美術
2024/12/10 UP
私の作品は、風景を通じて私たちの視点や記憶について考察しています。
制作の最初の手順として黄、赤、青の絵の具を幾層にも塗り重ねて行きます。 それは視覚的な風景以上の深さと空間を表現するためです。
ここでの風景とは、日常的に目にする空や木々、夜の闇、そして私の幼少期を過ごした富山の山々など、身体的に感じ、蓄積した、あるいは潜在的な風景を指しています。
三原色を塗り重ねて行く過程で生じる絵の具のムラや、グレースケールの空間は、作品が完成していく過程で呼びかけられているような感覚を感じ させることがあります。最終的なイメージだけでなく、絵を描くという行為 そのものにも重きを置き、注視することで、「不確かさ」や見えないけれど 感じる「気配」のようなものにアクセスします。
最後に乗せる筆跡や形は、時間の経過や私たちの知覚の一時性を示すような印のようであり、考察するよう促します。
「知覚の一時性」とは、描くことで過去の特定の瞬間が蘇り、その瞬間に再び想いを馳せることを意味 しています。
絵を描くことで、過去の瞬間を再体験し、その時の感情や記憶 に触れることができると考えています。
私の作品は、層と表面の関係においても特徴を持っています。作品の支持体に関しては、描画方法の変化とともに、平坦さが重要になりました。 以前は木枠にキャンバスを張ったものに描いていましたが、キャンバスの布目を消すために、自作のジェッソを用い、乾燥後に研磨する工程を施し ています。この方法で作った支持体に塗り重ねた絵具は、生乾きのまま塗られるため、層でありながら平坦な表面を保っています。
「絵を描くことで、過去の瞬間を再び体験し、その時の感情や記憶に触れることができる」と言いましたが、私は潜在的な体験を作品に込めようとし ています。それが、見る人にとって鏡のような作品であることを願っています。
平野泰子
デジタルカタログは下記よりご確認いただけます。
Whisper 2402
41 × 31.8cm
木製パネルにキャンバス、膠、石膏、油彩
税込132,000 円
Standpoint
116.7 × 91cm
木製パネルにキャンバス、膠、石膏、油彩
税込572,000 円
Superposition 2401
41 × 31.8cm
木製パネルにキャンバス、膠、石膏、油彩
税込132,000 円
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※価格はすべて、税込です。
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