~ブランドマスターピースについて語る~
岩元:まずは<ドーランドハウス>の特徴や強みについてお聞かせください。
大野:ブランドとしては2003年の秋冬シーズンに三越のプライベートブランドとしてスタートし、現在18年目となります。
立ち上げ当初はビジネスアイテムを中心に展開しておりましたが、時代時代のニーズに合わせ、現在ではカジュアルアイテムを含めたトータルで展開しております。
ブランドの強みとして、我々の工場背景にあります。国内に3つ、直営工場を保有しています。直営工場を国内に抱えているということは、お客さまのご要望や商品トレンドを素早く具現化することができます。
岩元:腕のいい丁寧で上質なモノづくりをされていますよね。
大野:ありがとうございます。メーカとしては一昨年100周年を迎えました。常に時代に合わせたお客さまのご要望に応え続けることにより培われてきた、技術とノウハウが最大の武器といえますね。
岩元:100周年を迎えたタイミングで、全く新しいモデルのスーツを発表されましたよね。
岩元:襟裏に隠れるアゴくせダーツや、細部の閂など、こだわりが随所に見られます。襟周りの吸い付きも柔らかく、トレンドにとらわれずいつの時代もベーシックとなる10年先も着られるスーツだと感じます。
大野:10年先も着られるスーツがまさにコンセプトとなります。フラワーホールと肩線の仕付け糸が「MHモデル」のアイコンとなります。
■<ドーランドハウス>もう一つの強み
岩元:新たな定番モデルの開発のお話を伺いましたが、一方で<ドーランドハウス>のもう一つの強みが、お客さま一人ひとりのご要望を形にするパターンオーダーですよね。
大野:そうですね。スーツやジャケットはもちろんコートやパンツブルゾンなどもオーダーできます。
岩元:ブルゾンは先シーズンよりパターンオーダーを開始しましたね。
大野:そうですね、昨今いろいろな環境変化の中で、お客さまのご要望はカジュアルなアイテムに振れてきています。その中で、我々の強みであるパターンオーダーでもご要望にお応えできないかと、他所のブランドではあまりないカジュアルブルゾンのオーダーをスタートしました。
襟元のデザインやポケットの仕様、あるいはポケットの数、お客さまによってさまざまなお好みがありますので、それをパターンオーダーで具現化しようと。もちろんお客さまそれぞれのサイズに合わせてです。
岩元:選べる素材も豊富にありますよね。カシミヤ、ウルトラスウェード、レザーなど、スーツやジャケットと同じ素材で、新たなアウター的要素のあるアイテムがオーダーできると。サファリジャケットのようなデザイン性のあるジャケットのオーダーが出来るところも魅力ですよね。しかも自社工場ならではのフットワークの軽さで、納期も早い。
大野:アイテムや時期にもよりますが、早ければ3週間でお納めします。自社工場の強みの一つと言えますね。
岩元:現在、スーツ、ジャケット、コート、パンツ、ブルゾン、デザインジャケットなどがオーダーできますが、今後のパターンオーダーの展開はいかがでしょう。
大野:インナーアイテムやカジュアルアイテムの幅を広げていきたいと考えております。まずは夏にむけてハーフパンツのパターンオーダーを承れるよう進行しております。ハーフパンツは、素材はもちろんですが股下の長さは数センチ単位で好みが分かれるところです。そういった既製品では対応できないご要望のあるアイテムのパターンオーダーの幅を広げていきたいですね。
岩元:<ドーランドハウス>の強みは、お客さまの要望や趣向に合わせて柔軟に変化できることですね。お客さまの好みが多様化してきた中で、色々なアイテムをパーソナルにオーダーできるように変化してきているのは必然かもしれませんね。
■変化するニーズ
岩元:最近、お客さまのお好みが変わってきているという印象はありますか?素材、サイズ、ディテールへのこだわりなど、コロナウイルスのことも含め、お客さまの関心ごとが変わっていると思うのですが。
中田:より機能性やストレッチ性を求められるようになりました。パンツにストレッチ性は必須ですし、上着に関してもカチッとした見た目と、それでいて軽やか着心地というものは必ず求められます。
岩元:それに合わせて型紙も変わってきていますよね。いわゆるテーラードのものから、やわらかいもの、軽いものに変化させているのも<ドーランドハウス>の強みですよね。
