美術
2026/3/4 UP
三越伊勢丹の御厚意により「世界遺産 高野山金剛峯寺 襖絵奉納記念 福王寺一彦展」を開催していただくことに、深く感謝しております。
山々が連なり、こころよい起伏の中に街があります。
残雪の中に川は流れ、植物の芽はふくらみ、人々は春を待っています。父と母が生まれ育った山形県米沢市。東京で生まれた私にも、年に何度となく訪れた雪国の幼い頃からの記憶がその色彩と共に鮮やかに蘇ります。
積雪の風景を包む空気の、ピーンと張りつめたあの緊張感。陽春を待ち望む果樹の花の蕾のように、期待に膨らんだ満たされた感覚。山形県米沢市の自然の四季の移ろいに郷愁を含んだ憧憬のようなものを感じずにはいられません。
幼い頃からアトリエで父が日本画を描き、母が岩絵具を溶く姿を見て育ち、オーソドックスな日本画の技法も早くから覚えることができました。今まで描き続けてこられたのは、自然の世界から教わる気持ちで一生懸命に描いていけば、必ず納得できる作品が生まれるという信念が自分自身を支えてきたからだと思います。
令和三年に米沢市の皆様の御理解と多大な御協力を賜り、旧南原中学校が「芸術の杜」として開設され、私の新たな制作拠点をお作りいただき、心から感謝しております。私は、「よねざわ・福王寺・夢・アート・スタジオ」と名付けています。同年からミナミハラ・アート・ウォークも開催されています。
南原周辺の最上川源流に近い山々と豊かな自然の風景の中、植物や人物、湧き上がる雲と水の流れなどを、墨と岩絵具(群青・緑青)と、金属(金箔、金泥、銀箔、プラチナ箔等)と漆と膠を使って雲肌麻紙(福井・高知・深山和紙)や、木地(欅、檜、杉、それぞれの地域の木材)、紅花染や米沢織の絹地、六曲一双の金銀屏風に描くことを考えています。
世界遺産 高野山金剛峯寺へご奉納する襖絵は、弘法大師 空海の佐伯眞魚の頃からの足跡を訪ねることから始めました。
その曇りなき眼。両親(佐伯直田公、阿刀氏)に対する愛情。八世紀当時の厳しい自然環境の中での修行。その全ての事象に対する真摯なまなざしと姿勢を感じることができます。その感動を日本画の岩絵具と絵筆と和紙に託して微力ながら表現させていただきたいと思いました。
空海の誕生の地・讃岐国、瀬戸内海の香川県 坂出市 櫃石島。坂出市の皆様の御理解と多大な御協力を賜り、開設していただいた旧櫃石小学校の「ひついし・福王寺・夢・アート・スタジ
オ」(海と島のアトリエ)。東京の拠点、都市地域における植物と森の再生を指標とする調布市 蟹沢遺跡内の「かにさわ・福王寺・夢・アート・フォレスト」(森のアトリエ)、米沢の芸術の杜(山のアトリエ)を基地にして様々な場所を取材し、襖絵の制作を進めてまいりました。
朝陽の中の高野山の雲海。弘法大師 空海と、その思想を信仰した上杉謙信と景勝の霊廟がある奥之院の佇まい。善通寺の楠と青い空。霧立ち籠める満濃池。多島美の瀬戸内海の朝日と夕日と月光。六月十五日(空海の誕生日)の全国各地の螢の群舞とその耀き。室戸岬の波の厳しさと美しさ。信仰心の厚い五島列島。山形県の母なる河、最上川流域の自然の姿。東日本大震災。釈迦牟尼の誕生の地、ネパール・ルンビニ。東西三千キロにも及ぶヒマラヤ山脈とガンジス川源流。その流域の人々の暮らし。襖絵の構想の夢は大きく膨らんでいきました。
果てしのない天つ空と雪花の山脈、その風景の中に「土と水のにおい」を感じながら、湧水や小川、草木や梢の空、蝶や螢、四季折々に森が幾重にも重なる豊かな自然の中で、空と海と大地が、画面の中で響き合うことを願いながら、金剛峯寺新別殿の襖絵を描かせていただきたいと思いました。
令和五年に「月星花」を、令和六年に「草木、蝶と螢」の合計十六面の襖絵を奉納させていただきました。その長い年月の取材と、日本画制作の中で感得した内容と題材を小品として描いておりました。
御高覧を賜り、御批評をいただくことができれば幸いです。
令和八年三月 福王寺一彦
月星花・三日月醍醐桜
10号
14,300,000円
月星花・三日月の青い鳥
23.3×23.3
4,565,000円
朝陽の中で
23.3×23.3
4,565,000円
月華の青い鳥
6号
8,580,000円
月星花・三日月山桜
30号
29,700,000円
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