桃のシーズン到来です。品種ごとの旬は短いものも多く、7〜9月にかけてはめくるめくリレーのように、様々な桃が登場します。桃を追いかけて、今年の夏はお家で桃パフェを楽しんでみましょう。作家で料理家の樋口直哉さんによるパフェ講座。パフェを構造的にとらえ、アレンジやバリエーションを広げる技が満載です。
パフェは日本独自のスイーツ。フルーツパーラーや喫茶店などで食べられる懐かしさのメニューという位置づけから、最近では進化系のパフェが続々登場し、再発見された感があります。いずれにせよ、子供から大人まで、楽しめるスイーツです。
パフェは一見すると複雑で難しそうに見えますが、実はとても簡単。その構造は
「主素材」(フルーツなど)+「クリーム類」+「アイスクリーム」+「焼き菓子やシリアル」
というのが基本で、ここに「ソース類」を加える場合もあります。例えばグラスに買ってきたカットフルーツや缶詰のフルーツを入れ、アイスクリームを載せます。そこにコーンフレークをふりかけ、ホイップクリームを絞り、フルーツソースか黒蜜をかければもうパフェの完成です。もともとは忙しい喫茶店でもつくれるメニューなので、市販品を組み合わせるだけでもおいしくできる、というわけ。
この構造を理解すればアレンジは自由自在。今日は今が旬の桃を使った『桃パフェ、アールグレー風味』をつくりながら、基本をマスターしましょう。
材料 2人前
桃 2個(コンポート用とトッピング用各一個)
コンポート用
水 300cc
砂糖 60g
レモン汁 小さじ2
紅茶のジュレ(作りやすい分量)
パールアガー 3g (またはイナアガー)
砂糖 大さじ1
水 300cc
アールグレー紅茶 ティーバッグ1袋
チーズクリーム(作りやすい分量)
マスカルポーネチーズ 100g
ギリシャヨーグルト 100g
砂糖 大さじ1
バニラアイスクリーム 100ml
コーンフレーク 適量
ミント
1 桃のコンポートをつくる。桃は種のまわりをぐるりと一周するように包丁を入れ、両手でねじるようにして、種をとりのぞく。種がついている半分に包丁を入れ、種をとる。鍋に水300cc、砂糖60g、レモン汁小さじ1、切った桃を入れ、キッチンペーパーを落し蓋にして火にかける。沸騰したら火を止めて、そのまま冷ます。冷蔵庫で冷やす。
2 紅茶のゼリーを作る。小鍋に水300ccを沸かし、火を止めてからティーバッグを入れ、皿などをかぶせ3分間蒸らす。砂糖とパールアガーをボウルで混ぜ合わる。ティーバッグをとりだし、砂糖とパールアガーの混合物を溶かし、沸騰するまで火にかける。沸いたら保存容器に移し、粗熱がとれたら冷蔵庫で冷やし固める。。
3 チーズクリームをつくる。ボウルにギリシャヨーグルトとマスカルポーネチーズ、砂糖を混ぜ合わせる。
4 パフェを組み立てる。トッピング用に桃をくし形に切る。グラスに紅茶のジュレをスプーン2杯入れ、そのうえに角切りにしたコンポートをのせる。好みの量のコーンフレーク、アイスクリーム、チーズクリームの順番に入れ、生の桃をのせる。ミントを添えればできあがり。
私見ですが進化系のパフェのポイントは2つあります。一つはフレッシュフルーツをたっぷりと使うことです。昔の果物は糖度が低かったので、少量の砂糖で甘味と香りを引き出す「マセレ」という工程を踏んだり、甘いコンポートにしたりしていましたが、現在流通しているフルーツの糖度は非常に高く、そのままバニラアイスクリームやクリームとあわせても違和感がありません。
通常の料理やスイーツは皿の上に並べますが、パフェは垂直方向に順番に重ねていくのが特徴。スプーンですくいながら食べるので、味の変化が演出できます。作る前に考えるべきは
一口目の印象→食べ進めたときの印象→最後の印象
です。この桃のパフェははじめにフレッシュな桃の味をストレートに味わってもらい、次にバニラアイスクリームやチーズクリームの濃厚な味とコーンフレークの食感が混ざりあい、最後に紅茶のゼリーでさっぱりとまとめました。
進化系パフェのポイントの2つ目がこのゼリー類です。ゼラチンではなく、海藻由来の凝固剤であるアガーを使った軽いゼリーを使ったパフェは昔にはなかったもの。このあたりにパフェが再評価された理由がありそうです。
また、パフェは「温度差」のスイーツです。冷たいアイスクリームにそれよりも少し高い温度のクリームやゼリー、常温のコーンフレークなど様々な温度を重ねることで、舌のうえで変化を起きるので食べ飽きない、というわけ。
私見ですが進化系のパフェのポイントは2つあります。一つはフレッシュフルーツをたっぷりと使うことです。昔の果物は糖度が低かったので、少量の砂糖で甘味と香りを引き出す「マセレ」という工程を踏んだり、甘いコンポートにしたりしていましたが、現在流通しているフルーツの糖度は非常に高く、そのままバニラアイスクリームやクリームとあわせても違和感がありません。
