時間があるときは、台所で料理をしましょう。材料を買いに行き、何をつくるか決め、料理をして、テーブルを片付ける……つまり、料理をすることは暮らしそのもの。いつもよりもちょっとおいしいごはんを食べることで、暮らしの質は確実に向上します。
今日、ご紹介するのは「あたらしいおにぎり」の作り方。「なにかの時に」と買ったお米があるのならご飯を炊いて、おにぎりをつくってみませんか。外出できない日でも、おにぎりパーティをすれば、ピクニック気分が味わえます。
レシピ「あたらしいおにぎり」
米 2合(300g)
水 380cc
塩 小さじ⅓(2g)
海苔 適宜
まずはご飯の炊き方を復習しましょう。今更? と思うかもしれませんが、昔と今ではご飯の炊き方もずいぶん変わりました。ご飯をおいしく炊くポイントは「保存」「浸水」「炊飯」の3つ。
まず保存です。購入してきたお米はジッパー付きの袋やペットボトルなどに移して、冷蔵庫の野菜室で保存します。真空パックで販売されているお米は別ですが、お米の袋には破れないように穴が空いているので、保存には不向きです。米は乾物とはいえ生鮮食品の一種。きちんと保存し、おいしさを長持ちさせましょう。
米はボウルに入れて、洗います。この工程、昔は「お米を研ぐ」と言いましたが、精米技術が進化した今では教科書でも「洗う」となっています。とはいえ、作業の目的自体は変わりません。お米を洗う目的は米の表面の糊粉層という劣化、酸化しやすい部分を取り除くことです。
米は最初に入れた水を多めに吸うので、一度目の洗米はスピーディに。おいしい水を注いだら、軽くかき混ぜ、水を捨てます。もう一度水を注ぎ、今度はボールを握るように広げた手でシャカシャカと音がする程度の速さで、やさしくかき混ぜます。米粒同士がこすり合う摩擦力で米の表面を洗うので、水は入れすぎないこと。水をたくさん入れると米粒が泳いでしまい、上手に洗えません。
水を捨てたら、もう一度この作業を繰り返しましょう。昔は「研ぎ水が透明になるまで」と言っていましたが、その必要はありません。さきほど糊粉層は劣化がしやすい、といいましたが、実はこの糊粉層は旨味も多く含む部分。よく研ぐと味に透明感が出てきますが、ご飯そのものを味は弱くなっていきます。とくにおにぎりのようにお米そのものを味わう場合には注意しましょう。少しいい加減なぐらいが、お米の味が生きてきます。
研いだお米を分量の水で30分、浸水させます。この時間で米は水分を十分に含み、炊きあがりがふっくらとします。
さて、30分経ちました。あたらしいおにぎりの作り方はここで分量の塩(小さじ1/3)を加えます。軽く混ぜれば塩はすぐに水に溶けるはずです。この段階で塩を加えるメリットは大きく2つ。
1 塩が米の粘り気を抑えて、ほぐれるような食感になる
2 おにぎりをつくる度に手に塩をつける手間が省ける
特に後者のメリットが大きいはずです。鍋に蓋をして、強火にかけて沸騰させたら、一度、蓋をとってかき混ぜます。こうすることで下に沈んだデンプンで固まったお米がほぐれ、炊きあがりが均一になります。急いで蓋をしめたら、火を弱火に落として10分間。時間になったら火を止めて、もう10分間蒸らしたら、ご飯の炊きあがりです。炊きあがったらご飯をほぐし、表面の余分な水蒸気を蒸発させるのも重要です。この作業はシャリ切りという工程。米のまわりの余分な水蒸気を飛ばし、おいしさを長持ちさせることができます。
炊飯器で炊く場合は内釜に洗った米を移し、水加減をしたあとに塩を加えます。あとは通常通りに炊飯スイッチを押すだけ。ちなみに電気炊飯器の場合は浸水時間をとる必要はありません。あとは炊飯器が勝手に炊いてくれます。炊きあがったら同様にシャリ切りをすることを忘れずに。
おにぎりの具材は鮭や梅干しなどが定番ですが、実は何を使ってもいいのです。あたらしいおにぎりにふさわしい具材は自由に選んでみましょう。
<朝岡スパイス>クリスピーデュカ (32g) 648円 □シェフズセレクション
※↑伊勢丹オンラインストアでお取扱いがございます。
<MINOSUKE>生姜ごはんの友 (80g)411円 □シェフズセレクション
