銀座三越の2025年夏のシーズン装飾「あやかし銀座」。妖しさと不気味さの中に、美しさや愛嬌も感じられる不思議な魅力のあやかし絵は、アーティスト・栗田有佳さんの作品です。描かれているのは日本に古くから伝わるお化けや妖怪たち。江戸中期の浮世絵師・鳥山石燕(とりやま せきえん)の妖怪画集に登場します。今回銀座三越に現れたすべてのキャラクターをご紹介いたします。ぜひ展示物と合わせてお楽しみください。
猫また ねこまた
江戸時代に広く庶民に浸透した猫の妖怪。猫が年をとると、しっぽが二又になり妖怪化すると信じられていた。
犬神 いぬがみ
主に西日本に伝わる犬霊の憑きもの。犬の首を道に埋め、その上を人が往来することで怨念を増した犬霊を人に憑依させた。
松明丸 たいまつまる
深い山奥の杉の木に住む天狗が投げた石つぶての光を、松明の妖怪になぞらえたもの。炎を携えた鳥類の姿。
茂林寺釜 もりんじのかま
昔話『分福茶釜』のもととされる。群馬県の茂林寺に僧に化けた狸がおり、常に茶をたしなみ茶を沸かせば湯が尽きなかったという。
河童 かっぱ
小さな体、手には水かき、頭頂部に皿がある。川や沼に生息し、いたずら好きで、泳ぐ人間の尻子玉を抜き死に至らしめることも。
獺 かわうそ
キツネやタヌキのように人を化かすと信じられ、日本各地に獺の怪異が伝わっている。歳をとった獺が河童になるという伝承もある。
骨傘 ほねからかさ
和紙が剥がれた傘が炎をまとい飛翔する。雨を呼ぶ火除けの象徴・鴟吻(しゃちほこの原型)から連想したとされる。
雲外鏡 うんがいきょう
鏡の妖怪。中国や日本の伝承に登場する、魔物の本性を暴き出す伝説の鏡「照魔鏡」をモチーフにしたといわれる。
禅釜尚 ぜんふしょう
茶釜の妖怪。詳細不明。石燕は「茶の湯は閑寂を重んじ陰気なところもあるのでこんな怪異もあるだろう」と記している。
窮奇 かまいたち
つむじ風に乗って現れ人を切りつけると言われる。中国に伝わる風神「窮奇(きゅうき)」と同一視され同じ漢字で表記された。
三味長老 しゃみちょうろう
かつて名人に使われていた三味線が捨てられて妖怪化したもの。名前は「沙弥から長老にはなられず」ということわざに由来。
木魚達磨 もくぎょだるま
木魚の妖怪。だるまのようなヒゲを生やし円座に乗っている。石燕はほかにも「払子守」など禅の仏具の妖怪化を描いた。
狐火 きつねび
沖縄以外の日本各地に伝承が残る。正体は、狐の吐息が光る、または尾を打合せ火をおこした様子などの説がある。
槍毛長 やりけちょう
先端に動物の毛などを付けた毛槍の妖怪。石燕の作品では日本無双の剛の者が手に触れた槍だと記されている。
鉦五郎 しょうごろう
打楽器「鉦鼓」の妖怪。豪商・淀屋辰五郎の「五郎」と、貯めていた「金」と「鉦(かね)」をかけた石燕の創作妖怪とされる。
蛇帯 じゃたい
帯の妖怪。帯を敷いて眠ると蛇の夢を見ると言われ、“嫉妬する女性の三重の帯は七重に回る毒蛇になる”と石燕は記した。
琵琶牧々 びわぼくぼく
琵琶の妖怪。顔が琵琶の座頭の姿。鎌倉時代の書物『禁秘抄』等に登場する琵琶の名器「牧馬(ぼくば)」が名前の由来。
牛鬼 うしおに
西日本に多く伝承が残る妖怪。胴体は蜘蛛、顔は鬼、頭部に牛のような角を持つ。獰猛で毒霧を吐き、人を喰うと言われた。
芭蕉精 ばしょうのせい
芭蕉は中国原産の多年草。中国に芭蕉の精が人に化ける物語があり、日本の能の曲目『芭蕉』も中国の説話に基づいたもの。
「あやかし銀座」 Yuka Kurita 2025
参考文献:鳥山石燕『百鬼夜行』3巻拾遺3巻 [1] [2]、『百鬼徒然袋』3巻 [1] [2] [3]、鳥山石燕江戸歴史ライブラリー編集部『江戸妖怪画大全』(2018 江戸歴史ライブラリー)
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