美術
2024/08/01 UP
日本橋三越本店では「第60回 杜窯会作陶展」を開催いたします。
東京藝術大学 陶芸科は長きにわたり陶芸教育・研究の重要な役割を果たし、数々の優れた陶芸家を輩出してきました。
本科は技術伝授のみにとどまらず、陶芸における思想や概念の探求を促す場としても機能し、その多様な研鑽を発表する会として「杜窯会(とようかい)」が発足しました。
今年で60回目を迎える本展では、歴代教授らの逸品をはじめ、学生と卒業生を合わせ総勢約150名の作品群を展示します。
伝統技法を礎に若々しい実験的手法を試みる学生作品と、既にプロとして活躍する卒業生それぞれの独創性あふれる作品を一堂にならべ、陶芸の無限の可能性を示唆します。
歴史と伝統を継承しながら、新たな一歩を踏み出す「杜窯会」をぜひ会場でご覧ください。
日本橋三越本店
東京藝術大学における陶芸教育と藝大陶芸という物差し
1965(昭和40)年に「杜窯会第一回作品展」が日本橋三越本店で開催されて以来、今回で第60回展という節目を迎えた。杜窯会は、東京藝術大学陶芸研究室の教員と学生によって構成されており、記念となる第60回展では歴代の教員とともに、在学生と卒業生を加えた約150名の作品が一堂に会すという。
杜窯会の名の由来となった「杜窯」は、1954(昭和29)年に大学構内に築かれた薪と石炭の併用による倒焔式窯のことで、命名は初代学長の上野直昭による。学生有志による陶磁器研究会が当時の非常勤講師であった加藤土師萌に相談し、建築科校舎の取り壊しの際に出た煉瓦を使用して完成させたという。この年、各科学生の副科的研究部門として陶磁器教室が置かれ、焼成まで行える陶芸実習がスタートした。そして翌年、陶磁器講座と陶磁器研究室が設置され、工芸の重要な部門の一つである陶芸の教育が正規に始まった。
初代教授は実直で真面目な人柄から“まじめさん”と呼ばれた加藤土師萌であり、後に色絵磁器で重要無形文化財保持者(人間国宝)となるが、その陶技は陶器から磁器、下絵や上絵、彫りなど、実に多彩であった。フォルムの追求はもとより、とくに加飾に実力を発揮した陶芸家であったこともあり、その存在は藝大といえば加飾という藝大陶芸の作風の基礎を築いたといっても過言ではない。
1963(昭和38)年には大学院の設置に伴い専門課程の陶芸講座が整備され、翌年には大学院陶芸専攻の第一期生が入学した。講師陣は、加藤土師萌、藤本能道、浅野陽、田村耕一、三浦小平二らで、いまから思えば錚々たる顔ぶれであった。ゆえにその作風はさらに磨きがかけられていくのである。
当時の学生たちの回顧録を読むと、「ロクロで湯飲みを千個挽く」課題があり、また、「国立美術大学だからアカデミックな教育をすべきであり、それにはオブジェではなく、主としてロクロを用いた陶芸作品を作る勉強」が重視されていた。また、「土味とか窯焚きでは産地に負ける」、「芸大生は構成力、デザイン力で勝負」することを教えられたという。
そして今日、藝大の陶芸は60年あまりを経てどのような進化を遂げたのだろうか。
シンプルでありながら力のこもった造形というよりは、その基本は丁寧に技術を積み重ねた上に上品な加飾を施す作風が長く続いている印象である。しかし、1990年代以降の、世の中の陶芸における表現が大きく変貌を遂げた時期には、学生たちもそれに触発されて創作意識が時代の流れに逆らうことなく変化したように思われる。それには、人間国宝をはじめとする日本を代表する陶芸家を輩出してきた立ち位置が、藝大を陶芸のカリスマ的な存在に仕立て上げたことに対するアンチテーゼも含まれていたのかもしれない。その後は、陶による表現の多様性が、その可能性と誤解され、陶である必然性に欠けた作品が数多く生み出されていく世の中に反発するかのように、以前のいい意味でのアカデミックな雰囲気が作品から醸し出されていくのである。それは、教員や卒業生たちがつくり出した物差しにより、藝大の陶芸という存在の重みを常に背負い、極めて厳しい評価を受けながら活動を行ってきたからにほかならない。またこのことは世の中が、藝大あるいは藝大の陶芸専攻という存在自体に極めて敏感に反応してきたといってもいいかもしれない。
しかし今日、より自由な思考とそれに呼応するかのような多様な価値観の中で、藝大における過去の活動に対しての美化が始まっている。それは歴史のある一部分しか目にしていない者でありながら、教員や卒業生たちの過去の功績に対してであることは周知しているところである。ゆえに今後の活動を考えた場合、開設以前の学生有志がみせた沸き立つような挑戦の姿勢を思い起こし、現代における陶芸のあるべき姿を、さらなる新しい物差しとして築き上げていかなければならないだろう。多様性の時代だからこそ、基礎をしっかりと教える藝大の陶芸研究室の存在と、教えを踏まえた表現活動はますます重要になってくると思われる。
唐澤昌宏(国立工芸館長)
デジタルカタログは下記よりご確認いただけます。
当デジタルカタログにて、掲載作品は展覧会会期前にご予約を承ります。
お問い合わせは大代表03-3241-3311美術担当まで。
※抽選販売作品を除く。
【第60回記念トークイベントのご案内】
第60回記念トークイベントを開催いたします。
