美術
2026/6/15 UP
土と炎の間
シャリシャリと心地よい音が軽やかなリズムに乗って部屋に広がり、手元の土の塊が茶盌へと姿を変えてゆく。長次郎、光悦に憧れ、独学で茶盌を造り始めて半世紀以上。その思いは今も変わらない。
口当たりはどの位の厚さが良いのか、角度はどうか。口造りから胴の曲線、腰から高台へのつながり、削りを入れるか否か――一つ一つを問いながら形を探る。
外形が整えば内側へ。削りすぎれば穴があく緊張の中、音を頼りに厚みを見極め、茶だまりの深さと広がりを定める。重心、手取り、茶筅の動きまで思い描き、ようやく一盌が生まれる。
素焼き、施釉を経て本焼きへ。楽焼は一盌ずつの連続焼成。摂氏一二五〇度の白く輝く窯の中、茶盌と炎が同じ色となる一瞬を見極めて引き出す。このわずかな時間に、これまでのすべてが懸かる。火を潜ることで姿は僅かに変わり、その最終の形が茶盌の命となる。
こうして生まれた茶盌が、濃茶を練るひとときに静かな心地よさをもたらす。使い込まれる中で土や釉薬がどのように変化してゆくかを見届けられるのも、稽古場を持つ者の喜びでもある。
たかが茶盌、されど茶盌――。
その思いを胸に造り続け、気がつけば傘寿を迎える歳となった。
振り返ってみれば、茶盌造りを始めた頃は、いつか三越で一度でも個展が開けたならと夢見ていた。半白を迎える頃、幸運にも新宿三越で初めての個展の機会を頂き、日本橋三越本店では有難いことに今回で九回目を迎える。
八十歳となった今もなお、土と炎に向き合いながら、少しでも心に残る茶盌をと思い造り続けている。
これもひとえに、長年温かく見守り、応援して下さる皆様のお陰と、心より感謝申し上げます。
令和八年七月 金井 紫晴
デジタルカタログは下記よりご覧いただけます。
作品名:サビ黒茶碗 坐忘斎御家元御書付
寸法:径10.9 × 高8.2cm
税込価格:748,000円
作品名:叩き目白茶盌 銘「東雲」
寸法:径11.8 × 高8.8cm
税込価格:385,000円
作品名:鶸色釉掛分茶盌 銘「萬作」
寸法:径11.2 × 高8.5cm
税込価格:528,000円
※数量に限りがある商品もございますので、品切れの際はご容赦ください。
※価格はすべて、税込です。
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