美術

多田圭佑展 Traffic

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2022/05  UP

個展「Traffic」によせて

 

私は見た目の違う様々な作品のシリーズを制作している。

各シリーズは、自分とバーチャルな空間( ゲームとか、映画とか、本とか…) が関係する際に、時間、重力、物質にまつわる新たな知覚を感じ、

それを探る中でアイディアを膨らませていく。

 

今のところ絵画を中心に作品を制作している。

ものなのか、図像なのか、どっちつかずなところが、自分の考えかたに近い気がしている。

 

今回は各作品シリーズについて記載しておく。

 

・残欠の絵画

オープンワールドタイプのゲーム内を旅して、先々で見つけた風景を描いている。

ゲーム内では無限の時間が繰り返されるが、それをプレイする私たちの時間は真っ直ぐと死に向かって進んでいく。

この無限、有限の時間が同時に存在する感覚。いつか展覧会でみた、ボロボロに経年劣化した絵画のことを思い出した。

永遠のものとして固定された絵画の空間が、私たちの終わりに向かう世界に引きずりだされたように感じ、その関係を表現したいと思い制作した。

 

・trace/dimension

3DCG で作られたリアリスティックなバーチャル空間とオブジェクトを体験したとき、まるで実在するかのような強烈な存在感を感じることがある。

実世界とは違う組成で作られたものであることは言うまでもない。なぜなら、この世界は地球の重力や時間の影響を受けないからだ。

そこでは、存在することそのものが浮遊しているかのようだ。

この存在していると言うべきか、していないと言うべきか、その不確かなあり方を表現したいと思い制作し始めた作品だ。

この作品は全て絵の具を素材としながらも、そうはみえないように制作している。

汚れた木の床やタイルの壁、キャビネット、垂れ下がるチェーン、全てが絵の具によって作られた造形物ということだ。

これら水平、垂直、奥行きを一枚の平面上に集約することで、存在と非存在のあわいを作り出す試みである。

 

・Heaven's Door

絵の具を素材にリアリスティックな門扉を制作した後、それを斧で攻撃する。

攻撃することで内部の色があらわになり、その破壊の痕跡を描画行為とした絵画作品だ。

この作品は17 世紀フランスで実際に使用されていた門扉をモチーフにしている。

今までの人生で見たことも触れたこともなかったはずのこの門扉に、なぜか強く既視感をおぼえた。

ゲームや映画の中で幾度となく潜った門扉にそっくりだったからだ。

個人の経験によって、ある場所ではよく見られるものが創作物と紐づき混ざり合い、歪んでいくような体験に強く影響を受けた。

バーチャルな空間を体験する時、それに魅入られながらも、ゴーグルを取ったとき、モニターを消したとき、

絶対に触れ合うことはできないと気付かされる。

どこか別の場所に行きたいという欲望と暴力、辿り着けないことを理解している自身。この関係を表現したいと思い制作した作品である。

 

多田圭佑

 

 

 

 

 

仮構された物質の前で

 

多田は、デジタル画像の経験、特にゲームの3D 空間において、テクスチャとポリゴンが決して不可分で「無い」

ことの奇妙さに関心をもっているという。デジタルに仮構された3D 空間では、物理的なオブジェクトかに見える

それらには、中身や重さが与えられていない。

それは、プレイヤーやそれを捉えるカメラが開発者の想定外の挙動をすることでしばしば「ポリゴンの裏側に抜け

てしまう」という事象が発生することによって、あからさまになる。そこには、ひとまずは現実と同じように見え

ていたはずのオブジェクトが、厚み0のペラペラの板にそれらしい画像が貼り付けてあるだけである。デジタル画

像の経験は、テクスチャとポリゴンの可分性、つまり「見えているそれらしいものが、実際にそれそのものではな

い」という感覚を与える。その感覚は、本来床面であるはずの木の板が直立し、壁となっている多田の作品を鑑賞

する際の、平衡感覚が狂う、かすかな浮遊感と通底する。

絵画には、「見えているそれらしいものが、実際にそれそのものではない」という感覚がある。

鉛筆や絵の具によって、まるでそこに本物があるかのように描きながら、しかしそれが紙やキャンバスの上の炭や

絵の具でしかないことも同時に示す。

多田の作品の、木の板やタイルが貼り付けられた壁面はしかし、そのような絵画的なイリュージョン――

「本来そうでないものを、何某かに見せる」――ということは発生していないように見えるだろう。

それらは、木の板やタイルを「描いた」のではなく、まず物理的に木の板やタイルなのだと。

ところが恐るべきことに、木の板も、タイルも、ビスや鎖までも、これらすべては絵の具から出来上がっている。

一瞬文意が取れないだろうか。これは比喩ではなく、文字通り、物理的に絵の具から作り出されているということ

だ(そのような目で見れば、実は木の板の木目が繰り返されているところも発見できるだろう。

つまり、これらは型取りされて、複製されたものであることを示している)。

これは、あまりにも、なんというか、笑ってしまう。

そこに膨大に消費された絵の具の量、その手間を考えれば、それがいかに異常な所業なのか分かるだろう。

《Heaven's Door》では、内部が絵の具であることを示すように、扉の傷からは絵の具の色が覗く。

そこでは斧で叩き切られることによって図らずも、絵の具の物理的な特性が「木目がないことによる壊れ方の違い」

として現れている。絵の具は飽くまでも物質であるのだが、その色味が光があふれるかのような蛍光色であることに

よって、物理的な存在であることから少しだけ浮遊しているように見える。

多田は、「絵画の存在証明として、絵の具であること」について信仰をもっているわけではないようだ。

ただ眼前に提示される作品が、「絵の具によって作られる、見せかけの何某か」であることには違いない。

これを何と「見れば」よいのか。それこそが鑑賞者に問われている。

 

