マンゴ・トムソンが見つめる世界から、 日常とアートの接点について考える

アメリカ・ロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト マンゴ・トムソン。フィルムや音などと印刷物・アーカイブといった身の回りのものとの触覚的な関係に注目し融合させることで、慣例や通常の認識を覆す作品を数多く生み出している。

そんな彼が今回、伊勢丹新宿店 本館1階のザ・ステージにて個展「Nagori Yuki」を開催する。 “鏡の中で時は起こる“というシンプルな観察から生まれ、自身が鏡に映ることで初めて作品が完成するTIME mirrorsシリーズ。そして一緒にコラージュされたLEDが太陽のごとく美しく光を添えるカレンダー作品も圧巻の存在感を放つ。圧倒的なスケールと世界観のある作品が一挙に並ぶ、貴重な機会だ。

Mungo Thomson
National Parks 2019 (November), 2019
2-sided UV-cured print on samba fabric, custom LED lightbox
244 x 244 x 10 cm (96 1/8 x 96 1/8 x 3 7/8 in.) 

マンゴ・トムソン個展「Nagori Yuki」
□開催期間:2021年4月14日(水)~27日(火)
□開催場所:伊勢丹新宿店本館1階 ザ・ステージ

マンゴ・トムソン個展「Nagori Yuki」は、諸般の事情により25日(日)から開催中止とさせていただきます。
お客さまにはご迷惑をお掛けいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

*ショーウィンドウでの展示は4月7日(水)から27日(火)まで。

毎日簡単に消費されるものを捕え、人類学的遺産として作品に落とし込む

Mungo Thomson
National Parks 2019 (November), 2019
2-sided UV-cured print on samba fabric, custom LED lightbox
244 x 244 x 10 cm (96 1/8 x 96 1/8 x 3 7/8 in.) 
Mungo Thomson
Snowman, 2020 , Painted bronze
102,9 x 50,8 x 31,1 cm (40 1/2 x 20 x 12 1/4 in.)
Weight: 181 pounds (82.1 kg)

海を超えてはるばる日本にやってきた彼の作品を見ると、壁にかかったカレンダーや配送に使われる段ボールなどがモチーフとなっており、生活している空間そのものがアートなのだと気付かされる。残念ながら直接会うことは叶わなかったが、彼の作品やアートにかける思いについて掘り下げるべく、伊勢丹バイヤーチームがメールインタビューを敢行。枠を超えて、多角的な観点から感じたことを作品に落とし込む彼の根底にある思いとは。

━━アーティストになろうと思ったきっかけやその背景を教えて下さい。

幼い頃は絵を描くことが大好きで、将来マーベルコミックスで働きたいと思っていました。私が育ったカルフォルニアの小さな学園都市には、素晴らしい芸術大学がありました。その大学ではRobert ArnesonやWayne Thiebaudなど、素晴らしいアーティスト達が教授を務めており、Bruce Naumanなど有名な卒業生も輩出しています。これによって私は芸術、そしてコンセプチュアルアートに目覚め、方向性を変え始めました。


━━作品を作る上で心がけているテーマやポリシーはなんですか。

まずは、自分自身を面白がらせるようにしています。私自身が好きなものなら、きっと他の方々にも気に入っていただけると信じています。世界中のみんなが気に入らなかったとしても、私だけは気に入っている。それだけで作品が存在する意味があると思っています。

Mungo Thomson
December 12, 2016 (Fidel Castro 1926-2016), 2021
Enamel on mirror
188 x 142 x 6 cm (74 x 55 7/8 x 2 3/8 in.)

━━今の作風(コンセプトやテーマ)になるまでに影響を与えた人物、あるいは出来事などはありますか。(ご自身のアーティスト人生の中でのターニングポイントなどでも構いません)

私が通っていたUCLAの大学院では、John Baldessari・Mary Kelly・Paul McCarthyなど、素晴らしいアーティスト達の下で学べたことは、私にとって素晴らしい経験となり、本当に幸運だったと思います。また、私の妻ともUCLAで出会いました。

━━具体的には日常のどの部分からインスピレーションを受けることが多いですか。

私は日常において経験する実存的な瞬間に興味を持っています。つまり、いきなり宇宙学的、または人類学的な世界に飛ばされ、「本能的にわかっている」ものに対面する瞬間です。そしてそれによって、恐竜や古人や星々と同じ連続体に存在しながらも、ダンボール箱・印刷物・音など、身の回りのものとの触覚的な関係性も持つことができます。壁掛けカレンダーや雑誌のようなアナログメディアも、世の中から存在が消えかかっているところが大好きです。私たちの存在も同じように儚いのかもしれないですね。

━━日常に密接した作品を今までも数多く手掛けていらっしゃいます。メッセージ性を強く感じるのですが、全ての作品に一貫して込めている想いやこだわりなどがあるのでしょうか。

私は、様々なレベルで味わうことができる作品を作ることを心がけています。表面的に楽しむことも、じっくりと時間をかけて読み解き続けることもできる作品です。アート作品は、複数の解釈が可能で、様々なスピード感で体験できるものであるべきだと思います。

Mungo Thomson
Wild & Scenic California 2019 (September-December), 2019
2-sided UV-cured print on samba fabric, custom LED lightbox
244 x 285 x 10 cm (96 1/8 x 112 1/4 x 3 7/8 in.)
Mungo Thomson
Majestic Mountains 2019 (January), 2019
2-sided UV-cured print on samba fabric, custom LED lightbox
244 x 244 x 10 cm (96 1/8 x 96 1/8 x 3 7/8 in.) 

