バイヤー鏡陽介×世界の職人たち
2019/08/12 UP
―「モノ」を誂える場から「個性」を誂える場へ―
をコンセプトに、時代と場所を超える、真の身嗜みを提供する売場へと2019年8月14日(水)にリフレッシュオープンするパーソナルオーダーサロン。国内外の一流ブランドのオーダーメイドからレディトゥウェアにいたるまで、幅広いアイテムを展開。ソーシャルからオン、オフすべての場に対応し、新の紳士の身嗜みをトータルで提供します。
このコーナーでは、バイヤーの鏡が独自の審美眼でセレクトしたブランドのアルチザンやテーラーとモノ作りのこだわりについて対談し、「誂えることの喜び」を伝えていきます。
第3弾は〈HENRY POOLE(ヘンリープール)〉のアレックス・クック氏との対談をお送りします。
日本橋三越本店 紳士パーソナルオーダーサロン バイヤー
鏡 陽介
1979年生まれ。2002年株式会社伊勢丹(現在の株式会社三越伊勢丹)入社。
入社以来、伊勢丹新宿店のオーダーメイドやビジネスウェアを担当し、2018年4月より日本橋三越本店のオーダーメイド担当へ異動。2019年8月、日本橋三越本店パーソナルオーダーサロンリフレッシュオープンの指揮を執った。
〈HENRY POOLE(ヘンリープール)〉カッター
アレックス・クック氏
ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、ヘンリープールに入社。現在、シニア・カッターを務める。
鏡 〈ヘンリープール〉のブランドの歴史を教えてください。
アレックス 〈ヘンリープール〉は1806年にジェームズ・プールによって創業され、当初は軍服を中心に扱っていました。ジェームズの死後、息子のヘンリーが、後を継ぎました。彼はテーラーとしても、もちろん優秀だったのですが、社交性が極めて高く、〈ヘンリープール〉の店は次第にお酒を飲み、シガーを嗜むような社交場になっていきました。それが〈ヘンリープール〉が大きく成長した一つの要因です。
その後、〈ヘンリープール〉は様々なアイテムを生み出していきます。エドワード7世から、燕尾服のジャケットのテール部分を切り落として欲しいと要望があり、作製したジャケットが、後にタキシードとなります。
そのジャケットが、ニューヨーク州のタキシードパークにあるタキシードクラブという社交場のユニフォームとなったことにより、タキシードは広がっていったのです。
ヘンリーには後継ぎがいなかったので、彼の死後、従兄弟であるカンディ家が店の経営を引き継ぎ、ビジネスは拡大していきます。第二次世界大戦前にはパリやフランクフルト、ベルギーにもショップがありました。
鏡 アレックス氏がカッターとなったきっかけを教えてください。
アレックス もともとロンドン・カレッジ・オブ・ファッションの学生だった頃はレディースをメインに勉強していました。デザインと技術を学ぶ中で、技術の方が得意でしたので、卒業後はその技術を生かしたいと考え、たまたま職があったヘンリープールに行きました(笑)。
通常は、縫製を何年か学んでからカッターに行く人が多いのですが、私の場合は初めからカッターの見習いをさせてもらうことが出来ましたので、それはラッキーだったと思います。
鏡 〈ヘンリープール〉のモノ作りに対してのこだわりや想いをお聞かせください。
アレックス 〈ヘンリープール〉のこだわりはバストに作る立体感にあります。これは型紙だけでなく、縫製や芯の据え方で生まれてくるものです。また、袖付けに関してもこだわりがあります。他の英国のテーラーのようなロープドショルダーではなく、袖山も他のテーラーより低めに設定しています。ウェストも程よくシェイプを入れて、裾にかけてフレアになっています。そういったバランスがとれていることがヘンリープールの一番の強みです。
鏡 カッターとしての醍醐味はどんなところに感じますか。
アレックス 「自由度」ですね。製図にはもちろんルールがありますが、お客さまと話し合いながらお客さまのスタイルを表現することができます。決められたことだけでなく、自分でお客さまをどう演出できるかということを楽しんでいます。
また、カッターはよりお客さまに近い位置でコミュニケーションをとることができます。様々な成功者の方々と会話を楽しんで、その方々の良さを引き出すことが出来ることも醍醐味です。
鏡 顧客はどのような方が多いですか。
アレックス 法律関係、銀行、建築家、芸術家、会計士、起業家など様々です。ビジネスに関与されている方が多いです。稀に芸能関係の方もいますが、少ないですね。
鏡 〈ヘンリープール〉と、他のテーラーとの違いはどんなところですか?
アレックス イタリア、イギリス、フランスと世界中に様々なテーラーがあります。
ナポリのテーラーと比較すると、ドレープ(立体感)の作り方が全く異なります。私たちの方がより構築的。それは肩だけでなくバストも含めて。袖の作り方もナポリの雨降り袖のような装飾的なものではなく、もっと袖山のコンパクトな作り方をします。
ただし、英国の他のテーラーと比べると、決して英国的とは言えず、中庸と言えるのかも知れません。
鏡 〈ヘンリープール〉は、新しいものを取り入れることを大事にしていますか。
アレックス もともとのヘンリープールのやり方はありますが、現代のお客さまの要望は決して無視できません。絶えず新しいものを取り入れています。
ただし、ファッションは循環するものなので、袖山が高いものがトレンドとなる時代がまたやって来る可能性がある。その時にそういった技術を持っていることが一番大事だと思っていますし、自分たちはその技術を持っていると確信しています。
鏡 本日はありがとうございました。
#2 〈Camiceria Lombardi(カミチェリア・ロンバルディ)〉
#3 coming soon
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