評論家 gnck

 

 

 

In front of fabricated materials

 

Tada Keisuke is interested in the experience of digital imagery,

in particular the bizarre way in which textures and polygons are by no means indivisible in the 3D spaces of video games.

In digitally fabricated 3D spaces, what appear to be physical objects are not endowed with content or weight.

This is revealed frequently by the phenomenon of “coming out the other side of the polygons” when a player,

or camera that captures the object, behaves in a manner not envisaged by the game developer.

There an object that at least looked real becomes what appears to be just an image of that object, stuck on a paper-thin flat surface.

The experience of digital imagery imparts a sense of the divisibility of texture and polygons, ie, that “what appears to be there is not

actually what it seems.” This sensation connects at a fundamental level to the faint feeling of floating, the loss of equilibrium when

viewing Tada’ s works, where wooden boards one would expect to form the floor, stand up to form walls.

Paintings have this same sense of what appears to be there, not being what it seems.

While rendering the genuine article in pencil or pigments as if it were right there,

they simultaneously show that this is merely charcoal or paints on paper or canvas.

Tada’ s walls lined with wooden planks and tiles, however, do not appear to generate such painterly illusions of making something

look like something it is not. Meaning these are not “renderings” of boards or tiles, but first and foremost, physically planks and tiles.

The astounding thing about these works however, is that both wooden boards and tiles, and even screws and chains,

are all made from paint.

Yes, you read that correctly. Not metaphorically but literally, physically made from paint.

On becoming aware of this, you will probably notice that the grain on the wood is actually repeated, revealing these boards to be

molded duplicates.

And you may find yourself laughing at the sheer... audacity? Sheer something of it.

On considering how much paint has been consumed here, and how much time, you come to realize the extraordinary nature of

Tada’ s endeavor.

In Heaven’ s Door, as if to show that the inside is paint, the color of the paint can be seen through marks in the doors.

There, the physical properties of the paint manifest incidentally, as “a different way of breaking due to the lack of grain” through the

splitting of the doors with an ax. The paint may be only the material, but the glowing, fluorescent nature of its coloring makes

it appear to be just slightly adrift from its presence as a physical entity.

Tada does not appear to hold to any belief in something being paint “as proof of the existence of a painting.” The works simply

placed before us are without a doubt “pretend somethings made from paint.” What should we “see” them as? That is up to the viewer.

 

Review by gnck_

 

 

 

 

 

 

多田圭佑

1986 年 愛知県名古屋市生まれ

2006 年 愛知県立芸術大学 美術学部油画専攻 入学

2010 年 愛知県立芸術大学 美術学部油画専攻 卒業

      愛知県立芸術大学 美術研究科博士前期課程 入学

2012 年 愛知県立芸術大学 美術研究科博士前期課程 修了

 

主な個展

2020 年 Beautiful Dream / MAHO KUBOTA GALLERY / 東京都 神宮前

2020 年 CHANGELING / rin art association / 群馬県 高崎市

2018 年 BORADER / CAPSULE / 東京都 三宿

2018 年 エデンの東 / MAHO KUBOTA GALLERY / 東京都 神宮前

2017 年 forge / MAHO KUBOTA GELLRY / 東京都 神宮前

2015 年 EXISTENCE / JIKKA 実家 / 東京都 千代田区

2014 年 THE TRACE / 愛知県立芸術大学サテライトギャラリー / 愛知県 名古屋市

      カヤバコーヒー 壁プロジェクト / カヤバコーヒー / 東京都 谷中

2008 年 independence by mind / カフェパルル / 愛知県 名古屋市

2007 年 多田圭佑 個展 / 名古屋造形芸術大学 / 愛知県 小牧市

など

 