通常の料理やスイーツは皿の上に並べますが、パフェは垂直方向に順番に重ねていくのが特徴。スプーンですくいながら食べるので、味の変化が演出できます。作る前に考えるべきは
一口目の印象→食べ進めたときの印象→最後の印象
です。この桃のパフェははじめにフレッシュな桃の味をストレートに味わってもらい、次にバニラアイスクリームやチーズクリームの濃厚な味とコーンフレークの食感が混ざりあい、最後に紅茶のゼリーでさっぱりとまとめました。
進化系パフェのポイントの2つ目がこのゼリー類です。ゼラチンではなく、海藻由来の凝固剤であるアガーを使った軽いゼリーを使ったパフェは昔にはなかったもの。このあたりにパフェが再評価された理由がありそうです。
また、パフェは「温度差」のスイーツです。冷たいアイスクリームにそれよりも少し高い温度のクリームやゼリー、常温のコーンフレークなど様々な温度を重ねることで、舌のうえで変化を起きるので食べ飽きない、というわけ。
さて、容器ですが専用のグラスがなくともワイングラスなどがあれば大丈夫。容量で200cc〜250cc入ればOKです。家にあるもので楽しみましょう。
【主素材の桃について】
桃は常温で追熟させ、やわらかくしてから冷蔵庫で冷やすのが基本。よく洗って産毛を落としてから、カットします。今回のパフェにはコンポートと生の二種類を使っていますが、もちろんすべて生の桃を使ってもいいでしょう。
桃は種の周りに包丁をぐるりと入れます。
その後、両手でねじるようにして半分に割ります。この時、力を入れすぎると桃が潰れてしまうので、やさしく扱うようにしましょう。何度かねじっていると、手のひらを通して種の周りの繊維がちぎれる感触が伝わってきます。
上手に半割できました。種が硬くて半分に割れない、というのは熟し方が足りない証拠。その場合は仕方がないので、種をよけるようにして包丁を入れ、果肉を取り出します。
【ゼリー類について】
今回は桃と相性のいいアールグレー紅茶のゼリーを手作りしました。アガーという凝固剤を使いましたが、ゼラチンでもかまいません。その場合は紅茶300ccにゼラチン5gが適当ですが、ゼラチンのタンパク質が紅茶のタンニンによって凝固し、濁る場合があります。それを避けるためにはペットボトルで売られている市販の紅茶(タンニンが少ない)を使うと澄んだ色に仕上がります。コンポートの煮汁をゼラチンで固めても淡いピンクの色合いがきれいでしょう。
一からつくるのが難しいという場合は市販品を活用します。例えば食品売り場には様々なフルーツゼリーが売られていますし、桃と相性のいい杏仁豆腐を使うという手もあるでしょう。
【クリーム類について】
パフェに用いるクリームは、ホイップした生クリームが定番ですが、今回はチーズクリームをつくりました。泡立てる工程が省略できるからです。チーズが入手できなければギリシャヨーグルト単体でもいいでしょうし、逆にマスカルポーネチーズだけでもかまいません。市販品を活用するならなめらかタイプのプリンなどを使っても味に厚みが出ます。
【アイスクリーム類について】
アイスクリームはパフェの隠れた主役です。バニラアイスクリームはどのようなフルーツにもあわせられる万能選手ですが、好みで他のフレーバーを選んでも。今回はナポリアイスクリームの濃厚クリーミーバニラを使いました。
【焼き菓子やシリアルについて】
焼き菓子やシリアルは食感のアクセントになる他、アイスクリームによって冷えた舌の状態を元に戻す役割もあります。今回はコーンフレークを使いましたが、グラノーラなどのシリアルを使ってもいいですし、好みのビスケットを砕いて使うのもオススメです。他にカステラやスポンジケーキといった焼き菓子を使う手もありますし、和風のパフェであれば蒸しパンなどもいいでしょう。
伊勢丹新宿店で選んだ桃パフェの材料です。
<タカナシ乳業>北海道産マスカルポーネ(250g) 683円
<信州ミルクランド>ギリシャヨーグルト (400g) 432円
<ナポリアイスクリーム>濃厚クリーミーバニラ (100ml) 324円
カップの底にチーズクリーム、コーンフレーク、桃のコンポート、バニラアイスクリーム、紅茶のゼリー、フレッシュな桃と重ねていくと味の印象ががらりと変わります。こちらはレストランのデザートに多い構成で、はじめはさっぱりと、徐々に濃厚になっていく形です。
パフェは自由なスイーツです。順番や構成、素材などを変えるだけで様々な味になります。旬の食材と遊びながら変化を楽しみましょう。
Text & Photo :Naoya Higuchi