━━今回、展示の名前が「Nagori Yuki」ということで展示される作品も雪山がモチーフとなっているものがいくつかあります。日本での展示においてこのテーマを設定したのは何か理由があるのでしょうか。

私のアートディーラーはパリ在住ですが、実は長い間日本に住んでいたことがあります。彼が、春に降る雪を意味するこの展示タイトルを提案してくれて、展示の時期・内容・開催地にぴったりだと思い採用しました。

━━日本や東京、アジアの文化などに対してどのような印象をお持ちでしょうか。

日本は大好きです。とても穏やかな国で、何事も丁寧に行われている気がします。東京は、アメリカの都市と比べて、とてもキレイで静かです。あと、私は日本の食べ物も大好きです。

━━今後、アーティスト活動を続けていくうえでの到達点、イメージやテーマ、行いたいプロジェクトなどはありますか。

私は常にいろんな実存的なテーマや哲学的なアイディアに取り組んでいるので、それらをこのまま追求していきたいと思います。今現在は、時間の感覚や絶滅の可能性についてよく考えていて、ピーター・ブラネン著「第6の大絶滅は起こるのか―生物大絶滅の科学と人類の未来」などのような本を読んでいます。これらが私のカレンダー作品に結びついているのです。また、来年発表を予定しているストップモーションアニメーションの作品シリーズも現在制作中です。

━━今回展示される大きく迫力のある作品には、偶然横を通り過ぎる人たちも思わず目を奪われてしまうことと思います。初めてマンゴ・トムソンさんの作品を目にする人に向けて、ご自身から伝えたいことは何かありますか。

今回展示される作品は、まるで中へ踏み込めそうなほど、没入しやすく作られています。ですので、ご来場される皆様にはゆっくりと作品の輝きに浸りながら、多種多様な時間のスケールについてじっくりと考えていただきたいと思います。


マンゴ・トムソン
1969年生まれ、カルフォルニア出身。ロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト マンゴ・トムソンは、慣例や通常の認識を覆す作品を多く創り出すことで知られている。フィルムや音、オブジェ制作などと、印刷物やアーカイブを融合させ、常にそれらと接点を持ち続けることをコンセプトとして自身の境地を開拓。2018年にシアトルのヘンリー・アート・ギャラリーとヒューストン美術館で個展を開催し、ロサンゼルス現代美術館、メキシコのフメックス美術館、ロサンゼルスのアーマンド・ハマー美術館でのグループ展にも出展された。また、北京で行われた第2回CAFAMビエンナーレ、ロサンゼルスの「The Pacific Standard Time Public Art and Performance Festival」 、第12回 イスタンブールビエンナーレ、2008年ホイットニービエンナーレ、ニューヨーク の「PERFORMA05」と第9回ジュネーブ映像ビエンナーレに参加。 2013年には東京都写真美術館で行われた第5回恵比寿映像祭「パブリック⇄ダイアリー」に出展された。

MAKI Gallery
2003年にSAKURADO FINE ARTSとして設立され、戦後美術と現代美術に特化した世界の第一線で活躍する芸術家に焦点を当て紹介しているアートギャラリー。近年ではアメリカで活動するマンゴ・トムソン、ミヤ・アンドウ、エキソニモなど、常に高いクオリティの作品を発表するアーティストの展覧会を開催。同時に将来に向けて輝ける才能を備えた国内外の若いアーティストの育成にも力を注いでいます。2014年にオープンした表参道のギャラリーに加え、2020年より天王洲のテラダアートコンプレックス(TERRADA Art Complex)の1階に新しくスペースをオープン。オーナーの牧夫妻がコレクションしてきた世界トップクラスの作品を展示するMAKI Collectionをメインに、ギャラリーエリアも設け、個展・常設展を年間を通じて開催しています。

マンゴ・トムソン個展「Nagori Yuki」
□開催期間:2021年4月14日(水)~27日(火)
□開催場所:伊勢丹新宿店本館1階 ザ・ステージ

マンゴ・トムソン個展「Nagori Yuki」は、諸般の事情により25日(日)から開催中止とさせていただきます。
お客さまにはご迷惑をお掛けいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

*ショーウィンドウでの展示は4月7日(水)から27日(火)まで。

 

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Text:Ayako Nozawa

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