美術
2024/12/30 UP
このたび三越では 6 回目になる個展を開催させていただきます。
前回に続いて、春の玉響(はるのたまゆら)と題しまして、春らしい装いの作品を揃えてみました。初めての三越での個展はもう 20 年ほど前ですから、 ずいぶんお世話になったもので、ありがたいことです。私も 70 歳を超えそろそろ円熟期に入らなくてはならない年齢ですが、ホンモノに成れるかどう かの瀬戸際でもありましょう。院展同人に推挙されて数年経ったころ、今は亡き師匠 今野忠一先生から、「高橋君は人物を追求すると良い。今 50 歳 だからあと 30 年、真剣に取り組めば何とかものになるから…。」私は先生の山岳風景に憧れて 20 数年、同人目指して頑張ってきたのに先生の画風の 主たる風景ではなく人物を追求せよ、とのお言葉。師匠の言われたことを素直に実行しようとずっと過ごしてきた私を長い間ご覧になり、ここが節目 とご判断されて、放たれたお言葉でした。
そう言われてみると、師匠の様な風景画に憧れていたものの、人物を描く時の方が比較的楽に出来る。過去の経験から考えれば確かに師匠の言われる ことは理がある。そう感じた私は人物画を本格的に追及してみようと新たな意欲が湧き、ここから画業の主軸を人物へシフトしたのです。
とはいうものの、現代人に例えれば、携帯電話で話してる人とか通行人とか電車に乗ってる人とか、ありふれた日常そのままの人物には興味を惹かれない。 さて、どうする? 折よく源氏物語を薦めてくださる方がおられ、当時の碩学小林秀雄の講演会の録音テープなども貸してくださり、「もののあわれ」 を読み解いてゆくことを示されていて、なるほど、いつかは読んでみたかった源氏物語に触れてみよう、と。そして円地文子さんの訳文を一気に読み、物語から想像される様々なシーンをとりとめなく思い描いて、これまで考えもしなかった「絵になるネタ」が無限に広がっていることに驚かされたので した。ものごころがついてずっと絵が好きで追いかけてきたのが「写実」、今日も続いている美術教育の西洋への偏りに煩わされて、実景を追いかける ことが絵画であると思い込んでいた自分に気付いたのでしょう。
今にして思えば、石膏デッサンから学びが始まった弊害が自分の中に大きく憚っていて大和絵の本質までも見過ごしていたことに初めて目を向けることが 出来たのではないかと思います。伝統的日本文化の本質を感じさせてもらえない戦後教育の弊害だったのかもしれません。
源氏物語を起点にした学びは続いておりまして、古事記、伊勢物語、平家物語、等々。読んでは描き描いては読み、繰り返して 20 年を経ました。 おかげで画因に不自由することは絶無、写実に囚われることもなく、当然といえば当然、歴史の深い日本ならではであり、この立ち位置にあること こそが、日本画に取り組む事、との信念は日々強く固くなりつつあります。宝の山をみつけたからです。
現在も過去も未来にも通用する普遍性に思いを致すとき【大和絵師】でありたいと強く念願します。
さて、師匠の遺してくださったお言葉がどのように結実したのか、してゆくのか、ご高覧くださる方も、応援してくださる方も、楽しみにしていただければ幸いです。
高橋 天山 拝
デジタルカタログは下記よりご確認いただけます。
イベントのご案内
ギャラリートーク
2月15日(土) 午後2時より
ゲスト / 語り部・かたりすと 平野啓子氏 テーマ / 車争い
宇気槽(うきふね)
50号
4,400,000円
※数量に限りがある商品もございますので、品切れの際はご容赦ください。
※価格はすべて、税込です。
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