2023.3.10 UP
午前8時。ドライケーキ「ヴィクトリア」作りは生地をこねて伸ばす工程から始まる。職人のきびきびとした動きには目を見張るものが! 人気の秘訣でもあるふわっとサクサクの口当たりはどうやって生まれるのだろうか? その秘密を日野工場長の三浦真吾さんにたずねた。
「生地にあります。土台、中央、縁取りごとに小麦粉と卵とバターの割合を変えているんですよ」
小麦粉、卵、バター。生地の原料はどのパーツも同じ。しかも、たったの3つであった。
「美しいフリルを生むために土台は前日に仕込んで、一晩寝かせます。そうすると小麦とバターが馴染むので、風味も豊かになります。なおかつ、グルテンの働きも抑えられるので、サクサクとした食感に仕上がります」
さらには焼き方にも工夫があるそう。
「2度火を通します。まずはタルト型に硬めのクッキー生地を敷き、イチゴジャムとスポンジを重ねます。その状態で焼いた後に、ベースよりも卵を多く混ぜたクッキー生地を絞る。その後は縁取りの筋を美しく出すために1〜2時間ほど風に当てています」
「熱が取れたらイチゴジャムを乗せていきます」。硬めのテクスチャーであるため、表面を美しく仕上げるには経験とワザが問われるそう。「トッピングが完了したら、再びオーブンへ運びます。職人はオーブンの前から離れずに、絶えず、焼け具合を観察しています」
複雑な工程を踏むために、熟練の技術が求められる。特に生地づくりは職人の力加減によるものが大きい。
「どれも人の手でこねて伸ばしています。機械だと空気を含むので3種の仕上がりの差が出づらいんです。また、生地は気温や湿度の影響を受けやすい。季節を問わずに品質を保てるのは五感を駆使して微調整ができる職人だからこそです」。丹念な手作業によって今日もまた約6000個が焼き上げられている。
手作業に重きを置いているのは、製造だけに限らず。最終チェックと梱包も目と手を駆使している。「塩クッキーは焼き上がりでサイズに若干のバラつきが出ます。容器にきれいにおさめられるのは微妙な違いを見分けられる人の目だからこそ」
検品と梱包を終えるといよいよラッピングへ。木材をふんだんに用いたぬくもり溢れる空間で、おなじみの包装紙でくるみ、細い金糸で蝶結びしたら完成!
<銀座ウエスト>は1947年に銀座でコースメニューを提供するレストランとして創業した。郵船で研鑽を積んだシェフが腕を振るっていたが、高級料理を禁止する都の条例が施行され喫茶に転身。本格的な生菓子で評判となる。さらに、缶入りクッキーを料亭などへ売り歩くなかで現在の主力商品が生まれた。
素材の持ち味が光る焼き菓子は、70余年を経てもなお、当時と変わらず手間ひまをかけて作られている。
ヴィクトリア(1個)216円
愛嬌いっぱいの佇まいと優美なネーミングで1962年にデビューしてからというもの、不動の人気を誇る。フリル状のタルト型にクッキーとスポンジを流し込んで焼成。食感は違えど、原料は同じ。小麦粉、卵、バターの配合率を変えることで、バリエーションを出している。生地が持つしっとりとサクサクの口当たりを堪能するために、国産イチゴジャムの粒はあえて取り除く工夫も凝らす。まさに、焼き菓子の奥深さを味わえる一品だ。ショップでは1個単位で購入できるのもうれしい。
リーフパイ(5枚入)756円
1948年に誕生した看板商品である。東北地方の原乳を使用したフレッシュバターと小麦粉生地を256層に折りたたんだ。ちなみに、葉脈を入れる「筋入れ」も一つ一つ職人が行う。サックリとしたパイの食感と白ザラメ糖の歯ごたえが特徴。お菓子作りと真摯に向き合う<銀座ウエスト>らしさが詰まっている。
和テイスト(4種32枚入)1,296円
生地の淡い色合いに引き込まれる。抹茶、ほうじ茶、きな粉、黒ごまといった和食でおなじみの素材を一口サイズのサブレにした。扇子、折り鶴、梅、ひょうたんなど伝統的なアイテムをあしらったパッケージも魅力的。洋×和をみごとに融合した焼菓子は、海外へのお土産にもおすすめ。
バタークッキー(1袋)216円
昔ながらの波型模様にぬくもりを覚える。コシの強い小麦粉にカシューナッツクランチをたっぷりと混ぜ込み、職人が1枚ずつ型抜きをして焼き上げた。キメ細やかな生地と濃厚なナッツが奏でるハーモニーは至福そのもの。1967年の発売から56年の月日が流れても、変わらず、愛され続けている。
塩クッキー(1袋)216円
こんがりキツネ色の見た目に惹かれて、ついつい手が伸びる。甘じょっぱさがたまらないこちらは2012年からのラインナップだ。味のキモとなる塩はモンゴルで長い年月かけて育まれた海水の結晶の良質な部分だけを粉砕した岩塩をチョイス。一般的なものよりもマグネシウムが控え目のため、塩味のなかにも甘さを感じる。
お話をうかがった<銀座ウエスト>日野工場長の三浦真吾さん。
5年間の副工場長を経験後、2021年より現職へ就任。
Text : Mako Matsuoka
Photo : Mariko Tosa , Yuya Wada