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2020.7.25 UP

フロマジュリーのお仕事

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海外からナチュラルチーズが登場して約30年。スーパー、グロサリーショップ、専門店では、価格も味わいも様々なチーズが、いずれもナチュラルチーズとして販売されています。その違いはどこから?伊勢丹新宿店のチーズ専門店<フロマジュリー HISADA>店長の榎島功さんに、フロマジュリーのお仕事についてお話いただきました。

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お仕事その1 「チーズの目利きであれ」

野菜や魚に市場があるように、チーズ王国のフランスにはチーズ市場があります。<フロマジュリー HISADA>は2004年、チーズの本場であるパリにチーズ専門店を開業しましたが、それは私たちの目利き力が本場で通用するかを試すという大きな挑戦でした。私たちが良いチーズを仕入れるためにまず必要だと考えたことが、フランスのチーズ市場で良いチーズを買い付けるネットワークを作ることでした。30年近く前に最初に市場を訪れた時、これまで輸入商社を通じて扱っていたチーズとの品質の差に驚いたのです。良いチーズを扱うには、自分たちの目利き力をあげて、直接取引しないとダメだと思いました。それがパリに店を持つという大きなモチベーションに繋がったのです。

 

パリ店設立に向けて、私もしばらくパリで働く事になり、毎朝早朝、パリのオルリー空港近くにあるランジス市場に通いました。その中にチーズ専門のエリアがあります。私と代表の久田早苗は、自分たちが納得のいく状態のチーズを探しました。私達は新参者でしたから、市場での仕入れに慣れているフランスの専門店の方々よりも執拗で、熱心だったと思います。フランス人がケースでまとめて買うところ、私たちは一つ一つのチーズを確認して、状態の良いものだけを選ぶようにしました。段々、私達の仕入れ基準が自分たちにも周りにも理解されるようになっていきました。日本に輸出するチーズも当然一緒に買い付けますから、チーズの種類にもよりますが、輸送時間を計算して、水分値には特に気を使います。

 

もう一つは、産地や生産者を実際に確認する事です。まずは情報のバイアスのかからない状態でチーズを試食し、<フロマジュリー HISADA>として扱いたいチーズを選びます。同じ生産地のチーズを片っ端から食べて、代表の久田がお客様に伝えたい味を吟味します。<フロマジュリーHISADA>らしい味というのは、長年私たちの舌で、経験則的にわかるようになってきた味なので、言語化は難しいです。言ってみれば「美味しいチーズを伝えたい!という気持ちが伝わるチーズ」でしょうか(笑)。皆でその後、実際に産地を訪れます。

 

産地では、動物たちの生育環境や餌を見ます。土地が豊かでなければ良い牧草は生えません。食べる草や餌が良ければ、動物たちはストレスなく良いミルクを出します。これらを実践している生産者を確認するのです。実際に造り手に会うと、真逆のことを言われて戸惑うこともあります。例えば、昔ながらの製法を守る小さな生産者が「チーズは生き物だからね!一つ一つが同じじゃないから、人がその状態で関わっていかないとだめなんだ」といえば、片や「人が管理するとムラが出る。機械に任せてこそ、高い品質で仕上げられる」という造り手もいらっしゃる。僕らは、自分たちの舌が選んだものであれば、どちらも正解だと思っています。ここで、造り方が対照的で、私たちがどちらも美味しいと思っているチーズを紹介しましょう。

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<フロマジュリーHISADA>カマンベールドゥノルマンディ AOCマダムHISADA(250g)2,401円

手作業で作られているチーズ。

 

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<フロマジュリーHISADA>フロマジェダフィノワ(1カット約200g)1,582円

