美術
2026/3/10 UP
LIMINAL LANDSCAPE
私はこれまで人の気配がない風景を描いてきました。
近未来の人類滅亡以後に人工衛星から見たような風景だと評した方がいましたが、人類以前あるいは人類以後を示唆するポストヒューマン的人間不在の風景を描くことは何を意味するのでしょうか。
ゴーギャンは「私たちはどこから来たのか、私たちは何者か、私たちはどこへ行くのか」というタイトルの作品を残しています。彼はこのタイトルは「題名というよりも、むしろ署名だ」と言ったそうです。それが誰の署名なのか疑問は残りますが、哲学が「汝自身を知れ」というならば、アートは「汝自身を問う」ものなのかもしれません。
「Liminal Landscape」は、風景としての“場所“ではなく、むしろ風景が確定する以前の、生成と消滅のあいだに一瞬立ち現れる気配の層として揺らぎの場です。
そこでは、具象と抽象、生と静止、内面と外界が溶け合い、風景は確定することなく揺らぎ続け、鑑賞者はその表象と非表象の“間(あわい)“に立つことで、自身の感覚や記憶を投影し、風景を完成させる、観る人それぞれに自由なストーリーを重ねることができる開かれた場となって欲しいのです。
「私たちはどこからきたのか」ということを問い、「私たちはどこへ行くのか」という未来に思いをはせること、そしてそのように不確定である揺らぎの中に居続けることは、とりわけ激しく動乱している現代において、逆にあらゆる可能性を秘めた希望をもたらすのではないかとも思うのです。
私は絵画を通じて、境界がほどける瞬間に、私たちの知覚がどう芽生えるのかを静かに問いかけたいと考えています。
本展に際し、ご尽力くださった多くの関係者の皆様に、この場を借りて心よりお礼申しあげます。
*Liminal(リミナル):
境界・閾(しきい)にある状態。
始まりでも終わりでもなく、生成と消滅、確定と未確定のあいだに揺らぐ移行的な領域を指す。
釘町彰
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Air
25号
3,520,000円
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