自然への回帰や住環境をより良くするための見直し、今多くの人が欲している価値観を「Chalet Haute」というコンセプトで、ギャラリー「ATELIER GALLERY」と「Objet d' art」を主宰する中里恭宏さんが「イセタン ザ・スペース」で表現しました。用いたのはシャルロット・ペリアンが携わった「レ・ザルク」プロジェクトで彼女がデザインまたはセレクトした家具作品や、ブラジルを代表するデザイナーのジョゼ・ザニーネ・カルダスの家具作品たち。展示販売されるインテリアを通して、家で過ごす時間が増えた昨今の“暮らしのあり方”を、改めて見つめ直す機会となることでしょう。
2020年5月30日から6月27日まで、イセタン・ザ・スペースで開催された「Living with HERITAGE 〜ピエール・ジャンヌレの遺作と歴史に残る名作家具〜」に続き、2度目の取り組みとなった中里さんに、今回の展示「Chalet Haute」に込められたメッセージを聞きました。
「Chalet Haute」〜シャルロット・ペリアンとジョゼ・ザニーネ・カルダス 偉大な建築家、デザイナーが手掛けた家具〜
□開催期間:8月25日(水)~9月5日(日)
□開催場所:伊勢丹新宿店 本館2階 イセタン ザ・スペース
掲載の情報につきましては、諸般の事情により予告なく変更・中止させていただく場合がございます。予めご了承ください。必ず事前にホームページを確認してからご来店ください。
公式インスタグラム @isetan_the_space
どうして今、シャルロット・ペリアンとジョゼ・ザニーネ・カルダスに注目するのか。
独自の審美眼と選択眼を持つ2人による空間や素材の新しい捉え方に着目した「Chalet Haute」の世界観を体感できる。
「Chalet Haute」展の見所は、ル・コルビジェと協働した偉大なインテリアデザイナーであるシャルロット・ペリアンと、ブラジルの近代建築を牽引した建築家・デザイナーのジョゼ・ザニーネ・カルダスによるインテリア。二人は自然への尊敬と人間の心地よい居住空間に根ざした視点から、素材の組み合わせや造形に新しい発見のある家具の作品群を生み出しました。
今回は、シャルロット・ペリアンが1967年より20年に渡って統括した、フランスのサヴォワ地方のモンブランに面した「レ・ザルク」リゾート施設の一室を再現。「レ・ザルク」は425 km²のゲレンデを有し、人間主義的なアプローチをコンセプトに山でのバカンスの在り方を再考した大開発プロジェクトでした。「家具と建築と環境の調和」、「近くに車の通らないリゾート」は、当時発展が進みすぎた都市での生活環境との対極を成すものです。
一角では、シャルロット・ペリアンによる「レ・ザルク」の空間を再現。
一方、ジョゼ・ザニーネ・カルダスは日本ではあまり知られていませんが、独学で建築とデザインを学び、弱冠20歳にして建築模型を製作するワークショップを開き、ルシオ・コスタやオスカー・ニーマイヤーといった現代建築の巨匠たちと仕事を共にしたブラジルを代表する建築家でデザイナー。
ジョゼ・ザニーネ・カルダスが森林破壊に抗議し「訴える家具」と称した作品も並ぶ。
ザニーネは、1960年代当時の軍事政権下のブラジルでは深刻な森林破壊の事実に衝撃を受け、強い環境意識を持った作品を手がけるようになります。倒木から船や家具を彫り出して作る地元の職人にインスピレーションを受け、自らも自身の手で大きな無垢材から家具を彫り出すという、よりベーシックなアプローチからなる作品作りを始めます。主に、ペキーやカシューといった地元で採れる木材を用い、使用する木材のもともとのヒビや割れ、曲線をうまく生かしたザニーネの作品は、オーガニックで彫刻的です。彼は、そうした自らの作品群を森林破壊に抗議する意味を込めて「訴える家具」と称しました。
二人の建築家が目指した、自然と建築、家具の調和を追体験する。