中田:ジャケットのモデルも変わってきています。内蔵物を非常に簡素化しつつも、立体感がしっかり出るジャージージャケットはとても人気です。
あとはセットアップの商品も増えていますね。ジャケットとパンツを別々でコーディネートできて、さらにパンツは2wayのストレッチ素材。テレワークも増えている今の状況なので、とても好評です。
岩元:よくあるジャージーのジャケットは、サイズが小さくて入らないというお声が多いので、そのあたりもパーソナルオーダーでしっかり対応できると本当に強いですよね。次のシーズンでは、そういう素材で提案してみてもいいかもしれません。
■ブランドを愛するお客さま
岩元:<ドーランドハウス>をご愛顧いただいているお客さまはどのような方が多いでしょうか。
中田:本当に様々な方がいらっしゃいますが、例えばスーツをご愛顧いただいているお客さまの中には、経営者の方、医師の方、政治家の方なども多くらっしゃいます。
岩元:そういった方々のスーツの着方が変わった、というような印象はありますか?例えば、もうネクタイはしないなど。
中田:いえ、スーツをお召しになるときのスタイルは変わらない印象です。どちらかというとカジュアルの日にお召しになるものがソフトなジャケットやブルゾンに代わっているイメージです。
一口にスーツをお召しになると言ってもさまざまなシーンがございます。卒業式やリクルートの方もいれば、人前に立たれたり学会にご出席されるなど。なのでスーツだけでも多くのモデルを用意しています。ゆったりめな「ブリティッシュモデル」から細身の「モダンブリティッシュ」、「イタリアンクラシコ」、今回の新しい「MHモデル」など。
「うちのブランドはこうだから」と押し付けるのではなく、ご年齢や用途に応じて、それぞれにあったモデル・サイズをオーダーしていただけます。実際に出来上がっている素材を見ることもできますし、オーダー初心者の方にも作りやすい環境になっていると思います。
岩元:確かに、プライスもモデルも生地も、実に幅広いですよね。
中田:一人ひとりのお客さまのご要望に、よりスピーディに対応していくことを愚直にやり続けることで、ファンの創造、一人ひとりのお客さまに信頼していただけるのだと思います。
岩元:本当に小回りが利きますよね。個人商店のようなフットワークの軽さがあります。「これは変わったご要望だったな」というものは何かありますか?
中田:最近では病院に行くときの通院手帳が入るようなポケットをジャケットにつけてほしいというご要望がありました。
あとは、ブルゾンで、お尻の方まで隠して着たいから、着丈寸法をジャケットと同じくらいに補正してもらえないかというご要望があり、すぐに工場へ相談しました。出来上がりに対して非常に不安でしたが、工場の方々もしっかりと考えを理解してくださり、結果、ご満足いただけました。
岩元:サイズに関しての、既製品では見つからない丁度よさは求められますよね。ポケットなどのデザインディテールへのご要望もあるのですね。
中田:ポケットに関するご注文は多いですね。ベストで通常の設定とは違う、袋物のポケットを作る依頼もありました。イレギュラーなご要望ですので、その際も直接工場に問い合わせ、日本橋三越本店の受注に長らく対応している熟練の技術者があきらめずに対応してくれました。
岩元:なるほど。時代時代のお客さまに合わせて変化対応していく<ドーランドハウス>の特徴や強みが凝縮されたエピソードですね。
お客さまを第一に考えた確かなモノづくりと、柔軟にスピーディに対応できるフットワークの軽さを実感しました。本日はどうもありがとうございました。
熟練の職人が集まる自社工場で縫製する、<ドーランドハウス>の最上級ラインのスーツ「MHモデル」は10年先も着られる、時代に流されない最上級のベーシックスーツです。
しっかりとした風格と軽くソフトな着心地は、年齢問わず長く着ていただける逸品です。パターンオーダー用の生地は常時100種類以上ご用意していますので、お客さまのお身体とお好みに合わせた一着をお作りいただけます。
・ロロピアーナ社super130's生地使用 MHモデルスーツ 176,000円(税込) 毛100%
(パターンオーダーの場合はアップチャージ11,000円(税込))
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