2020.12.5 UP
毎年11月から3月のあいだ堪能できる、石川県の冬の味覚「加能ガニ」。銘柄名は、石川県の地名「加賀」と「能登」から一文字ずつ。2006年に公募で名称が制定されました。
水色のタグが「加能ガニ」認定の証です。
「加能ガニ」と認定されるのは甲羅幅が9センチ以上の雄。基準に満たない小さいカニは海へと戻すそう。大切な海の資源を自分たちで守りながら漁をする、という姿勢の表れです。
水揚げされたばかりの加能ガニ。甲羅を覆うカニビル(黒い粒)が多いほど身が詰まっているそうです。
11月初旬。
待ちに待った加能ガニ漁の解禁日は、海の男たちの腕が鳴ります。
深夜0時。「加能ガニ」の漁が解禁となり、漁船は一斉に沖合40kmあたりの水域に向かいます。そこで水揚げされたカニを抱えて船が漁港に戻ってくるのは夕方5時ごろ。
これから始まる競りに向けて、船内では忙しなくカニの選別作業が始まります。
石川県全体では約100隻が操業。取材したかなざわ総合市場は、カニの水揚げ量が県内イチです。
床一面、カニに埋め尽くされた船内。漁師はカニの状態に気遣いながら丁寧に仕分けていきます。
船内で1杯ずつ測定した後、大きさごとにカゴに移します。
基準をクリアしたカニには「加能ガニ」の証、水色のタグが付けられます。最も美しい状態で出荷するため港で箱詰めされ、競り場へ。
競り前の市場内では、仲卸業者や買出人たちの下見が始まります。
夜7時。
市場の中はだんだんと高揚感に包まれていきます。
初競りの風物詩、特級ガニの競りが同時に行われるからです。
じつは、各船では大漁のカニの中からこの日の一番、特級カニの選別も同時に行なわれているのです。これぞと見極められた一杯はすぐに競り場に持ち込まれ、重量、甲羅幅、爪幅を測ると、仲買人が待つ競り場の水槽に入れられます。
一杯勝負の競り場には次々と立派な加能ガニが勢揃い。
赤いキャップを被った仲買人たちは目を光らせ、場内はさらに緊張感が走ります。
市場には仲卸人や飲食店のオーナーといった海産のプロたちも大勢集まり、この一杯競りを見守ります。
ピンと張り詰めた空気の中、競り人のかけ声が響き渡ります。
仲買人は目当てのカニの番が巡ってくると、値段や数を指で示す“手やり”で意思表明。
競りを見守る人たちは、競り人と目線、呼吸を合わせ次々と競り落としていく様子から一瞬たりとも目が離せません。
一杯あたりの競り時間は数秒。仲買人は集中力と決断力が求められます。
命運を握るのは競り人。そのかけ声は活気に満ちています。
一杯を競り落とす時間は、わずか数秒。
なかでも、見るからにもっとも大きな体をした加能ガニの番が巡ってくると、熱気はピークに。最高値での競り値が飛び交い、最終的な値段が決定した瞬間は場内にどよめきが起こりました。
競りは、まだまだ終わりません。
一杯勝負が終わると、この日水揚げされた加能ガニの初競りに移り、深夜まで続くといいます。
伊勢丹に加能ガニが登場するのは1月ごろ。この冬の味覚を、ぜひ楽しみに待っていてください。
【石川県フェア】
会期:2021年1月13日(水)~2021年1月19日(火)
伊勢丹新宿店本館地下1階=フレッシュマーケット
2020年11月6日撮影
写真=福田喜一
取材・文=FOODIE編集部