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2020.6.20 UP

目指せ!究極のチーズケーキ。

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チーズケーキ作りがちょっとしたブームです。日本人はもともとチーズケーキが大好き。作家で料理家の樋口直哉さんに、究極のチーズケーキをテーマにレシピを考案していただきました!

チーズケーキには、1960年代に日本で生まれたレアチーズケーキから、海外で「Japanese style」と呼ばれるふわふわのスフレチーズケーキなど、様々な種類があります。

 

失敗しづらく簡単なので、はじめてのお菓子作りにぴったりです。今日はベイクド=焼くタイプのチーズケーキを作ってみましょう。

 

今回のレシピのベースになったのはスペインのバスク地方、サン・セバスチャンにある<ラ・ヴィーニャ>というお店が考案した高温で焼くスタイル。オリジナルに使われている材料はクリームチーズ、生クリーム、卵、砂糖、小麦粉だけと至ってシンプルですが、今日はそこに酸味と香りをプラスして、羽毛のように軽くさっぱりとした、食べ飽きない味を目指しました。

 

ベイクドチーズケーキ 〜シナモンとバニラ風味〜 のレシピ

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―材料―

クリームチーズ 200g〜220g(常温に戻しておく)
洗双糖     80g(又は砂糖 80g)
ギリシャヨーグルト 50g
薄力粉       15g(又はコーンスターチ 15g)

全卵        2個

生クリーム      200cc

バニラ       1本(又はバニラオイル 少々)

シナモン      3g

レモン汁      5g

 

―作り方―

 

1)バニラは鞘を半分に切り、種をかき出す。小鍋に生クリーム、バニラの種と鞘、シナモンを入れ、中火にかける。72℃になったら(火にかけて鍋肌のところの縁が小さく泡だってきたら72°です)火を止めて、蓋をしてそのまま冷ます。オーブンを220℃に予熱しておき、18cmのパウンド型にオーブンペーパーを敷く。

2)ボウルにクリームチーズと洗双糖を入れ、ゴムベラで混ぜる。砂糖が溶けたら、ギリシャヨーグルトと薄力粉を加え、更に混ぜる。そこに溶いた全卵を3回にわけて加え、なめらかになるまで混ぜる。

3)1)の生クリームをザルで濾しながら加え、更に混ぜる。レモン汁を加え、均質な生地になったら、型に流す。220℃のオーブンで30分焼く。オーブンの蓋を開け、ゆっくりと冷ます。粗熱がとれたらラップで包み、冷蔵庫で12時間以上冷やす。切り分けて食べるが、冷凍も可。

チーズケーキとはなにか?

チーズケーキは「ケーキ」と名前がついていますが、実は卵を使ったお菓子=「カスタード」の一種です。つまり、プリンやクリームブリュレと同じカテゴリと考えてください。普段、卵の存在に気づかないのはチーズやクリームなどを使った濃厚な生地が、卵の存在を隠してしまっているからです。

 

調理科学のバイブルと呼ばれる「マギーキッチンサイエンス」によるとチーズケーキの生地の基本は卵1個に対し、卵以外の材料が250cc程度。ただし、生地が濃厚で酸味もあるので、砂糖が多めに入ることが特徴です。小麦粉やコーンスターチを加える理由は生地を安定させるためで、水分を吸収してくれる働きもあります。

 

まずは材料選びから

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今回、メインとなるクリームチーズは、伊勢丹新宿店地下1階の食品フロア<HISADA>で購入しました。対面販売でチーズを選ぶことができます。

 

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伊勢丹新宿店で選んだチーズケーキ用の材料です。右上から時計回りに

<タカナシ乳業>純生クリーム 35% (200ml)395円 洗双糖(1kg) 530円 <那須ファーム ぴよっこ>卵(6玉入)432円 <フロマジェリーHISADA>AUS クリームチーズ(100g) 251円 <朝岡スパイス>シナモン原形(23g) 594円 

<朝岡スパイス>シナモンステッキポリ(65g)1,070円は三越伊勢丹オンラインストアにてお取扱いがございます。

 

クリームチーズは1872年にアメリカで誕生しました。1880年にはおなじみの「フィラデルフィア」という商標が生まれ、現在では多くのメーカーが製造しています。スーパーなどでも入手しやすいフィラデルフィア・クリームチーズは酸味の少ない穏やかな味わいです。伊勢丹新宿店の食品フロアで入手できる<タカナシ乳業>北海道クリームチーズはあっさりとした味と塩味が特徴。今回は、同じフロアにあるチーズ専門店<フロマジェリー HISADA> AUSクリームチーズ を使いました。濃厚な味わいで、加熱しても分離しにくいのが特徴。チーズが残ったら、鰹節をまぶして、醤油とわさびを添えて食べるのがおすすめです。

洗双糖というお砂糖は馴染みが薄いか、と思います。日本で一般的な砂糖は上白糖ですが、これはいわばそれになる前の砂糖。サトウキビの風味が残り、特有のコクと素朴な甘さがあります。先程チーズケーキの特徴として「砂糖が多めに入る」と説明しましたが、その分、砂糖の選択も味に影響します。とは言え、砂糖の役割は甘みをつけ、生地をしっとりとさせることなので、どの種類の砂糖を使っても結構です。上白糖ならコクのある味に、グラニュー糖であればさっぱりとした甘さに仕上がります。

