2024.3.1 UP
江戸時代の明和元年(1764年)、出羽国米沢藩(現在の山形県米沢市)から江戸に出てきた窪田惣八が日本橋小網町で創業した山形屋。四代目の頃には仕入先の開拓に努めて一流の海苔問屋としての地盤を築き、朝廷及び幕府御用商人に命ぜられた、確かな技術力を持つ老舗である。
存在が幅広く知られるようになったのは、明治時代が始まってからほどない頃。「貯蔵(かこい)海苔」という名前で焼海苔を売り出すと、その味と保存性が評判を取り、各海苔間屋でも広く取り扱われるようになっていった。
そして、1881年(明治14年)には、初代が創業時に暖簾に掲げてから使い続けてきた「山惣マーク」を商標登録。業界で最初の取り組みとなったが、これも<山形屋海苔店>の「一人でも多くの方へ、海の持つ可能性とおいしさをお届けしたい」という熱い想いの表れだ。
明治40年に日本橋室町で竣工した白亜の店舗。『海苔の研究』という書物で「稀に見る偉観」とも紹介された。
昭和27年、本店の新装開時には巨大な欅の一枚板で看板が作られた。筆をとったのは、書家・柳田泰雲氏。「山形」の2文字が他の文字と比べて大きめに表現されているところに何かしらの意図を感じさせる。
昭和以降も、その志が揺らぐことはない。象徴的なのが、昭和46年に新発売された「紫薫(しくん)」。海苔のネーミングでブランド化を図り、進物用のレベルが上げたと言われている。
極上紫薫焼海苔・味付海苔詰合せ 焼海苔・味付海苔(各6袋/8切6枚)3,240円
「紫薫」は伊勢丹新宿店の店舗でもベストセラーだ。2012年には個食化などライフスタイルの変化に即して、缶入りのほか個包装でも用意。いつでもどこでも焼きたての味を楽しませてくれる。
良い海苔の条件は、色・艶・薫り。すべてを満たしたとき、その海苔は格別のものへと昇華するが、「紫薫」はまさにその通り。目の覚めるような漆黒の色合いと光沢、ふわりと鼻腔に届く磯の香りが、一級品であるという事実を雄弁に物語っている。
おいしさを支えるのは、260年の伝統に裏打ちされた匠の技。全国各地の漁場で格付けされた原料の中から特に上等なものを仕入れ、海苔の色、艶を目視で選別し、焼きの風味、味付け調味液との調和、保管、検品に至るまで、厳しい目を光らせる。最新式の機械を導入しつつもそれに頼り切らないのは、自然条件によって生産状態が大きく左右される天然物を扱う海苔商としての責任があるからだ。
全国各地の漁場で格付けされた原料の中から特に上等なものを仕入れている。
乾海苔を低温でじっくり火入れした後、各商品に適した焼き方で焼き加工が施される。
焼いてから袋に保管するまでにも目視を欠かさない。
高級な海苔ほど繊細。焼き上がった海苔の状態を見極めて、厳しい検査に合格した海苔だけを仕切り版とともにまとめる。
保管には防湿効果のあるアルミ製の袋を使用。
厳しい品質基準をクリアした商品を最後に一枚ずつ目視。
仕分けの作業には少なくとも10年の経験を積んだスタッフたちがあたっている。
<山形屋海苔店>は大人からお子さままで食べやすい味付海苔のラインナップも豊富だ。1891年(明治24年)、第三回内国勧業博覧会に加工品として味鹽(あじしお)海苔を出品し、好評を得た実績を持つ。
こだわりは、自然に育まれた素材によるだしを使うこと。本枯鰹節、北海道産羅臼昆布からじっくりと煮出しただしを使った、調味液で味付海苔を仕上げる。創業者・窪田惣八の「海苔のおいしさを一人でも多くの方にお届けしたい」という想いを込めて全国から上質な海苔を吟味した“惣8シリーズ”は、上品な旨味と、ふくよかな磯の香りを楽しめる。佃煮と組み合わせたセットなら、食卓をより豊かに演出してくれるだろう。
焼海苔・味付海苔・海苔佃煮詰合せ
焼海苔・味付海苔 各12袋詰(8切5枚)
椎茸入り海苔佃煮・海苔佃煮・ひじき入り海苔佃煮(各60g詰)4,320円
家庭用やデイリーギフトにお薦めなのは、必要な枚数だけ取り出せるようバラ詰めにされた焼海苔・味付海苔。食卓で使いやすいサイズもうれしい。
焼海苔・味付海苔(各8切48枚)各702円
こちらのパッケージにデザインされた浮世絵は、じつは<山形屋海苔店>が所有する作品。海苔のある風景が描かれていて、江戸の香りも届けられる。
焼海苔・味付海苔(各8切96枚入)各1,404円
おつまみやスナックにおすすめの味付海苔。サクサクした食感と甘じょっぱい濃いめの味付けが後をひく「焦がし醤油」はアイスクリームとの合わせ技もおすすめ。ツーンとした辛さがクセになる「鬼わさび」は、ビールやワインのお供に。納豆やアボカドをのせれば手軽なカナッペに。そのまま食べても、アレンジしても楽しく食べられる味付海苔。ぜひ、お試しいただきたい。
オツマミ・ノリー 焦がし醤油・鬼わさび(各8切24枚入)各324円
さまざまな趣向の商品を生み出し、海苔を世界に誇れる日本の食文化として育て上げている<山形屋海苔店>。次はどんな商品が伊勢丹新宿店の店頭に登場するのか、ぜひともご注目あれ。
Text : Mio Amari
Photo:Tetsuka Tsurusaki