日時:2024年 8月31日(土)午後2時~(30分を予定しています)
場所:日本橋三越本店 本館6階 美術工芸サロン
トークゲスト:佐藤和彦 氏(7期)、豊福誠 氏(14期)、三上亮 氏(21期)
どなたでもご覧いただけます。
【抽選のご案内】
※8月30日(金)午後2時をもって抽選は終了いたしました。ご応募いただき有難うございました。
【抽選販売について】
「第60回杜窯会作陶展 東京藝術大学陶芸講座在学生と卒業生による」出品の小林佐和子「犬祭」は、抽選販売とさせていただきます。
なお、下記の通り実施いたしますので注意事項をご確認のうえ、ご応募くださいますようお願い申し上げます。
~お申し込みにあたっての注意事項と当選の無効について~
●無投票の場合は8月31日(土) 午前10時より通常販売をいたします。
●お申し込み多数の場合は、『エムアイカード プラス/エムアイカード プラス ゴールド』をお持ちのお客さま優先で抽選をさせていただきます。
●お申し込みはお1人さま1回に限り応募可能です。
*三越伊勢丹WEB会員ID1つに対し1申し込みとなります。
*同一アカウントによる複数回または複数名義のご応募や、同一のお客さまによる複数アカウント登録でのお申し込みはすべて無効とさせて いただきます。
●ご当選者さまは必ず期間内にご購入手続きの完了をお願いいたします。
*ご連絡なく期限を過ぎた場合、その時点をもって次点のお客様へ購入権利が移行となります。
●購入権利は当選者ご本人様のみとし、第三者への譲渡はできません。
*第三者への譲渡が発覚した場合、当選を無効とさせていただきます。
●お申し込み時の氏名とご本人様の確認書類の氏名が一致しない場合も同様に、当選を無効とさせていただきます。
●ご当選されたお客さまとご名義が一致しないクレジットカードでのお支払いはおことわりいたします。
*例外はございませんのでご注意ください。
●ご購入手続き完了後の変更、キャンセルは原則お受けできません。
万が一、お客さまのご都合によりキャンセルされた場合、今後の抽選等のお申し込みにはご参加いただけません。
●お客さま同士の三越伊勢丹WEB会員IDおよびスマートフォンの貸し借りはお断りさせていただきます。
判明した場合、当選を無効とさせていただき、今後の抽選等のお申し込みにはご参加いただけません。
あらかじめご了承ください。
~エムアイカードご入会のご案内~
●ご入会はこちら
*郵送またはWEBでお申し込みの場合、紹介コード「5040」をご入力いただきますようお願い申し上げます。
*店頭でのお申し込みをご希望のお客さまは、日本橋三越本店 本館6階 美術工芸サロンのスタッフまでお申し付けください。
*抽選申込時までにお手元へカードが届いていない場合は、11桁のお申し込み番号をご入力いただくことで
『エムアイカード プラス/エムアイカード プラス ゴールド』をお持ちのお客さまと同様に優先で抽選をさせていただきます。
◆抽選要綱
●展覧会会期
2024年 8月28日(水) ~ 9月3日(火) [最終日午後5時終了]
●応募方法
下記に記載の『お申し込み方法について』の作品リンクよりご応募ください。
●応募期間
2024年 8月21日(水) 午前10時 ~ 8月29日(木) 午後7時まで
◆当選のご連絡について
●抽選結果確定予定
2024年 8月30日(金) 午後2時以降(予定)
*ご当選の方にのみ抽選応募時にご入力いただいたメールアドレスへご連絡いたします。
*ご当選者様はご決済予定日をメールにてご返信願います。購入お手続き期間は下記をご参照ください。
誠に勝手ながら、8月31日(土) 正午までにご返信が無い場合は自動キャンセルとさせていただきます。
*当落選についてのお問い合せはご遠慮ください。
◆作品ご購入のお手続きについて
●ご当選者様の購入お手続き期間
2024年 8月30日(金) 午後3時 ~ 9月3日(火) 午後3時まで
*上記期間内のお手続きが難しい場合はご相談ください。
●場所
日本橋三越本店 本館6階 美術工芸サロン
『第60回杜窯会作陶展』抽選作品お支払いの旨をスタッフまでお伝えください。
*ご本人様の確認ができるもの (運転免許証・マイナンバーカードなど顔写真付きの確認書類)をご持参ください。
◆お申し込み方法について
三越伊勢丹WEB会員登録によるIDの取得が必要です。
●ご登録はこちら
*オンラインストアページ右上部の『新規会員登録』ボタンよりご登録いただけます。
●抽選対象作品
下記のリンク先よりご応募いただけます。
小林 佐和子作 「犬祭」 594,000円
*作品は8月21日(水)より、日本橋三越本店 本館6階 美術工芸サロンにて公開展示いたします。
【抽選作品】※抽選は終了いたしました。
小林佐和子 「犬祭」
幅29×奥行17.5×高26.5 cm
594,000円 箱後日
引き続き「犬祭」は8月21日(水)~9月3日(火)まで、日本橋三越本店 本館6階 美術工芸サロンで展示します。
※数量に限りがある作品もございますので、品切れの際はご容赦ください。
※価格はすべて、税込です。
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