紳士靴担当 川村が乗馬ブーツについて学ぶ
今回は、乗馬ブーツのお手入れについて「乗馬サロン」マネージャー石井氏に、乗馬ブーツのお手入れ方法についてレクチャーいただきました。
紳士靴/シューズケア&リペアカウンターでもメンテナンスを承ります。
川村:前回の草履ケアに引き続き、今回は乗馬ブーツについて学びに本館4階 乗馬サロンピアッフェに来ました。日本橋三越本店には乗馬の専門店ピアッフェがあります。石井先生、どうぞよろしくお願いいたします。
石井:宜しくお願いします。
川村:今回紳士靴の担当としてブーツの取り扱いがありますが、乗馬ブーツはまだ知らないことが多いです。石井先生、乗馬ブーツの特徴について教えてください。
石井:乗馬には大きく2つのスタイルがあり、アメリカのカウボーイの「ウェスタン乗馬」と、イギリス発祥の「ブリティッシュ乗馬」が御座います。ピアッフェではブリティッシュ乗馬の商品を取り扱っております。どちらのスタイルのブーツとも牛革を使用しておりますが、ブリティッシュ乗馬のブーツは、ウェスタンブーツの装飾が派手で、短く・脱ぎ履きが楽なブーツではなく、膝下まで長さがあり、足になるべくフィットするようなスタイリッシュなデザインがベースです。馬術競技での基本色はブラックですが、その他に色々なカラーやデザインをオーダーでお作りすることも可能です。
川村:2種類があるとは知りませんでした。
私の担当革靴ブーツに関して言うと英国製中心のモデルが多いです。
ピアッフェの扱い商品では、価格帯はどれくらいで何年ほど履けますか?
石井:当店では、国内の靴職人が1から全て手作りする「純国産フルオーダー乗馬ブーツ」(253,000円税込~)と、イタリア製DeNiro社の乗馬ブーツがあり、こちらは既製品(121,000円税込)とオーダーブーツ(198,000円税込~)をお選びいただけます。馬に乗る馬場は砂の為、そこを歩くと泥が付いたり、騎乗時には常にブーツは馬体に付いているので、馬の汗や毛がかなり付着します。使用頻度、扱い方にもよりますが、革製品の為、修理も効きますし、正しいケアをすれば一生履くことも可能です。
川村:オーダーが多いのですね。確かに靴のサイズだけではなくふくらはぎのサイズも人それぞれですからね。ちなみにブーツには、馬に影響がないように素材など配慮されているのですか?
石井:特に特別な素材などは使いませんが、馬体に触れる為、突起物や擦れてケガをするようなデザインはありません。<DeNiro/デニーロ社>が使用している革は初めから特殊な防水加工が施されているので、しばらくは濡れる心配はありません。
川村:実際のお手入れ方法は、どんな種類があるのですか?
石井:馬に装着する馬具をお手入れする「サドルソープ」という物を馬具のお手入れと一緒にブーツにも使用する人もいらっしゃいますが、そうすると革が柔らかくなりすぎてしまい、伸びてサイズが大きくなったり、縫い目が裂けやすくなってしまいます。やはり基本的な靴磨きが一番です。
川村:実際にご教授をお願いいたします。
川村:お手入れに使われる道具はどういったものでしょうか?
石井:基本的に汚れ落とし用のブラシと布、靴クリーム、靴墨(WAX)、仕上げ用のブラシを使用します。最後にクロスで拭くと更に光沢が出ます。(ストッキングを使用する人もいます。)
川村:どのくらいのペースでお手入れしたほうがいいですか?
石井:基本的に、騎乗後にはお手入れをした方が良いです。馬の汗や毛をそのままにしておくと革の劣化を早めます。また雨の時にどうしても騎乗しなければならない場合、騎乗後に新聞紙を中に詰め、暗所で湿気を取り、完全に乾いたらお手入れします。革は濡れて・乾いてを繰り返していくと劣化するので、雨の日は違う物を使用して騎乗することをお勧めいたします。
川村:気を付けるポイントはありますか?
