工房探訪
―「モノ」を誂える場から「個性」を誂える場へ―
をコンセプトに、時代と場所を超える、真の身嗜みを提供する売場へと2019年8月14日(水)にリフレッシュオープンしたパーソナルオーダーサロン。国内外の一流ブランドのオーダーメイドからレディトゥウェアにいたるまで、幅広いアイテムを展開。ソーシャルからオン、オフすべての場に対応し、新の紳士の身嗜みをトータルで提供します。
このコーナーでは、パーソナルオーダーサロンでご紹介する様々なブランドの工房を訪れることによって、様々なブランドのモノ作りに対してのこだわりや想いを伝えていきます。
第6回は日本人パンツ職人・尾作隼人氏が仕立てるオーダーパンツブランド〈PANTALONAIO OSAKU HAYATO(パンタロナイオ オサクハヤト)〉。
小田急線生田駅から徒歩3分ほどの場所にある工房兼サロンに伺いました。
――尾作氏がパンツ職人を志すようになったきっかけを教えてください。
もともとはテーラーを目指し、銀座の老舗テーラーで修行していました。そこは、1年ちょっとで退職しましたが、生活していく為に、パンツのアウトワーカーとして独立しました。1本だけ練習として先輩職人に教えてもらいながら製作し、2本目からはお金もらっていました。今、1本目に製作したパンツを見ても結構良く出来ているので、意外と才能があったのだと思います(笑)。
幸いなことに、アウトワーカーとしての仕事は独立してすぐにもらえるようになりました。
ちなみに、当時、パンツは3日で1本製作することができる職人が良い職人とされており、僕は1本目から3日で製作することが出来ました。もちろん、睡眠時間を削ったから出来たということはあるのですが…。
ただ、その頃から僕は「早く縫うことが出来る職人=良い職人である」という考え方は間違っていると思っていました。製作する時間を早めるのであれば、製作にかかる時間を変えずに、パンツの完成度を上げたいというのが僕の考え方です。
効率を上げて生産数を増やすよりクオリティを上げる方がお客さまに喜んで頂けますよね。
尾作氏が1本目に製作したパンツ
――ブランドを立ち上げたきっかけを教えてください。
サルトリアチッチオの上木さんと出会い、彼の仕事ぶりを見て、ジャケットは片手間で縫っていても叶わないなと。でもパンツなら勝負できるんじゃないかと。パンツ一本でやっていけるという手応えは何となくあったので、スパっとパンツ1本で生きていこうと決めました。僕はこういう大事なことを感覚的に決めてしまう性格なのです。
その後、ブランドを立ち上げて、2016年頃に完全に自分のブランドだけに集中できるようになりました。
――モノ作りで一番大切にされていることは何ですか?
ビスポークにおいてはシンプルに「最善を尽くすこと」と「誠実であること」が全てだと思っています。自分の持っている技術は全て使う。そういった感じでパンツ製作に取り組んでいると、常に型紙が進化していきます。
また、仕事の中で常に10%は商品開発の気持ちを持って取り組んでいます。モノが綺麗に仕上がっていればいいという時代でもないので、「見た目が良いこと」と「履き心地が良いこと」、その両立を目指しています。
――既製品を始められたきっかけは?
単純にオファーを頂いたからです。ただ、ビスポークで学んだものを既製品に落とし込んで、もっと多くのお客さまに良いパンツを体験してもらえたら嬉しいです。
既製品もビスポークもそれぞれに良し悪しがあり、僕は既製品の工場もリスペクトしています。工場もすごく前向きに取り組んでくれましたしね。
使用しているアイロンは指ぬきをしながら使用することもある為、持ち手が削れている。
――〈パンタロナイオ オサクハヤト〉のパンツの特徴を教えてください。
人間の脚は太腿の上部が前方に出て、そこから膝に向かって反りながら、膝下では逆にふくらはぎ部分が後方に出てきます。この形に生地を美しく沿わせる為にはS字カーブを描くのが一般的には理想とされています。うちのパンツは、それに加えてベルト部分を湾曲させ、ウェスト部分のホールド感をアップさせるM字カーブが一番の特徴です。常に骨の位置や形は意識して作っています。
パンツが描くM字カーブ
アイロンワークで生地を殺していく様子。左上の写真では余っていた生地が右下の写真ではなくなっていることが分かる。
――これからのモノづくりでチャレンジされたいことはありますか?
僕がやるべきことは目に見える全てのお客さまにご満足頂くこと。そして、その次の仕事にこれまでの仕事を活かすこと。それに尽きます。
MTM(メイドトゥメジャー)を開発したのも、たくさん待ってもらっているお客さまに対して少しでも早くパンツをお届け出来たらという思いから。
今、ビスポークは、この工房で全ての工程を私一人で行っていますが、MTMでお客さまから代金を頂戴できれば、工場の職人たちにも投資が出来ます。そこで職人の育成ができて、パンツ職人を目指す若い人たちが増えれば、こんなにハッピーなことはありません。
※日本橋三越本店本館2階=パーソナルオーダーサロンでのお取り扱いはメイドトゥメジャーのみとなります。
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