<魚勢>彩り野菜のスイートピクルス (75g)864円 □フレッシュマーケット
※大変申し訳ございません。ただ今、伊勢丹新宿店は休業しております。営業再開につきましては、伊勢丹ホームページにてご案内いたします。
伊勢丹新宿店の食品フロアの食材でも楽しめます。まずは「クリスピーデュカ」。デュカは中東生まれのナッツを使ったスパイス調味料で、肉料理やサラダなどに使います。このクリスピーデュカが通常のデュカと違う点はクミンが入っていないこと。クミンが入っていないのでマイルドな風味です。
お豆腐コーナーで入手できる「生姜ごはんの友」はまさに鉄板。ご飯と合わないはずはありません。
かわいいピクルスも。あなたのご家庭でも冷蔵庫に頂き物のピクルスなど余っていませんか? 野菜を甘酢につけたピクルスを刻んでご飯に混ぜると野菜寿司風のおにぎりになります。
そうこうしているあいだにご飯が炊けたようですね。さて、従来のおにぎりの作り方は、ご飯がアツアツのうちに塩(または塩水)をつけた手にごはんをとり、三角形(または俵型)に握る、というもの。この作り方はご飯が熱くて大変ですし、強く握りすぎると硬い食感になってしまいます。そこで今回、ご紹介するのがあたらしいおにぎりの作り方です。
まずは茶碗にご飯50gを計り、入れます。通常のおにぎりは100g〜120gが標準ですから、今回はかなり小さめです。
そして、もう一つお茶碗を上からかぶせて……
茶碗をしっかり持って、上下に振ります。10回くらい振れば大丈夫です。
すると、こんな風に茶碗の中でご飯がまとまります。この作り方だと周りは固まっていますが、握っていないので、なかはふんわりとしたまま。お茶碗の形状によってはこんな風に俵型になってしまうこともありますが、その場合はラップで丸く整形すれば問題ありません。ただ、その場合も強く握らないように注意。あくまで形を整えるだけにしましょう。
丸まったご飯をクリスピーデュカや赤じそのふりかけの上で転がせば出来上がりです。
中心に具材を入れたい場合は、茶碗のなかでご飯の中心に具材を入れ、同様に茶碗を被せて、振ります。この時、具材がご飯から溢れてしまうと形が崩れてしまうことがあります。
その場合はラップで整形しましょう。ご飯にあらかじめ塩を入れてあるので、あとから振る必要はありません。
50gの丸いおにぎりができれば、宮崎県が発祥とされる肉巻きおにぎりも簡単。和牛薄切り肉(シャブシャブ用)80g〜100gでだいたい3個つくれます。薄切り肉で丁寧に包んだら、、、
あとは中火にかけたフライパンで転がすようにしながら表面を焼き、醤油大さじ1、酒大さじ1、砂糖大さじ1をあわせたタレをかけて、軽く煮詰めるだけです。
おにぎりの大きさを通常の半分にしたので、いろいろな味とバリエーションが楽しめます。丸い塩おにぎりだけをつくって、海苔は自分で巻く形も楽しいと思います。お子さんがいるご家庭は『肉そぼろ』や『卵そぼろ』があると喜ばれるかも。
レシピ「肉そぼろ」
鶏ひき肉 100g
醤油 大さじ1
砂糖 大さじ1
酒 大さじ2
1 鍋にすべての材料を入れ、箸でほぐす。
2 鍋を中火にかけて、箸で混ぜながら加熱する。ひき肉に火が通り、汁気が少なくなったら出来上がり。
レシピ「卵そぼろ」
卵 2個
砂糖 大さじ1
塩 ひとつまみ
1 鍋に卵、砂糖、塩を入れて、よく溶く。
2 鍋を中火にかけて箸で混ぜながら加熱する。外側から固まってくるので、ほぐすようにしてさらに炒りつける。卵が固まり、そぼろ状になったら出来上がり。
鶏そぼろや卵そぼろは塩にぎりに自分でのせて食べてもいいですし、ご飯とそぼろをラップで整形してもいいでしょう。おにぎりは自由度の高い料理です。鶏そぼろ+デュカでおにぎりをつくるとオリエンタル風の味になります。
お米がいつもより家にあるのなら、おにぎりをみんなで作って食べるのはいかがでしょうか。みんなで作って食べればおいしさもひとしお。こういう時代だからこそ、シンプルなおいしさを分かち合いたいものです。
Text & Photo : Naoya Higuchi