2025.9.4 UP
銀座並木通りの三笠会館本店。瀟洒な館は昭和41年に完成しました。様々なレストランが揃う、夢のようなご馳走の館。意外にも<三笠会館>の創業は歌舞伎座前のかき氷店から。時代に合わせて食文化を提供し続けて100年。新たなお弁当も登場します。
<三笠会館>と聞いて思い浮かべる料理やシーンは、人それぞれかもしれません。伝説的な「骨付き鶏の唐揚げ」は日本で最初の外食メニューの唐揚げとして記録されています。(※日本唐揚協会が、外食メニューに初めて登場した鶏の唐揚げとして認定)
イタメシブームの時にいち早く本物を提供した「ティラミス」もあれば、近年大人気なのは本店3階「氷処 みかさ」のかき氷。家族の会合などで集ったレストランを思い浮かべる人も多いでしょう。
<三笠会館>の創業は、歌舞伎座前に開いた小さなかき氷屋でした。創業者、谷 善之丞(たに ぜんのじょう)氏は、吉野杉で有名な奈良県吉野村の生まれ。林業を営む家に生まれました。しかし、関東大震災で材木の相場が凋落し、長男だった善之丞氏は別の事業を志して上京。1925(大正14)年に「氷水屋三笠」を始めます。「三笠」は故郷の三笠山。「百人一首」で阿倍仲麻呂が詠んだ「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも」の三笠山です。これは阿倍仲麻呂が唐で詠んだ望郷の歌。吉野からはるばる上京した善之丞氏もまた、屋号に三笠を冠し、常に故郷を想ったことでしょう。今も<三笠会館>で供されている「氷処 かき氷」の人気かき氷シリーズは、創業の想いを今に引き継いでいます。お皿に描かれる鹿も、奈良の象徴なのです。
名物の鶏の唐揚げは、他社の食堂を引き継いだ「チキングリル三笠」で苦労の末に誕生しました。丸鶏を捌く職人が常駐し、骨付き鶏肉を特製のたれに絡めて揚げた唐揚げは、会社を救うほどの人気メニューに。1932年(昭和7年)のことでした。現在も丸鶏から捌き、一皿で鶏の色々な部位の味や食感の違いが味わえる不動のロングセラーです。近年では<三笠会館>の新入社員は、ホール、調理の担当に関わらず、鶏の唐揚げについて研修を受講します。
薄口醤油と焼酎、香りづけにごま油を加えた自家製のタレにさっと絡め、かたくり粉の衣を付けて揚げる。肉はしっとりジューシーに、皮はパリパリ。長く愛されてきた味。添えられた白胡麻塩と練り辛子、レモンで好みの味を工夫できるのも楽しい。
第二次大戦で「チキングリル三笠」は焼けてしまいましたが、今の並木通りの土地を手に入れることができ、三笠会館本店が建築されて、レストラン事業へ着手します。
二階建ての建物は、1966年(昭和41年)に地上9階、地下2階のビルへと建て替えられました。様々な食文化が集結した食の館は、美食家の集う場所となります。その後も女性向けクッキングスクールを開講して人気を博すなど、時代に先駆けてさまざまな業態への挑戦を続けてきました。
「チキングリル三笠」オープン
「レストラン三笠会館」
「三笠会館本店」
唐揚げを始め、カレー、ローストビーフなど、三笠会館を代表する味わいには海外の美味しさをいち早く取り入れてきた進取の精神が息づいています。
近年は、レストラン事業からEC事業、物販へと事業を拡大。自宅でも三笠会館の味が味わえるような中食の品揃えを拡充しています。大きな転換期は3年に及んだコロナ禍。渦中に生まれた新たな事業がオンラインでした。
そして、商業施設での初めての出店が2024年に開業した伊勢丹新宿店食品フロアのデリカテッセン<三笠会館>。その後店舗数を徐々に増やし、今回の日本橋三越本店で4店目。既存店は洋風のデリカテッセンが中心ですが、日本橋三越では店舗ニーズに合わせて、和食弁当を新たにリリースします。和食弁当は、日本橋三越本店の店内厨房で製造。商品開発を担当した<三笠会館>の中で和食を担う「しゃぶしゃぶ・すき焼き 吉野」の近藤直貴料理長に話を伺いました。
日本橋三越本店限定、和食弁当の開発を担当した近藤直貴料理長。
お弁当の開発は初で、研究調査にも時間をかけた。
「一般的に関東のお弁当は味つけが濃いのですが、東京のお客様がお弁当を食べた時に、味が物足りないと思われないように、かといって単に濃い味付けにするのではなく、ギリギリの線を狙いました。他社の和のお弁当は研究のために一通り試食。他にはない三笠会館らしさをということで、店でも好評の季節のすり流しをお弁当の中に組み込んでみました」。
二段の弁当は、盛り付けの美しさも大切にしています。扇の型は、<三笠会館>に元々あったものを探し出したのだそうです。