主なグループ展

2022 年 VOCA 展 2022 現代美術の展望ー新しい平面の作家たち / 上野の森美術館 / 東京都 台東区

2022 年 地底人とミラーレス・ミラー / gallery αM / 東京都 千代田区

2021 年 現代美術のポジション2021-2022 / 名古屋市美術館 / 愛知県 名古屋市

2016 年 AKZIDENZ / Aoyama Meguro / 東京都 目黒

2015 年 Lagrangian point パースフェクティカスタマイズ / PARC / 京都府 三条

2014 年 Some Like It Witty / Gallery EXIT / 香港

2013 年 relational map / STANDING PINE / 愛知県 名古屋市

      TRICK-DIMENSION / TOLOT heuristic SHINONOME / 東京都 江東区

      CIRCLE3 / ターナーギャラリー / 東京都 東長崎

2011 年 トーキョーワンダーウォール公募 入選者作品展 / 東京都現代美術館 / 東京都 清澄白川

      DREAMING THE WORLD / 女木ハウス / 香川県 女木島

2010 年 物語の伏線 part2 / ギャラリー MoMo ryougoku / 東京都 墨田区

      CIRCLE2 / 愛知県立芸術大学サテライトギャラリー / 愛知県 名古屋市

      都市の断片 / アーバンリサーチギャラリー / 愛知県 名古屋市

2009 年 CIRCLE / 愛知県立芸術大学旧教員官舎 / 愛知県 長久手市

2008 年 SEPTEMBER / 市民ギャラリー矢田 / 愛知県 名古屋市

      ART×ART / 愛知県美術館 / 愛知県 名古屋市

など

 

コレクション

前澤友作 コレクション

川崎祐一 コレクション

アラリオミュージアムコレクション

ピゴッチ コレクション

ZOZOコレクション

など

 

 

 

 

Keisuke Tada

1986, Born in Nagoya,Aichi,Japan

2006, Graduated from the Department of oil painting,Aichi University of Arts

2012, Completed Postgraduate Studies, Aichi University of Arts

etc.

 

Selected Solo Exhibition

2020, Beautiful Dream / MAHO KUBOTA GALLERY / Tokyo,Jingumae,Japan

2020, CHNGELING / rin art association / Gunma,Takasaki,Japan

2018, BORDER / CAPUSULE / Tokyo,Misyuku,Japan

2018, East of eden / MAHO KUBOTA GALLERY / Tokyo,Jingumae,Japan

2017, forge / MAHO KUBOTA GALLERY / Tokyo,Jingumae,Japan

2015, EXISTENCE / JIKKA / Tokyo,Chiyoda,Japan

2014, THE TRACE / Aichi University of Arts satelight gallery / Aichi,Nagoya,Japan

KAYABA Coffee Wall Project / KAYABA Coffee / Tokyo,Yanaka,Japan

2008, independence by mind / Cafe palu-lu / Aichi,Sakae,Japan

2007, KEISUKE TADA Exhibition / Nagoya Zokei University /Aichi,Japan

etc.

 

Selected Group Exhibition

2022, VOCA 2022 /Ueno Royal Museum/ Tokyo,Taioto,Japan

2022, Subterraaneans and Mirrorless Mirror / gallery αM / Tokyo,Chiyoda,Japan

2021, Position of contemporary art 2021-2022 / Nagoya City Art Museum / Aichi,Nagoya,Japan

2016, ACTIDENZ / Aoyama Meguro / Tokyo,Meguro,Japan

2015, Lagrangian point / PARC / Kyoto,Sanjou,Japan

2014, Some Like It Witty / Gallery EXIT / Hong Kong

2013, relational map / STANDING PINE / Aichi,Nagoya,Japan

TRICK-DIMENSION / TOLOT heuristic SHINONOME / Tokyo,Shinonome,Japan

CIRCLE3 / Turner Gallery / Tokyo,Higashinagasaki,Japan

2011, TOKYO WONDER WALL Public offering Winner exhibition /

Museum of Contemporary Art Tokyo/Tokyo,Kiyosumishirakawa,Japan

DREAMING THE WORLD / MEGi HOUSE / Megi Island / Kagawa,Japan

2010, MONOGATARI NO FUKUSEN part2 / Gallery MoMo Ryougoku / Tokyo,Ryogoku,Japan

CIRCLE2 / Aichi Prefectual University of Arts / Aichi,Nagoya,Japan

TOSHI NO DANPEN / URBAN RESEARCH Gallery / Aichi,Nagoya,japan

2009, CIRCLE / Aichi Prefectual University of Arts/Aichi,Nagakute,Japan

2008, ART×ART / Aichi Prefectural University of Arts / Aichi,Nagoya,Japan

2008, SEPTEMBER / YADA Gallery / Aichi,Nagoya,Japan

etc.

 

Collection

Yusaku Maezawa collection

Yuichi Kawasaki collection

Arario Museum collection

Pigozzi collection

ZOZO collection

etc.

デジタルカタログは下記よりご確認いただけます。

 

 

画像

《残欠の絵画 #60》2022年

18.5×14.3×6cm

油絵具、アクリル絵具、綿布、木製パネル

198,000円

画像

《残欠の絵画 #66》2022年

18.5×14.3×6cm

油絵具、アクリル絵具、綿布、木製パネル

198,000円

画像

《残欠の絵画 #72》2022年

18.5×14.3×6cm

油絵具、アクリル絵具、綿布、木製パネル

198,000円

《trace / dimension #23》2022年

H227.5×W300×D10cm

アクリル絵具、顔料、綿布、木製パネル

2,970,000円

《trace / dimension #25》2022年

H227.5×W181.8×D10cm

アクリル絵具、顔料、綿布、木製パネル

2,090,000円

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