この2人のデザイナーに共通しているのは、ただの木材を見事に美しく繊細な作品へと生まれ変わらせる独自の新美眼と選択眼を持っている点にあります。現代人の自然への回帰が見られる時代の潮流の中で、本展ではこの2人が提唱した空間や素材 の新しい捉え方に大きく着目することで、家具とインテリアコーディネートの魅力を見つめ直し、またそこに新たな価値や創造性を見出そうとするものです。
本展ではシャルロット・ペリアン、ジョゼ・ザニーネ・カルダスの家具作品に加え、ピエール・シャポー、ジャン・プルーヴェ、セルジオ・ロドリゲス、オスカー・ニーマイヤーの家具作品など日本でのご紹介機会が大変稀なラインナップも販売さ せて頂きます。さらに「ATELIER GALLERY」と「Objet d' art」が⻑年をかけて蒐集してきた書籍などの資料もご紹介します。
「Chalet Haute」を企画した中里恭宏さんに聞く、展示の見所。
――「Chalet Haute」というテーマの意味、それを取り上げる意図を教えてください。
まず、それぞれの意味ですが「Chalet(シャレー)」は山小屋の意味。「Haute(オート)」はオートクチュールといえばイメージしやすいと思いますが、洗練や高級の意味があります。それは、シンプルで穏やかな美しい暮らしを追求したスタイル。家での過ごす時間が長くなった今、「ラグジュアリーでシンプルな日常」はファッションも含め、現在求められる要素の一つだと考えています。ハンドクラフトによるものへの価値の再認識をしていただきながら、シンプルで穏やかな美しい暮らしを見出していただければと思っております。
――今回の会場の展開の各セクションのテーマ・見どころポイントを教えてください。
今回展示される、ジョゼザニーネ・カルダスのインテリアの一部。(上)José Zanine Caldas Dining Table, 1970ʼs (下)José Zanine Caldas Rare Trunk Lounge Chairs "Denuncia" Series, 1970ʼs
エスカレーター側から、ブラジルのデザイナーであるジョゼザニーネ・カルダスのエリア、続いてシャルロット・ペリアンが携わったレ・ザルクの一室を再現し、「Chalet Haute」をテーマにブラジルのデザイナーやシャルロット・ペリアン、ピエール・シャポーの作品を中心にスタイリングしたエリアとなります。なかなか日本では見ることができないジョゼザニーネ・カルダスの作品、レ・ザルクのエリアが見所となっています。
――セクションのひとつである「レ・ザルク」プロジェクトを取り上げようと思ったのはなぜでしょうか。概要・魅力を教えてください。
レ・ザルクで使用されていたシャルロット・ペリアンのインテリア。
レ・ザルクは1960年代から始まったサヴォア地方のスキーリゾート。プロジェクトのまとめ役としてシャルロット・ペリアンが選ばれ、ガストン・ルゲラ、ギ・レイ・ミレー、ベルナール・タイユフェルら著名な建築家たちがチームに参加していました。始まってから50年以上が経っており、近年、環境設備の劣化などからリノベーションが多く行われ、当時のまま残っている部屋は多く失われています。今回は、希少価値が高まっているレ・ザルクで使用されていたシャルロット・ペリアンの家具を用いて、レ・ザルクの一室を再現しました。シンプルでミニマルなデザインのインテリアに注目しながらご覧ください。
――現在のコロナ渦のトレンドとして、家の中のもの・ことへの関心が高まっていると思うのですが、今回のイベントにおいてお客様へどう感じていただきたいですか。
シャルロット・ペリアンのインテリア。
冒頭でも述べたとおり、見た目だけの美しさにとらわれず、作り手の考えを読み取り、構造などから感じる美しさを見出し「ラグジュアリーでシンプルな日常」が感じられるものを見つけていただけたらと思っています。
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