作品世界をぜひご高覧ください。

Justine Hill / Shiori Tono / Ayumu Yamamoto

□2024年1月2日(火)~1月26日(金)
□伊勢丹新宿店 本館2階 イセタン ザ・スペース
公式Instagram @isetan_the_space

※諸般の事情により、営業日・営業時間、予定しておりましたイベントなどが変更・中止になる場合がございます。必ず事前にホームページを確認してからご来店ください

1.ジャスティーン・ヒル

プロフィール

1985年にニューヨーク州タリータウンで生まれ、現在はブルックリンを拠点に活動を続けるジャスティーン・ヒルは、色や明度、透明度によって異なる原始的なマークや形を引用した抽象絵画を制作することで知られています。

ヒルは、自身で“Cutout(切り取り、切り抜き)”と名付けるユニークな形状のキャンバスを組み合わせることで、従来の長方形キャンバスの制約を超えて発展する構図を追求してきました。
納得する形に辿り着くまで何度もスケッチを重ね、アクリル絵具や色鉛筆・パステル・オイルスティック・手刷り・コラージュなど、多様な画材や技法を取り入れながら、表現のバリエーションを膨らませています。

  • ジャスティーン・ヒルの作品画像

    Worldscape 2, 2023
    Acrylic and marker on canvas
    119.0×119.0 cm
  • ジャスティーン・ヒルの作品画像

    Sputnik 5, 2021
    Acrylic, colored pencil, crayon, and paper on canvas
    100.3 x 81.3 cm

インタビュー

─今回展示するアートに関しての概要やテーマなどあれば教えてください。

今回は、2つの異なる作品群を展示します。「Portal」と「Sputnik 5」は、2021年から2022年の間に制作した作品で、テキスタイル・壁紙・建築・ロボット・人工衛星など、人類が作ったさまざまなものを幅広く取り入れています。

この作品群は、アメリカのパターン・アンド・デコレーション運動(1970-80年代)と、リー・ボンテクー(1931-2022)の作品の意外な融合を表しています。

「Sputniks」シリーズは全部で8点存在し、花柄やアーガイル柄で身を包むその風変わりで手作り感のある姿は、まるでマーサ・スチュワートとスター・ウォーズを掛け合わせたかのようです。本シリーズは、ダナ・ハラウェイの『サイボーグ宣言』(1985年)で論じられているように、「人間」と「動物」、または「人間」と「機械」の境界線をぼかし始めます。これら作品は架空の生き物でありながら、物質的な世界で創造されたのです。

2023年に制作した新作もリー・ボンテクーへのオマージュであり、水平線や月面、太陽を中心とした風景画などへ言及しています。タイトルの「Worldscapes」は、ボンテクーがキャリア初期の1950年代後半に、トーチバーナーで描いたドローイングを説明する際に使った言葉です。

今回展示するペインティングは、天空的な感覚、空虚感、永遠性、曖昧さ、探求心、願望、そして異次元性を表現しています。また、テッド・チャン、N・K・ジェミシン、劉 慈欣などのSF作家による、ファーストコンタクト、宇宙の植民地化、起源神話、古代の神々、夢の武器化などといったテーマを扱う、現代のスペキュレイティブ・フィクション小説からも多くのインスピレーションを得ています。

─展示するアートの見どころ・注目してほしいポイントがあれば教えてください。

不定形な形状や、直接絵の具を塗る代わりに筆致をコラージュするという加算的な技法が、これらペインティングの重要なポイントです。作品は、そのもの自体になろうとしていると同時に、その理想の表れにもなろうとしています。

─会場にいらっしゃるお客さまへメッセージをお願いします。

混乱とは、理解できないことを探究するための最適な出発点です。未知なるものに対する違和感や、すべてを理解することができるという極めて低い可能性に身を任せてください。物事がはっきりと分類されることはめったにありません。

2.塔尾栞莉

プロフィール

1994年大分県生まれの塔尾栞莉は、尾道市立大学大学院 美術研究科 美術専攻油画コースを修了し、現在は大分を拠点に活動しています。

塔尾は、幼少期のアルバムや自身で撮影した写真をモチーフに引用し、ふとした時に思い出される純粋な記憶の大切さと儚さを表現します。大部分が忘れ去られている思い出の中からも、塔尾は自身の脳内に残る断片部分を拾い上げ、3×3cmのグリッド一つひとつへ丁寧に当時の思い出に命を吹き込みます。マスキングテープで1列おきにマス目を作り、油絵具を端から淡々と置いていく作業は、現在の塔尾自身を構成しているものたちの存在をキャンバス上へ記録する証明行為なのです。

  • 塔尾栞莉の作品画像

    目が合う, 2023
    Oil on canvas
    116.7×91.0 cm
  • 塔尾栞莉の作品画像

    Oasis, 2023
    Oil on canvas
    162.0 x 130.3 cm

インタビュー

─今回展示するアートに関しての概要やテーマなどあれば教えてください。

私たちの日々はたくさんの情報で溢れており、意識的にも、無意識的にも頭の中にそれらが積み重なっていきます。そんな中、大切だったはずの記憶が押し潰され、断片的なイメージだけが残されていくような感覚は、誰しも経験したことはあるのではないでしょうか。