マイクロフィルターを使用し、オートメーションで製造。万人が食べて、万人が美味しいと感じる完成度の高さ。

お仕事その2 「チーズを熟成させる」

フロマジュリーならではの仕事が、チーズを良い状態に熟成させるという仕事です。熟成士はフランスではアフィヌー(女性はアフィヌール)と呼ばれ、直訳すると“洗練させる人”を意味します。熟成士の仕事は、チーズの種類、働く場所によっても様々で、私たちのようなチーズ専門店では、「買い付けてきたチーズを、お客様にベストな状態に仕上げる」あるは「買い付けてきたチーズを自分のアイデアで、他の食材と組み合わせて熟成させる」というものです。

 

前者を具体的にお話すると、チーズを良い状態で熟成させるために、チーズの表面を塩水やアルコール類で洗うという作業があります。そして、チーズの上下を適宜反転しながら、熟成速度をコントロールします。私がパリで働いていた頃は、半日に一度、ヤギチーズを反転させて育てていました。毎日接していると愛着が湧いてきます。まるで飼育係です!

 

チーズの表面を洗うアルコールの選択も熟成士の腕の見せ所の一つです。フランスではワインやマール(ブドウの絞り滓の蒸留酒)などが使われますが、日本酒や焼酎などを使うと、新しい香りが出て、食卓での味わい方も広がります。

 

また、後者の例でいくと、フレッシュチーズをラム酒漬けのレーズンで巻いたり、チーズにない味の要素を足して味に膨らみをもたせ、お料理の一品のように仕上げるのも熟成士の仕事です。パリでは、ベースのチーズを創作して熟成させるのが最近とても流行っています。ここでは、熟成士の仕事が生きたチーズを代表してご紹介します。

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クラックビトゥーフェルミエマダムHISADA

その3 「チーズのコンシェルジュとして」

最後に、私達が日々心がけて実行していることをお話させていただきます。フロマジュリーとしての願いは「現地の美味しさをそのままお客様に伝えること」です。ですから、なるべく現地に近い状態で食べていただくために<フロマジュリー HISADA>では、ホールから切りたてで、真空パックなどをせずに販売しています。現地でも、チーズは買ったらすぐに食べる生鮮食品のようなものなので、真空パックはしていません。お客様に必ず伝えていることは、「少しずつでもいいから、まずは召し上がってみてくださいね」ということです。熟成しているチーズでもそれは一緒です。「くさい方が好き!」とおっしゃるお客様は、さらに家で寝かせようと考えるようですが、お渡しした状態に近いうちに食べていただく方が、造り手の思いが伝わると信じています。これは、覚えておいていただきたいです。

 

それでも日本の場合、まだまだその日に食べるという習慣はなかなか根付いていませんので、お客様には「いつ食べますか?」を必ず聞いてチーズを選んで差し上げるようにしています。食べる日や状況をできる限り伺い、最適なチーズを選ぶようにしていますが、チーズによっては「今日は買わない方が良いですよ」とお話することもあります。お客様の好みがわかれば、私達の方でお客様の好みの熟成に仕上げることもできますので、なるべく「こんなチーズが好き!」という情報をたくさんいただけると嬉しいです。フロマジュリーの仕事、少しお分りいただけたでしょうか?

最後に、素晴らしい熟成士の仕事を感じていただけるチーズをご紹介します。

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<フロマジュリーHISADA>コンテ AOC エクストラ(1カット約200g)1,901円

フランスでもっとも生産量が多いコンテチーズ。生産者も多いが、なかなか美味しいものもないのが現実。コンテチーズの真骨頂である甘みのある、良い熟成のお手本のようなチーズ。

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<フロマジェリーHISADA>ジョルジオ パルミジャーノレッジャーノ(1カット約200g)1,761円

熟成士、ジョルジオ・クロベッロ氏は、チーズの塊を叩いて熟成の良し悪しを判断する名人。長期熟成の風味が、切りたてだとこんなに違う!というのが実感できる。

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<フロマジェリーHISADA>サントモールドゥトゥーレーヌ AOC(240g)2,601円

 

▼クレジット

Text:ISETAN FOOD INDEX編集部

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