バイヤー鏡陽介×世界の職人たち
2019/08/12 UP
―「モノ」を誂える場から「個性」を誂える場へ―
をコンセプトに、時代と場所を超える、真の身嗜みを提供する売場へと2019年8月14日(水)にリフレッシュオープンするパーソナルオーダーサロン。国内外の一流ブランドのオーダーメイドからレディトゥウェアにいたるまで、幅広いアイテムを展開。ソーシャルからオン、オフすべての場に対応し、新の紳士の身嗜みをトータルで提供します。
このコーナーでは、バイヤーの鏡が独自の審美眼でセレクトしたブランドのアルチザンやテーラーとモノ作りのこだわりについて対談し、「誂えることの喜び」を伝えていきます。
第2弾はイタリア最古のシャツブランド〈 カミチェリア・ロンバルディ 〉のシモーネ・ロンバルディ氏との対談をお送りします。
鏡 イタリア人にとってシャツとはどういうものですか。
ロンバルディ 仕事で着用するアイテムであり、男性のエレガンスの象徴です。現在も過去も、男性、女性問わず、ワードローブの必需品です。特にナポリでは、社会的地位のある人は必ず仕立ての良いシャツを着ています。仕立ての良いシャツを着ることは身嗜みの一つでもあります。
鏡 イタリアでは最古のシャツメーカーと伺いました。〈 カミチェリア・ロンバルディ 〉のシャツメーカーとしての歴史を教えてください。
ロンバルディ 1892年創業で、イタリアでは最古のシャツメーカーです。創業当時はビスポーク(オーダーメイド)専業で、キアイア通りに住んでいるエグゼクティブの方々を顧客とし、シャツを作っていました。それが評判となり、王侯貴族の方々のシャツを作るようになりました。今でもそのサイズデータはナポリのお店に残っています。
鏡 王侯貴族とはすごいですね。今はどのような顧客が多いですか。
ロンバルディ イタリア国内よりも日本や、アメリカ、ロシアなど国外の方が多くなっています。お客さまは弁護士や医者、政財界の方などビジネスエグゼクティブが多いですね。
今回、日本に来る前はサウジアラビアでオーダー会を開催したのですが、一人で200枚以上のご注文をされる方もいらっしゃいました。
襟の良さについて語る鏡バイヤー。
鏡 シャツは肌に最も近いところで着用するアイテムでありながら、ドレススタイルにおいてはコーディネートの核アイテムですからね。そういった方々はやはり〈 カミチェリア・ロンバルディ 〉のシャツの着心地に魅了されたのでしょうか。シャツ作りにおけるブランドのこだわりを教えてもらえますか。
ロンバルディ シャツのフィッティングが最も重要だと考えています。たとえ手縫いで縫製されていたとしても、フィッティングが合っていなければ全く意味がない。だから私たちは多くのシャツメーカーが仮縫いを行わない中、仮縫いを行うことを最重要視しています。
また、世界各国、体型も様々です。私たちは各国に合ったシャツの型紙を持っています。もちろん、日本人向けの型紙も持っているので、日本人の体型に合わせたシャツを作ることができます。
この型紙の製図を行うのは、私か、私の姉のみです。確かな技術を持った限られた職人のみで行っており、型紙は門外不出の財産です。
鏡 〈 カミチェリア・ロンバルディ 〉のシャツは襟のバランスが素晴らしいですよね。個人的には台襟の型紙づくりは世界トップクラスだと思っています。シモーネさんが考える〈 カミチェリア・ロンバルディ 〉の良さはどんなところですか。
ロンバルディ 私たちが考える良いシャツは生地、縫製、襟型などのコンビネーションが良いシャツです。
たとえお客さまから「こういう襟型を作りたい」と要望があったとしても、私たちが「バランスが悪い」と考えれば、そのシャツは作りません。その代わり、私たちは本当に良いシャツが出来るよう、別の手法を考え、お客さまのご要望にお応えするようにしています。
襟型サンプルの数々。ビスポークの為、細かな要望にも応えられる。
製品サンプル。ターンナップカフスは柔らかく仕上げられていて、美しい。
鏡 たとえお客さまの要望があったとしても、良いシャツが作れないなら作らないというこだわりこそが、〈カミチェリア・ロンバルディ 〉がこれだけ長く続いている秘訣でしょうか。
ロンバルディ そうですね。あとは「情熱」でしょうか。私の父はこの仕事に生涯を捧げました。父は常に「私には2つの家族がある。」と言っていました。1つは母と姉、私のことで、もう1つは職人たちのことです。仕事にも本当の家族への愛情と同様に情熱を傾けました。
鏡 ナポリのシャツとその他の地域のシャツの違いは何ですか。
ロンバルディ ナポリには歴史があり、オリジンがあります。シャツ、スーツそれぞれのアイテムにナポリ特有のスタイルや、伝統的な製法があり、そこが他の地域とは異なります。例えば袖のギャザー(マニカカミーチャ)もナポリの伝統的製法で、それを他の地域のブランドがやったとしても、それはあくまで「ナポリ風」と世の中は受け止めます。
袖や背中のギャザー。マニカカミーチャはイタリア語で「シャツの袖」という意味。ナポリ仕立ての特徴で、シャツやジャケットに用いられる技法。
いせ込みながら袖付けを行うことで、装飾的な美しさと、立体的な着心地を兼ね備える。日本語で「雨降り袖」とも呼ばれる。
袖のギャザーについて説明するシモーネ・ロンバルディ氏。
鏡 シャツの製作は分業制ですか。それとも一人の職人が全て縫製する丸縫いですか。
ロンバルディ 分業制です。現在、工房にはパート毎に特別な技術を持った12人の職人がいます。分業制だとその特別な技術を存分に活かすことができるのです。
ただし、デメリットもあります。それは職人が一人欠けた時、そのパーツのスペシャリストである職人の代わりを見つけるのが難しいということです。
鏡 なるほど。たとえ、職人を見つけるのが困難だとしても、シャツの品質を上げることを優先しているのですね。
本日はありがとうございました。
シモーネ・ロンバルディ氏と鏡バイヤーの2ショット写真。
定期的に開催されるオーダー会の様子。
紳士ファッションフロアでは、男のこだわりとトレンドを感じさせる上質なデザインや、現代を生きる紳士のニーズを満たす多彩なワードローブが集結。お客さま一人ひとりのさまざまなシーンを彩る、上質かつエレガントなアイテムをご提案します。
ご来店の際には下記よりご予約いただけます。
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