現象としては自然なことではあるのですが、私はそれに少し寂しさのようなものを感じます。現在の私を構成しているものが知らず知らずのうちになくなってしまうような感覚を覚えるからです。

このような曖昧な記憶と、劣化したデジタル画像に現れるノイズには重なる部分があるような気がしています。デジタル画像は圧縮や修正を繰り返すことでノイズを引き起こし、劣化していきます。

作品は、幼少期のアルバムや自分で撮影した写真を元に制作しています。その中から何か思い出せる部分を探してみても、ほとんどのことは忘れてしまっています。

その中でもかろうじて頭の中に残っている断片を拾い上げ、デバイスの画面を模した3×3cmのグリット上に油絵具を端から淡々と置いていき、キャンバスという物質に留めることで、現在の私を構成しているものを記録し、それが私という存在があったということの証明となることを願って制作をしています。

─展示するアートの見どころ・注目してほしいポイントがあれば教えてください。

私の作品は、作品全体を見た時と作品に近付いて見た時にイメージが異なる、というところに大きな特徴があると思っています。

作品を少し離れたところから見た時には、ぼんやりと全体的なイメージが掴めるのではないかと思います。ですが、近寄って詳細を見ようとすると、その一つひとつに連続性があるようでなかったり抽象的に見えたりして、離れてみた時に捉えた全体的なイメージから遠のいていく感覚を覚えると思います。遠くだとぼんやりと見えるのに、近付くと見えにくい。この特徴は、記憶の特性と重なる部分があるのではないかと思っています。

会場に訪れた方にも、ぜひ近付いたり、離れたり、さまざまな位置から作品を見ていただけたらと思います。

─会場にいらっしゃるお客さまへメッセージをお願いします。

大切な記憶を振り返るということは誰しもがしたことがある経験だと思います。しかし、たくさんの情報で溢れている日常の中で、ふと立ち止まって振り返る時間を作るというのはなかなか難しいことも多いのではないかと思います。

私の作品を見たことで、皆さまそれぞれにある大切な記憶を振り返るきっかけを作ることができたらうれしいです。

3.山本亜由夢

プロフィール

1995年東京都生まれの山本亜由夢は、2018年に武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科を卒業後、2020年に同大学大学院にて油絵を研究し美術学修士を取得し、現在も東京を拠点に活動しています。

山本は目に映る色彩ではなく自身の感覚を重視した、鮮烈かつ複雑に組み合わされる色使いで、人間と動植物をモチーフに“リアルな世界”を表現しています。

豊かな自然に囲まれた恋人同士など、至福の一時を描いているように見える山本の華やかな作品には矛盾するさまざまな感情や物語が無数に潜み、どこか不穏な空気を醸し出しています。親密と不和、光と影、整然と雑然など、相反する要素がひとつの画面に共存することで多面的な現実世界を示し、それを一枚一枚めくるように観賞者は奥へ奥へと導かれていきます。

  • 山本亜由夢の作品画像

    hold up a pot, 2023
    Oil and acrylic on canvas
    91.0×72.7 cm
  • 山本亜由夢の作品画像

    dreaming, 2023
    Oil and acrylic on canvas
    100.0 x 80.3 cm

インタビュー

─今回展示するアートに関しての概要やテーマなどあれば教えてください。

楽園や恋人たちのような華やかで鮮やかな空間やモチーフを描きながら、そこに潜む不穏さや、危うさも同時に描こうとしています。それは単に幸せや優雅さには裏がある、恐ろしさがあるということでもなく、矛盾したものが同時に存在しているほうが、自分にとっての現実に近く、実感を持って描くことができるからです。

画面もより複雑で強固になると感じています。また、その矛盾を画面と何度もやりとりをしていくことで、完成する時は、かろうじて希望に向かっていくような、新しい一日が始まっていくようなバランスになることを目指して描いています。

─展示するアートの見どころ・注目してほしいポイントがあれば教えてください。

一つの画面の中にたくさんの空間や時間が混ざりこんでいる絵が多いです。遠目で見たら大きな流れになっていても、近くで見たら小さい人がいたり、小さい鳥がいたりします。私自身も描き終えて時間が経つと、このモチーフも描いていたのかと驚くことがあります。

また、屋外なのか屋内なのかわからない場所を書くことも多いです。ランプシェードがあるのに森の中、といった感じの絵です。色んなモチーフを探してもらえたら幸いです。

─会場にいらっしゃるお客さまへメッセージをお願いします。

新作の絵画を展示しています。真冬の展示ですが、どちらかというと熱帯のような風景を描いております。年末年始お忙しいと存じますが、初売りの合間などに立ち寄ってくださったらとてもうれしいです。

企画協力

マキギャラリーのロゴ画像
MAKI Galleryは、戦後日本における前衛芸術家の紹介を目的として2003年に設立された後、徐々に焦点を新進気鋭の現代美術家へと移してきました。2014年にオープンした表参道のギャラリーに加え、2020年より天王洲のTERRADA ART COMPLEX I & IIに大型スペースを新設しました。この3つの拠点で、マンゴ・トムソン、ミヤ・アンドウ、ススム・カミジョウ、マリウス・ブルチーアなど、国際的に活躍するアーティストの作品を幅広く取扱うとともに、鍵岡 リグレ アンヌや田村 琢郎など、日本の若手アーティストをグローバルに紹介しています。