<米屋> 牡蠣×穴子の妙。素材が際立つこだわりの弁当の原点とは。

2023.9.15 UP

広島県産の食材を主役にした<米屋>の弁当はどれも至ってシンプルだが、それでいて素材が際立ち、独特の存在感を放っている。魚介はもちろん米にもこだわりぬいた弁当が生まれた背景に迫る。

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一産地の食材だから実現できる、マネできないおいしさ

「一つの浜でしか取れない海産物の魅力を知って以来、一産地の食材にこだわり、主役のおいしさが引き立つ弁当作りを心がけています」と語るのは、代表の政岡穂高さん。

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代表取締役・政岡穂高さん

もともとはサラリーマンで飲食業界の経験は全くなかった。実は、学生時代から飲食店を開業することを夢見ていた政岡さん。知り合いの社長に相談したところ、「飲食を始める前にデパートの催事の卸しから始めてみないか?」と声を掛けられ、未経験から海産物の卸しをスタートした。

 

友人づてで一本釣りのプロの漁師を紹介してもらい、まずは良質な海産物を仕入れる方法や産地選びの重要性を学んだ。さらにこの時期、熱意だけでスーパーの魚売り場に飛び込み、魚の捌き方も伝授してもらった。

その後、広島県で満を持して日本料理店<広島薬研堀製造所 米屋>を開業。当時は周辺で弁当と言えば駅弁ぐらいしか売られておらず、広島の食材をメインにしたものは存在しなかった。そこで、県内の名産品を使った弁当を創作することを決意したのだ。

一本釣りの師匠に指導して貰った経験から、広島県の食材というくくりではなく、どの浜のものなのかまで絞りこみ、限られた「違い」のわかる一産地の魚介をメインに、かきめしやあなごめしを作ることに決めた。

 

東京の百貨店の催事へのオファーがあり、それをきっかけに弁当の認知が広まることとなり、伊勢丹新宿店でも弁当のテイクアウト専門店<米屋>を開始することが決まった。

 

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広島デラックス弁当(1折)2,981円

同店の顔とも言える蠣と穴子がぎっしり詰まった「広島デラックス弁当」がこれ。その豪快なビジュアルでも話題を集める。ふっくらと仕上がった牡蠣は身ぶりがよい宮島対岸「地御前神社」沖合のもの。穴子は小骨が目立たない宮島海域で獲れたものを使用しており、ふわふわの食感がクセになる。煮物は添えてある程度で主役を際立たせる弁当の構成となっているが、この潔さが〈米屋〉らしさだ。

 

「臭みがなく小骨もない宮島海域の穴子、身ぶりがよく、旨味たっぷりの宮島対岸・地御前神社沖合の牡蠣と、広島を代表する食材の中でも選りすぐりのものを使用することで、自信を持ってお客さまにお弁当を薦めることができます」と、政岡さん。

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「広島デラックス弁当」の主役となる牡蠣は水洗いし、酒と生姜を振って臭みを消した後、鍋で下茹でしアク抜きする。

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牡蠣を醤油、酒、みりん、りんご酢とともに煮込む。醤油は個性の強い海のものと、角がなくやさしい風味の山の醤油を混ぜ合わせることで、味に深みが出る。

牡蠣の下処理は、中華料理店で伝授してもらった。日本では熱湯をかける方法が一般的だが、中国では生姜と酒を加えることで臭みを消す方法が一般的なのだと学ぶ。

さらに、かきめしに利用する米を炊く際、牡蠣を茹でた時に出ただしと醤油を加え、炊き合わせでだし飯を作っている点も同店ならではの特徴である。

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水洗いした穴子に酒を振って臭みやコシを取り、プレートに並べ、蓋をして蒸す。

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コテで返しながら両面を5分ずつ蒸し焼いて焦げ目をつけ、香ばしさをプラス。

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醤油、本みりん、酒、りんご酢で作ったタレに穴子を漬る。本みりんは、広島の福山で採れるもち米100%のものを使用することで、うま味が一層アップする。

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米は政岡さんの出身地である秋田県の「あきたこまち」を使用。「広島デラックス弁当」は左のだし飯だが、上に乗せる食材との相性によって白飯、酢飯の3種を使い分けている。

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再度タレを塗り、味をしめて弁当が完成する。

 

時代に流されない<米屋>ならではのアプローチ

「広島デラックス弁当」や「日の丸弁当」など、余計な飾りや食材は入れず、素材のおいしさをダイレクトに表現する同店の弁当は、時代に流されることなく、そのシンプルな佇まいで店頭でも圧倒的な存在感を誇る。

 

「これからもあえて幅を広げ過ぎず、自分だからこそできる素材の表現にこだわっていきたいと思っています」と、誇らしげに笑う政岡さん。

 

産地や食材とどこまでも真摯に向き合い、潔くアウトプットしていく姿は、同店ならでの強みと言えるだろう。

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釜揚げしらす弁当(1折)1,512円【伊勢丹新宿店限定】

瀬戸内海の恵みであるふっくらとした釜揚げしらすをぎゅっと敷き詰めた弁当。口当たりがよく、あっさりした味わいで、小田原産「十郎梅」のとろけるような食感と酸味が程よいアクセントになっている。

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江田島醤油唐揚げ弁当(1折) 1,512円【伊勢丹新宿店限定】

広島県江田島産で作られるコクのある醤油をベースに味付けした、ジューシーな唐揚げは、サクサクとした食感と濃厚な味わいがあと引くおいしさ。冷めても肉が柔らかく、最後までおいしく締めくくれる。

 

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日の丸弁当(1折)821円

「あきたこまちの一等米、もち米」をブレンドした米を炊き上げた一品。中心に添えられているのは、ご飯にあう塩分濃度18%の小田原の「完熟十朗梅」。樹上で完熟した良質な実だけを丁寧に手でもぎ、塩だけで作った昔ながらの梅干は、とろけるような食感と芳香がたまらない。

 

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なます(130g) 594円、(250g)1,080円

塩もみせず砂糖をもみこみ、りんご酢で漬けたなますは、さっぱり爽やかな味わいとシャキシャキとした歯ごたえが魅力。<広島薬研堀製造所 米屋>の女将が広島で手づくりした商品。今夜のおかずに一品足したい時にぴったり。

 

 

Text : Tomomi Nakamura

Photo : Mariko Tosa,Yuya Wada

 

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