盛り付け。/大切に使われてきたご飯提供用の木枠を今回採用。型で美しく抜いたご飯には、独特の風合いががある。
季節で素材の替わる弁当。秋の炊き込みご飯はきのこ。他の素材も四季折々に替わる。
※三笠会館「吉野」でのお弁当の販売はございません。
季節のすり流し、秋は栗と蕪のすり流し。そのままでも美味だが、自宅で食べるならば少し温めることもできる。
(※器は弁当の内容外)
新作弁当には、お肉が主菜の弁当と魚が主菜の弁当も。「肉」「魚」の素材を全面に生かしたシンプルなお弁当は、見た目のバランスの良さ、素材のこだわりを大切に。肉弁当には、「吉野」のすき焼きだれを生かします。このタレには伝統的に少し味噌が入ります。実はこちらも100周年という<大和屋>(栃木県宇都宮市)の麦味噌。近藤料理長曰く、ほんのりした甘味がタレにちょうど良いのだとか。
塊のロース肉。最後の仕上げは、自家製の味噌だれを纏わせて軽くローストしてスライス。
「吉野」自慢の味噌だれの和牛ローストとすき焼き風味の和牛のそぼろ。そぼろの山椒もアクセントに。
炊き込みご飯も俵型に一工夫。季節の魚と一緒に、まずは目で味わう。
牛肉料理といえば<三笠会館>を代表する名物料理の一つに「ローストビーフ」があります。初代総料理長の佐藤松竹氏により開発されたレシピをベースに、英国の伝統に倣い、テーブルサイドのワゴンサービスで提供したところ大評判に。今も<三笠会館>の人気の味の一つです。
そしてユニークなのが、「ローストビーフ」のソース。グレービーソースは、三笠会館のスタッフの間で「ミートジュース」と呼ばれて独自の作り方があります。
通常のグレービーソースは、ローストビーフを焼いた鉄板で野菜を焼き、野菜のジュが出たところに赤ワインや元々とったフォンドボーを入れて作ります。しかし<三笠会館>は、ローストビーフ用にオリジナルのソースを煮込んでいます。しっかり焼いた牛や仔牛の骨、スネ肉を香味野菜、赤ワインなどを加えてじっくり5日間ほど煮込むのです。途中、具材も足しながら、最後にソースの濁りを卵白で澄まし、この状態を厨房スタッフは「ミートジュース」と呼びます。自分たちだけにわかる愛称として代々定着しているそうで<三笠会館>の歴史を感じるエピソードです。
「ローストビーフ」は牛肉のブロックをにんにくや香草塩で24時間ほどマリネし、低温でゆっくり火を入れます。デリで販売する場合はレストランで提供するより火をしっかりといれ、肉を休めます。日本橋三越本店ではこれをダイス状にカットしての販売を予定しています。
牛肉は黒毛和牛を使用。ローストビーフは薄切りでスライスが定番だが、あえてブロックで。一口で食べやすくかつ肉を噛み締める喜びがある。
その他のメニューも紹介しましょう。<三笠会館>100年のストーリーと一緒に味わえば、より一層おいしくなります。
日本橋三越限定
販売期間:9月17日(水)~26日(金)
和牛、松茸、うなぎと特別な素材で揃えた見目麗しい二段重。オープニング10日限定のご用意です。
日本橋三越限定
販売期間:9月17日(水)~30日(火)
柚子果汁の他、果皮も使った薫り高い柚子のムニエルに仕上げました。柚子ならではの美味しい酸味もお楽しみ頂けます。
三笠会館伝統のデミグラスソースをかけた自慢のハンバーグです。
薄切りのローストビーフにブロッコリー&カリフラワーのフィリング。トリュフを少し香らせた卵。色合いも華やかなサンドイッチのお弁当です。
柔らかい卵のオムライスに三笠会館で長年人気を博しているビーフシチューを贅沢に合わせた特別なオムライスです。
柔らかいチキンにたっぷりの照り焼きソースでシンプルなお弁当に。ご飯がよく進みます。
三笠会館伝統製法の骨付き鶏の唐揚げです。辛子、ゴマ塩、レモンを添えて変わらぬ味をお楽しみください。
蟹の身が塊で中に詰め込まれた三笠会館ならではのレストラン仕立てのコロッケです。トマトソースでさらに美味しく!
レストランでも使用している自家製ベシャメルソースの海老ドリア。コクのある奥深い味わいです。
人気のマカロニグラタンに蟹、海老を使ってレストランの逸品をご自宅でお召し上がり頂けるようにご用意しました。
銀座フランス屋でも人気のあったスイートチリソースで素揚げの野菜や舌平目のフリットをマリネ。エスニック風の辛さと甘さのバランスが絶妙です。
三笠会館で大人気の「昔ながらの少し固めのプリン」。受け継がれてきた唯一無二の美味しさです。
三笠会館本店で人気を博す定番デザート。甘さ控えめの大人の味わいです。
※掲載画像はイメージです。