<維新號>底面まで柔らかい生地に、肉汁を閉じ込めた 大きな「肉まん」。

2024.3.1 UP

どこからかぶりついても、ふっかふか。高級中華料理店の老舗<維新號>の「肉まん」といえば、ずっしりとしたボリューム感と、中からとめどなく溢れる肉汁の旨みが忘れられない。戦後間もなくの誕生から変わらない、優しい味わいを守り続ける、東京都内の工場を訪ねた。

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復興の願いを込めて生まれた「おまんじゅう」

1899年、東京・神田で食品雑貨店として創業した<維新號>。昭和初期にかけて高級中国料理店へと業態を変えたが、戦後間もなくの復興期には、新たに「まんじゅう屋」として銀座8丁目へ出店した。そこで後の名物となる「肉まん」が生まれたのは、1948年(昭和23年)のこと。両手でつかんで頬張る大きな形には、この「肉まん」でお腹を満たして欲しいという作り手の願いが込められた。誕生から75年以上を経た現在も、大きさは当時と変わらないという。同店ではこの「肉まん」や「あんまん」などの一連の商品を、愛着を込めて「おまんじゅう」と呼称している。

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愛らしい唐子の絵柄をプリント。店の看板や、現在赤坂にある中国料理店で使用する皿などにも描かれている。

サイズだけではなく、製法や味付けも発売当時からほとんど変えていない。旨みの軸となる干し貝柱の出汁をはじめ精選された調味料を使用したまとまりの良い餡は、肉のおいしさを引き立てるうす味ながらもコク深く、飽きのこない味わい。歴史ある中国料理店ならではの、上品な味つけだ。

 

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肉は3日間調味液に漬けた国産豚肩肉の挽肉を使用。調理する朝にキャベツやたけのこと混ぜ合わせる。

360度ふっくら柔らかい生地の秘密。

そんな「肉まん」の最大の特徴といえば、360度どこからかぶりついてもふわっと柔らかい生地の食感。都内にある工場の「おまんじゅう」製造エリアでは、出来上がりまで生地の柔らかさを守るための、あらゆる工夫がなされていた。

 

ひとつは、現場の環境だ。「おまんじゅう」を蒸すスチーム釜の蒸気を利用して、通年で室温30度、湿度80%に保たれている。慣れない人間ならじっとしていても汗が吹き出す環境だが、この湿気が生地のコシを保ち、乾燥を防いでくれるという。

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全種類の「おまんじゅう」を蒸す大きなスチーム釜。ここから常時吹き出している蒸気が、室内の湿度を保っている。

そして要となるのが生地作り。粉と水はまず機械で混ぜ合わせた後、さらに人の手で練ってひとつずつ丁寧に伸ばしていく。いずれの工程においても、生地を練る方向や、かける力の加減には細心の注意が払われる。どこかに力をかけすぎると、そこに繊維が偏って、食感が固くなってしまうからだ。

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繊維の偏りを防ぎ、ふわっとした食感に仕上げるため、こねる方向や力加減などを微細にコントロールしている。

 

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小分けにした生地を両手で1個ずつ軽く力をかけながら手の平全体で優しく伸ばしていく。

 

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餡をつめる工程も、指先の軽い力を使って手早く。いかに力を抜けるかがポイントだ。

 

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ぎゅっとつまんで餡を閉じ込めたら、まとめてスチーム釜の中へ。この段階でも、生地のコシと柔らかさはまったく失われていない。

 

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「肉まん」は30分ほどでふっくらと蒸し上がる。扇風機を設置した部屋へ移動し、粗熱を取る。

 

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肉まん(1個)648円

ぷりっとした質感の薄味の餡は、キャベツやたけのこの食感がちょうどいいアクセントになっている。テイクアウトで温め直す際は、ぜひ蒸し器やせいろ、フードスチーマー等を使用してじっくりと。自宅でもこだわりのふわふわとした生地を再現できる。

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あんまん(1個)648円

「肉まん」とほぼ同じ大きめサイズの「あんまん」には、北海道産の大納言小豆を使用。ラードを混ぜた甘くねっとりとした食感の餡はいかにも中華らしい味わい。

 

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こちらは<維新號>だけのオリジナル商品「ごままん」の餡を丸めている様子。餡を作り、生地でくるむ工程はすべて手作業で行われる。

 

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ごままん(1個)368円

ほかの「おまんじゅう」よりひとまわり小さなサイズのオリジナル商品。ごまの風味香る甘い餡の中には、香ばしいくるみやオレンジピールなどを混ぜ、各素材のハーモニーを楽しむことができる。

 

<維新號>でテイクアウトできるもうひとつの定番商品といえばシューマイ。「おまんじゅう」と同様、せいろや蒸し器でふっくらとした食感を手軽に再現できるシューマイは、食事にはもちろん、ホームパーティや晩酌のお供にも重宝する一品だ。

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シューマイ(15個入)1,944円

たっぷりの国産豚肉を詰め込んだ「シューマイ」は、「肉まん」と同様に干し貝柱の出汁を使ったコクのある薄味。挽き方を工夫した肉の、ジュワッとした歯応えがたまらない。

 

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かにえびシューマイ(15個入)3,240円

風味豊かな海老とかに肉をふんだんに使い、さっぱりとした塩味で仕上げた海鮮シューマイ。ぷりぷりの食感がアクセントとなり、つい箸が進んでしまうと評判だ

 

伊勢丹新宿店では、期間限定販売で松阪牛を使用した肉まんが登場したこともあり、近年は新しい味の新商品開発にも少しずつ挑戦している。とはいえ、長く受け継がれてきた手作りを守るため、安易に品数を増やすことはしないという。それこそが、この「肉まん」の味が常にオンリーワンたる理由なのだ。

 

 

Text : Mako Kobori

Photo : Mariko Tosa,Yuya Wada

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