生クリームは脂肪分が低いもの(35%程度)と高いもの(45%程度)があります。今回は脂肪分35%の生クリームを使いましたが、より濃厚にしたければ高脂肪分の生クリームを使用してください。なお、植物性の生クリームは加熱に弱いためチーズケーキには向きません。必ず純乳脂肪と表示がある商品を選んでください。

今回のレシピの特徴はヨーグルトで酸味を加え。バニラとシナモンで風味をつけたこと。バニラ自体を口にすると苦味以外の味はあまりないのですが、その香りがあると人間は「甘い」という風に認識します。そのためバニラの香りをつけることで砂糖の量を減らしつつ、充分な甘さを出せるのです。シナモンが手に入らない場合はバニラだけ、あるいは安価なバニラオイルなどの香料を加えても大丈夫です。

 

作り方は材料を順番に混ぜるだけ

チーズケーキの生地づくりは簡単で、一つのボウルで材料を混ぜるだけです。ポイントはゆっくりと静かに混ぜ合わせ、均一に混ざったら混ぜるのを止めること。勢いよく撹拌すると生地に空気が入り、加熱するとそれが蒸気となって膨らむので好ましくありません。

 

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クリームチーズは常温に戻しておき、指で押すと簡単に形が崩れるような状態にしておくと混ぜやすくなります。硬い状態で混ぜると、撹拌しすぎやダマになってしまう、など失敗のリスクが上がります。

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今日は18cmのパウンド型を使いました。オリジナルのレシピは丸型でつくりますが、型が大きいと生地が薄くなってしまい、温度調整が難しくなります。その点、四角い型であれば厚みを稼げるので、中心部のとろりとした食感が出やすいです。

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パウンド型にオーブンペーパーを敷くときは写真のように底を基準に切り込みを入れ、折り込むようにします。オーブンペーパーがはがれそうであればバターを接着剤にして、紙同士や型とくっつけると作業がしやすいでしょう。

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出来上がった生地はゆるい状態なので、焼く前は心配になるかもしれませんが、チーズは冷たくなれば固くなるので大丈夫。この生地の状態からもチーズケーキがカスタードの一種だということがわかるかと思います。

220℃〜240℃の高温で30分間。一気に焼きます。オーブンの温度には個体差があり、レシピ化するのは困難です。火力の弱いオーブンであればもう少し時間がかかるかもしれませんし、コンベクションオーブン(空気を対流させるタイプ)であれば22〜25分で焼き上がるかもしれません。

 

カスタードですから焼き過ぎは避けたいところ。焼きすぎると乾燥し、水分損失によってしぼんでしまいます。目安は全体が膨らみ、周囲の一部がひび割れていたら加熱が終わった合図。中心がひび割れていた場合は加熱しすぎなので、次回は時間を短くするか、温度を下げましょう。

焼き上がった直後はかなり膨らんでいますが、冷めると沈みます。この時、ゆっくりと冷ますのもポイント。冷えると中の気泡や蒸気がしぼんでいきますが、穏やかに冷ますとチーズケーキの表面を引っぱる力が弱くなるのでふんわりとした食感が残ります。

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チーズケーキのおいしさは表面の焼き色にもあります。焼き色は二つの反応によるものです。一つは砂糖のカラメル化反応。この反応によってジアセチル(バターのような香り)やマルトール(甘い香り)などの香り成分が生まれ、いわゆるカラメルの風味がつきます。二つ目はチーズと砂糖が起こすメイラード反応です。メイラード反応はあらゆる料理やお菓子の美味しさのもととなる反応で、花のような香りとおいしい味も生み出します。

この二つの反応は温度が高いほど早く進み、メイラード反応が顕著に進むのが154℃以上。カラメル化反応は180℃で進みます。この二つの温度がオーブン料理の加熱の根拠となっています。つまり、クッキーを香ばしく焼きたい場合はオーブンの温度を180℃〜190℃に設定し、肉の塊をじっくりと加熱しつつ、焦げ目もつけたい場合は160℃〜170℃に設定する、という具合です。

ケーキの種類によってははじめに190℃の高温でしっかりと焦げ目をつけ、次に温度を150度に下げてじっくりと水分を飛ばす、という方式をとる場合もあります。このチーズケーキもオリジナルのレシピは焦げ色をもっと強く出すので、その場合は250℃のオーブンで20分ほど焼いてもいいでしょう。買ってくればいくらでもおいしいケーキが食べられる時代ですが、お菓子を自分でつくるのは特別な経験です。

 

最後にアレンジ。柚子風味のチーズケーキ

チーズケーキにフレーバーを加えても楽しいでしょう。例えばギリシャヨーグルト50gの代わりに柚子ジャム50gを加えれば柚子風味のチーズケーキになります。

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<木頭村>ゆずジャム(155g) 508円

ご自宅でのチーズケーキ作りに、励みましょう!

 

Text & Photo : Naoya Higuch

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