石井:ブーツの内側のふくらはぎの部分は鞍に接するので、そこへは靴墨は塗りません。ローションクリームで汚れを取りしっとりさせておきます。
靴墨を使うことで、皮の表面に膜が出来るので、本体に汚れが付きにくく、ブラシで磨き上げることで革の表面が潰れていき、鏡面のような輝きに変わってきます。使えば使うほど味わいが出て、ケアすればするほど長持ちする、職人さんが心を込めて作ってくださった一足の靴を大切にする心が大切ですね。
もちろんブーツキーパーもいくつか取り揃えていますので、ご相談ください。
川村:ローションクリームがポイントなのですね。紳士靴では色付きのクリームを使うことが多いので勉強になります。
ブーツキーパーは紳士靴で専用の取り扱いが無いので、お困りのお客さまがいらっしゃればご案内しますね。
石井先生の乗馬に対する熱量が伝わってきました。
公式のInstagramでも石井先生の御雄姿が見たい方はこちら↓↓
https://www.instagram.com/lifedesignnihombashimitsukoshi/
今回使用したケアグッズ
一番左から
サフィール ノワール レザーバームローション 2,200円
サフィール ノワール クレム1925セット 色:ブラック、ニュートラル 4,180円
HAAS ブーツジャック 1,650円
ブーツシェーパー 4,400円
「ピアッフェオリジナル」フルオーダーブーツ 253,000円 日本製
本館2階に移動して靴コーナーにて
川村:本館2階でもケアが承れるのですね。
岡嶋:はい、乗馬ブーツですと基本的にはスムースレザーを使用している事が多いので、メンテナンスも承っております。本館4階にも乗馬サロンがあるので、ご相談いただくことも多いですよ。
川村:ちなみに乗馬ブーツのケア費用や納期はどれくらいでしょうか?
岡嶋:当店で承る乗馬ブーツの磨きは、2,310円になります。納期は状況によって異なりますが、3日程でお渡しできます。汚れ落とし、保湿、ツヤ出しの工程を行っていきます。
川村:もっとかかると思っていました。
実際にケアの仕方を教えてください。
岡嶋:ケアの工程は過去の記事にもありましたが
① 汚れ落とし
② 保湿
③ ツヤ出し
の流れです。
① 汚れ落とし
まずブラシを使ってのホコリ落とし。基本的には馬毛を使っていきますが、付着しているものが強い場合はより硬い毛のブラシを使う事もあります。その後、表面に付いた泥や古いクリームなどの汚れを落としていくために、M.MOWBRAY ステインリムーバーを使用します。強くこすって汚れを落とすのではなく、ステインリムーバーの力を借りながら革の上を滑らせるように拭っていくのがポイントです。
ホコリ落とし
汚れ落とし
ペネトレイトブラシで塗りこむ
③ツヤ出し
その後は、革の栄養でもある油分を補給するために、FAMACO1931サブライムレザークリームを使用します。今回はブラックとニュートラル(透明)の2種類を用意しました。ブーツの筒部分は鞍に接するので、基本的にはニュートラルのクリームを使っていきます。つま先などは擦れも起きやすい部分ですので、ブラックを使い、補色も行います。油分やロウ分がしっかりと含まれているクリームを使う事により、表面に薄い膜ができ、汚れが少しでも付きにくくなるというメリットもあります。
FAMACO1931サブライムレザークリーム・左からニュートラル(透明)・ブラックの2種類
ペネトレイトブラシで塗り込む
豚毛ブラシでブラッシング
クリームを塗った後は、その都度、豚毛ブラシを使ってブラッシングをしていくのがポイントです。ブラッシングする事で、クリームに含まれているロウ分が表面で固まることなく、革全体に馴染んでいきます。同時にツヤが出てくるので、ブラッシングの工程は大切です。ブラッシングで充分にツヤは出ますが、最後に余分なクリームを拭き取ってベタつきを無くしていきます。ベタつきが残っていると、埃が付きやすくなります。乗馬の場合ですと、地面が砂なので特に重要です。
仕上げにシルキーレザーグローブで乾拭き。
今回使用したケア商品
SANOHATA BRUSH × M.MOWBRAY 手植え馬毛 17,600円
写真左
M.MOWBRAYステインリムーバー500/3,300円
写真右
リムーバークロス/440円
写真左
FAMACO1931 デリケートレザージェル/3,080円
写真中央
FAMACO1931 サブライムレザークリーム/2,750円
写真右
ペネトレィトブラシ/440円
SANOHATA BRUSH × M.MOWBRAY 手植え豚毛/16,500円
シルキーレザーグローブ/3,080円
お問い合わせは下記までご連絡くださいませ。
03ー3274-8425(紳士靴直通)
靴磨きの予約システムはじめました。
詳しくはこちらから↓↓↓
その他のコラム
おすすめのイベント