バイヤー鏡陽介×世界の職人たち
2019/08/12 UP
―「モノ」を誂える場から「個性」を誂える場へ―
をコンセプトに、時代と場所を超える、真の身嗜みを提供する売場へと2019年8月14日(水)にリフレッシュオープンするパーソナルオーダーサロン。国内外の一流ブランドのオーダーメイドからレディトゥウェアにいたるまで、幅広いアイテムを展開。ソーシャルからオン、オフすべての場に対応し、新の紳士の身嗜みをトータルで提供します。
このコーナーでは、バイヤーの鏡が独自の審美眼でセレクトしたブランドのアルチザンやテーラーとモノ作りのこだわりについて対談し、「誂えることの喜び」を伝えていきます。
第1弾はサルトリア・ナポレターナの代表格である〈サルトリア・チャルディ〉のエンツォ・チャルディ氏との対談をお送りします。
鏡 ブランドの歴史を教えてください。
チャルディ 1950年代に私の父であるレナート・チャルディが20年に渡るサルトとしての修行を経て、創業しました。当時はトレド通りに店を構えていましたが、1971年に現在のフィオレッリ通りに移転しました。私は高校在学中から弟と一緒に学校が終わったら、サルトリアに通っていましたが、高校を卒業したと同時に正式にこのビジネスの世界に入りました。
鏡 フランコ・オルディネ氏のもとでも修行されたと伺ったのですが。
チャルディ 父(レナート・チャルディ)から、「フランコのところへ行ってこい。」と言われました。カッティング(裁断)を学ぶためでしたが、その他にも様々な職人のところへも学びに行きました。
鏡 なぜレナート氏は〈サルトリア・チャルディ 〉でなく、あえて他のサルトリアへ修行に行かせたのでしょうか。
チャルディ 父からは「より包括的な職人としての技術を学ぶ必要がある」と言われ、様々なサルトリアで修行しました。
見た目から想像できないほど温和な性格のジェントルマン。
鏡 テーラーとしてのこだわりを教えてください。
チャルディ 私の哲学は「私の目の前にいるお客さまに最善、最良の着心地を提供する」こと。その一点のみです。
鏡 チャルディと、他のテーラーとの違いはどんなところですか。
チャルディ 〈サルトリア・チャルディ〉のスーツには細かい部分の特徴が多くあります。例えば丸みを帯びたボリュームのある胸、わずかにラウンドした大きめの上襟などです。ファッション業界では流行を追う傾向がありますが、私たちはサルトリアのアイデンティティにこだわっています。自分たちの感性や経験をもとに新しい時代にフィットさせていますが、変化させないこだわりを持つことも大事です。
また、同じお客さまに対して毎回同じものを提供しません。着用の用途、生地、気分によってフィッティングが異なる事は多々あります。フィッティングはファッションに占める要素の中でも大きなウェイトを占めます。馴染みのお客さまでも必ず毎回仮縫いを怠らないのはその意味もあります。
〈サルトリア・チャルディ〉の商品の数々。クラシックなやや大きめの襟とソフトで滑らかなカッティングが特徴的。
鏡 工房に伺った際に、エンツォさんの製図を拝見したのですが、チョークの入れ方にびっくりしたのを覚えています。定規を使わず、フリーハンドで行っているのに、驚くほど美しい線を描くのです。
チャルディ 昔のサルトは皆、ソフトで滑らかな線を引くのが上手かった。
鏡 お父さんの時代は皆そうだったのかも知れませんが、現代でそれができる職人は少ないです。「〈サルトリア・チャルディ〉は、ナポリの伝統的なスーツを今だに作り続けている数少ないサルトリア」と言われる所以ですよね。
チャルディ その通りです。
見た目から想像できないほど温和な性格のジェントルマン。
鏡 〈サルトリア・チャルディ〉最も重視しているところはどんなところですか。
チャルディ お客さまにご満足していただくことを最も大事にしています。もし、裁断で上手くいかなかったとすると、後でいくら補正したとしてもお客さまにご満足いただくことはできません。
鏡 工房では何人くらいの職人が働いていますか。
チャルディ 7人です。
鏡 これも工房を拝見して感じたのですが、職人の方々はそれぞれ明確に役割が決まっていないように見えました。
チャルディ そうですね。
鏡 でも、出来上がった製品を見ると、個体差が少なく、ちゃんと全ての製品が〈サルトリア・チャルディ〉だと一目で分かる。何故なんでしょうか。
チャルディ 私たちは企業でありながら、家族でもあります。今のチームでも15年やっていて、みんな仲が良く、コミュニケーションも良い。工房の中で起きていることは全て共有し、同じパフォーマンスをしていこうという気持ちを全員が同じく持っているからでしょうか。職人同士は、ライバルではなく、家族なのです。
鏡 貴重なお話をありがとうございました。
恒例の記念写真。(左:鏡陽介バイヤー、右:エンツォ・チャルディ氏)
定期的に開催されるオーダー会の様子。
#1 〈SARTORIA CIARDI(サルトリア・チャルディ)〉
紳士ファッションフロアでは、男のこだわりとトレンドを感じさせる上質なデザインや、現代を生きる紳士のニーズを満たす多彩なワードローブが集結。お客さま一人ひとりのさまざまなシーンを彩る、上質かつエレガントなアイテムをご提案します。
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