紳士靴担当 川村拳大のシューケアマイスターへの道
2020年3月18日、日本橋三越本店紳士フロアがリフレッシュオープン。
そのオープン記念として、3月20日(金・祝)から22日(日)の3日間、本館2階紳士靴で靴磨きイベントを開催しました。
今回は、シューケアマイスターを目指す川村が、靴磨き選手権優勝の経験もある寺島直希氏に、路上靴磨きから靴磨き選手権優勝への道のりや、靴磨きのこだわりについて話を伺いました。
川村 靴磨きを始めたきっかけを教えてください。
寺島 私の父は料理人だったのですが、休日に良く包丁研ぎをしており、それを見て「一つのモノに手を掛けて自分のモノにしていく」ということ学びました。私はもともと野球をやっていましたので、それを野球に置き換え、買ってもらったグローブに対してしっかりと手入れをすることで、小学生の時に買ってもらったものを高校3年まで使い続けることが出来ました。それが今の私の仕事のスタイルにもつながっていきます。
高校卒業後は野球から離れたのですが、アメリカの洋服や革靴が好きだったので、野球の時と同様に、革靴の手入れを始めました。祖父が洋服の繊維関係の仕事をしていて、家には洋服や靴があふれており、兄もアパレル関係で働いていましたので、何か縁のようなものも感じました。
私は、その頃、革靴を磨いて履く喜びを感じるようになったのですが、街を歩いている人の靴を見るとあまり綺麗じゃなかった。それが路上に出て靴磨きを始めたきっかけの一つです。それと京都で本格的な靴磨き専門店がなかったということもあり、この地で一番になろうと決心しました。
川村 職業として靴磨き職人を選んだのはいつ頃でしょうか。
寺島 グローブの職人を目指していましたが、浪人した大学受験に失敗して、気付いたら靴磨きを始めていました。職業として選んだのは18歳の時で、20歳で本格的に路上に出ました。
川村 下積み時代の苦労話などありますか?
寺島 いまでこそ靴磨きの見られ方が変わってきましたが、私が始めた当初はあまり良い見られ方はしませんでした。
また、路上は許可がとれないので、ほぼ毎日警察に通報され追いかけられていました(笑)。特に年配の方は昔の靴磨きのイメージをお持ちの方が多く、「お前、そんなので今の時代やっていけると思っているのか」、「邪魔だ、どけ!」と水をかけられたりしたこともあります。理解してもらうのに時間がかかりましたね。
川村 それでも靴磨きを続けられたのは何故ですか?
寺島 この京都という場所で必ず一番になる、一番信頼してもらえる職人になる。一つのモノに手を掛けて永く使い続ける思いをたくさんの人に伝えたい、そして感じてもらいたいと思ったからです。また、「帰ってきてくださるお客さまがいる」ということです。それが僕の靴磨きの価値の証だと思います。靴磨きで綺麗になった靴を見たお客さまが笑顔になっていく姿を見ると頑張ろうと思います。
川村 寺島さんがこだわっている靴磨きのポイントを教えてください。
寺島 靴磨き職人は靴磨きをしたら、それで終わりということではないと私は思っています。お客さまが気付かないことに私が気付いてコンサルティングをしなければならないと思っています。お客さまと共創して、靴の変化を楽しんでいただくということです。
川村 技術的な部分のこだわりはありますか?
寺島 時間を掛けて綺麗に仕上げることは誰にでも出来ることなので、限られた時間の中で如何に綺麗に仕上げられるかということ、ワックスの品質管理と塗り伸ばし方、サイドのラインの仕上げ、後は汚れの落とし方や所作ですかね。
川村 寺島さんは靴磨きをされる時、手でクリームを塗られていますよね。理由はありますか?
寺島 野球のコーチにグローブの手入れについて教わっていた時、手でやるようにと言われたのがきっかけです。革を触って今の状態を確かめることが重要だと思っていて、それができるのは指しかないと思っています。
川村 今日、寺島さんの靴磨きを拝見して、所作の美しさに感動しました。ご自身でもそういった部分は気にされていますか?
寺島 「靴磨きを魅せる」意味で、背筋を伸ばして、お客さまと目を合わせて磨くこと、指の使い方や角度は意識しています。あと、ブラッシングのリズムも大事にしていますね。楽器を奏でるようなイメージです。自分の中でリズムを流しながら磨いていますし、それをするために必要な筋トレを最近はしています。
川村 海外の老舗靴ブランドにも招聘されていらっしゃいましたが、靴磨きの本場であるヨーロッパに靴磨きに行ってみてどう感じられましたか?
寺島 僕が海外に行った理由は日本の磨きを知ったうえで、海外の磨きを体感したかったということです。逆に僕の磨きを見てもらって、お互いの良いところを言い合ったりしました。磨き方は国によってもちろん様々です。何が良い、ダメではなく。国々でのスタイルや伝統があり、特に汚れ落としの仕方や色の使い方は日本とは全く異なっていましたのでとても勉強になりましたし、自分の靴磨きの幅も広くなりました。これを自分だけのものにするのではなく、日本の方にも伝えていきたいですね。
川村 いつもスーツで靴磨きをされていますが、こだわりがあるのですか?
寺島 一つは、仕事をする上でお客様に安心もお届けしたいからです。自身に対しても拘りを持つことで、わざわざ来ていただくお客様にせっかくやるならこの人に任せたいと思って頂きたいという事です。
また、選ぶものに関しては「直感的に自分が美しいと思うか」と、「磨きをするときに美しいか」の両方を意識して選んでいます。
川村 オーダーされることが多いですか。
寺島 そうですね。決めつけてはいないですが、今は<サルトリア・ラファニエッロ>でオーダーすることが多いです。
川村 いつも素敵なスタイルですよね。他に好きなブランドはありますか?
寺島 シャツは肌に一番近いので、アイテムとしても大好きです。ブランドでは<レスレストン>や<ミナミシャツ>が好きですね。あと一番靴に近い靴下も好きです。パリの<KENJIRO SUZUKI>や、今日履いている<ニュー&リングウッド>を愛用しています。
川村 今後やっていきたいことはありますか?
寺島 現在、まだ決まっていないのですが、お店をオープンする予定です。今のサービスは残しつつ、今までの靴磨き屋さんとしての在り方を変えようと計画しています。また路上時代にアンケートを取って多かった悩みに対して応えられる靴屋も作っていきたいです。
川村 寺島さんにとって靴磨きとは?
寺島 「人生を変えてくれたもの」です。磨きをやることで出会えた縁というのが僕にとって大きかったです。自分自身も変わりましたし、お客さまも変わったと思います。
川村 本日はありがとうございました。
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