2024.9.13 UP
大阪の一大歓楽街であり、食通が集まる北新地。「ひとくち餃子」でおなじみの<点天>は、この街で1977年に誕生した。当時北新地の中では、ちょっと気の利いた"手土産"を渡す習慣があり、そのひとつに竹皮の経木で包んだ餃子があったという。<点天>創業者の現会長はこれにヒントを得て、新たな餃子店の出店を思いついた。化粧をして着飾った女性たちが、おちょぼ口でも気軽に食べやすいひとくちサイズ。経木に包むのではなく、折箱に詰めることで、手土産にふさわしい高級感も演出した「ひとくち餃子」。誕生間もなくしてグルメで新しいもの好きな北新地の大人たちに支持され、今や全国的に知られる存在となった。
創業から変わらぬメイン商品である「ひとくち餃子」は、餡を薄皮で扇形に包んだ独特の形状をしている。特に印象的なのは、ニラの香りと風味がしっかりと主張してくる点だ。高知県・香美地区の契約農家から仕入れているニラは、現会長が自ら全国の産地を視察して探したこだわりの原材料のひとつ。割り箸のようにピンと立ち、夜の間にたっぷりと水を吸ったニラは旨みが豊富で、全国の高級料亭からも指名されるという。
高知県・香美地区の契約農家で採れたニラ。品質管理を徹底し、5回の検品を経て出荷される。
工場に届いたニラは新鮮なうちに手早く検品され、人の手や機械を使用しながら丁寧に洗浄している。
国産豚ミンチ、ニラ、白菜、しょうゆ、ごま油などを合わせた餡。手で混ぜるのと同じような動きを再現した、オリジナルの機械で撹拌する。
国産豚や白菜を使用した餃子の餡は、味を均一にするためひとつの工場で作られる。餡は寝かせて味をなじませている間に関西・中部・関東の3つの工場に運ばれ、各工場で製品化。直営店の店頭では、当日朝に包んで製造したものだけを販売するのも同社の強いこだわりだ。餃子包みには長年の試行錯誤で作ってきたオリジナルの機械を使用しているが、向こう側が透けて見えるほどの薄皮ゆえ、完全な機械化はできないそう。最後は職人の目で皮の破れなどをチェックしつつ、指先の軽い力を使ってひとつひとつ折り箱に詰めていく。
「ひとくち餃子」の製造ライン。工場では早朝3時ごろから餃子包みが始まり、朝6時には各店頭へ向けてトラックが走り出す。
丸い薄皮を1枚ずつ、破れないように丁寧にコンベアに乗せていく。
皮の上に機械で餡を乗せ、さらにそれをプレスして包み込む。瞬く間にあの愛らしい扇形が出来上がっていく。
前出の包むところを下から見た図。ここからは職人が目で見て破れや形崩れなどの検品を行う。
一箱につき30個入りだが、出来立ては非常に柔かいため、整然と詰めるにはコツとある程度の経験を要するそうだ。
ひとくち餃子(30個入)1,491円
醤油と醸造酢のタレ、ラー油が付属。薄い扇形なので火が通りやすく、フライパンがあれば美味しく焼くことができる。揚げ餃子や水餃子、鍋の具として煮込んでもいい。
ニラと豚肉の旨みが効いたシンプルな味わいの「ひとくち餃子」は、家庭でアレンジメニューを作るのも楽しみのひとつ。たとえばアボカドディップやキムチ、クリームチーズなどをトッピングすれば、ホームパーティにも似合うちょっと華やかな一品に。柔らかな水餃子にして食べるなら、餃子のくちのところをきゅっと押して、餡が出てこないようにしてから沸騰したお湯に投入するといい。
また、北は北海道、西は大阪まで各地にある店舗では、プロによる調理済みの餃子を購入することも可能。<点天>の味を気軽に味わうなら、まずはそちらでバリエーションを食べ比べてみるのもおすすめだ。
焼き餃子(10個入)540円
おかずにも酒のつまみにも人気の定番、焼き餃子はニラの風味とピリッとした辛味が引き立って後を引く美味しさ。付属のシンプルなタレとラー油でいただく。
おつまみ餃子(10個入)540円
180度の油で揚げた、カリッと仕上げた香ばしい揚げ餃子。揚げることで辛味が和らぐので、子どもたちのおやつにも。塩やマヨネーズなどお好みの調味料で味変もおすすめ。
手羽先餃子(3本)551円
手作業で丁寧に中身をくり抜いた手羽先に、オリジナルの餡を詰め込んだジューシーな餃子。味付けもバリエーションがあり、季節によって様々な味を楽しめる。
Text : Mako Kobori
Photo : Mariko Tosa