ロマンティックなテリーヌショコラ 

2021.2.1 UP

チョコレートケーキの王者、ガトーショコラの人気を近年揺るがしているのがテリーヌショコラ。うっとりするような滑らかな口当たりには、抗えない魅力があります。作家で料理家、樋口直哉さんが提案する、ロマンティックな気分になること間違いなしのテリーヌショコラです。

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チョコレートは魔法の食べ物。常温では固体なのに、口に入れるとクリームのように溶ける性質はほかにありません。その味は喜びと幸福を生み、落ち込んだときにもぴったり。

 

チョコレートの調理は失敗しやすいとされ、敬遠されがちです。しかし、難しいものではありません。一般的にお菓子作りに使われるダークチョコレートはすでに加工が施され、完成された食材。じつは少々のことでは駄目にはならないのです。もちろん、完璧を目指すのであれば話は別ですが、家でつくる分には気楽に挑戦してください。

 

今日、つくるお菓子はテリーヌショコラ。テリーヌとは四角い型を指し、気泡が入らないように濃厚に仕上げたお菓子です。以前チーズケーキの作り方「目指せ!究極のチーズケーキ」を紹介しましたが、原理的には同じ。チーズの代わりにチョコレートを使ったカスタードなので、コツは同じ。材料をしっかり混ぜ合わせ、加熱しすぎにだけ注意すれば上手にできます。今日はスパイスとキャラメルの風味を加えたレシピをご紹介します。

 

 

大事なのは、材料選びです。 

テリーヌショコラは基本的に「チョコレート、バター、全卵」を混ぜて焼くだけなので、それだけに素材の味がそのまま出るので、いいものを使えばやはり仕上がりに差が出ます。

 

まずはチョコレートの選び方から。チョコレートには様々な製品があるので、売り場に行くと選ぶのに迷ってしまうかもしれません。チョコレートは呼び方には業界用語が多く、一つの種類にも様々な名称があったりするからです。

 

お菓子作りには一般的に「ダークチョコレート」や「ビターチョコレート」という種類を選びます。マギーキッチンサイエンス(共立出版)によるとダークチョコレートとは

 

カカオ固形分、カカオバター、砂糖を含み、乳固形分を含まない

 

ものを指します。定義によって異なりますが、日本ではカカオマス(カカオ固形分)が40%以上のものを指すことが多いようです。

 

このチョコレートは製菓用として売られていますが、最近ではスーパーやコンビニエンスストアでも原材料に「カカオマス、砂糖、ココアバター/乳化剤」しか使われていないチョコレートが売られています。そうしたチョコレートであれば同じようにお菓子作りに使えるので便利です。

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チョコレートのパッケージにはよく「カカオ分70%」や「カカオ分80%」といった表示があります。これはカカオバターとカカオ固形分をあわせた数字。カカオ分が70%であれば砂糖が約30%、カカオ分62%であれば砂糖がおよそ38%含まれているということです。(砂糖以外にも少量のレシチンやバニラなどが含まれることがあります)

 

カカオ固形分が多いほど風味が強いので、お菓子作りに向いています。生クリームや卵と混ぜるとチョコレートの風味のもとであるフェノール基という部分がそれらのタンパク質と結合し、風味が高まるからです。かといってあまり高すぎると苦くなるので、他の材料との兼ね合いが重要になってきます。

 

レシピに70%と指示があった場合、違う種類のチョコレートで代用することはできません。種類が違えば成分構成が変わるからです。重要なのがさきほど説明したカカオ豆粒子と砂糖の割合。カカオ豆の粒子は水を吸う性質があるので、生地が重たくなります。反対に砂糖は溶けるとシロップになるので、生地はゆるくなります。だから、カカオ分70%のチョコレートを使用するレシピに、糖分の多いスイートチョコレートを使用すると、仕上がりが大きく変わってしまうのです。

 

材料さえ選べればあとは簡単。基本的にはチョコレートを溶かして、他の材料を混ぜて、焼くだけです。それでもポイントがいくつかあるので、作りながら見ていきましょう。

キャラメルスパイス風味のテリーヌショコラ

(材料)※18cmのパウンド型1台分

チョコレート(カカオ分70%) 150g
バター            70g
グラニュー糖          50g
生クリーム           50g(35%)

全卵            2個(100g)

チャイ用スパイスミックス    小さじ1

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<タカナシ乳業>純生クリーム 35%(200ml)395円

<那須ファーム> ぴよっこ(6個入)432円

<カルピスバター>特選無塩バター(450g)1,575円

<朝岡スパイス>チャイマサラ(30g)573円

 

 

1、パウンド型にオーブンペーパーを敷き、オーブンを170℃に予熱する。チョコレートは細かく刻み、バターは小さく切り、あとからチョコレートと混ざりやすいように常温に戻しておく。

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2、キャラメルクリームをつくる。小鍋にグラニュー糖と水大さじ1(分量外)を入れ、中火にかける。砂糖が溶けて、ぶくぶくと沸いてきたら弱火に落とす。次第に外側から色ついてくるので鍋を傾けるようにして静かに混ぜながら茶色く色づくまでさらに加熱する。

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火を止め、生クリームを一気に加える。

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ゴムベラなどでかき混ぜ、チャイ用スパイスミックスを加えたら出来上がり。

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3、ボウルに細かく刻んだチョコレートを入れ、静かに沸かした湯に浮かべて、ゴムベラで混ぜながらチョコレートを溶かす。チョコレートが溶けたらバターを加え、均質になるまでさらに混ぜ、湯煎から外す。キャラメルクリームを加えて、混ぜ合わせる。(このときのチョコレートの温度は50℃くらいが目安)

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チョコレートの溶かし方

チョコレートを溶かすのは38℃以上の湯で湯煎するのが簡単です。温度が高いほど早く溶けますが、あまり高すぎない60℃〜70℃くらいまで安全でしょう。

電子レンジを使って溶かす方法もありますが、その場合は頻繁にかき混ぜ、温度が高くなりすぎないように注意しながら加熱する必要があります。チョコレートは熱伝導性が低い=熱が伝わりにくい食材です。そのため、細かく砕き、ゴムベラで混ぜながら加熱しましょう。

溶かしたチョコレートにバターを加えるのは、コクを足すためです。また、生地のチョコレートの割合を下げることで、カカオ豆粒子が水分を吸って膨らみ、くっついてボソっとなるのを防いでくれます。

 

 

4、ボウルに卵を溶き、ゴムベラや泡立て器(泡立て器を使う場合は泡立てないように注意)で混ぜながら50℃になるまで湯煎で温める。

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5、温まった卵を3のチョコレートのボウルに何回かに分けて加え、空気が入らないようによく混ぜる。

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パウンド型に流し込み、170℃のオーブンで12〜15分焼く。そのまま冷まし、冷蔵庫で6時間以上冷やしたら出来上がり。

アレンジする場合

テリーヌショコラはチョコレートが入ったカスタードの一種で、配合を変えることで様々な味や食感が楽しめます。今回はひと味違うテリーヌショコラにするためにキャラメルクリームを加えました。生クリームの水分が加わることで、仕上がりが滑らかになります。

 

溶かしたチョコレートに他の材料を加えていきますが、このときは温度に注意が必要です。冷たい液体を加えるとチョコレートが固まってしまうので、卵は湯煎で温めておきましょう。チョコレートの脂肪の結晶は50℃で溶けるので、この温度が一つの目安。50℃のチョコレートに同じ温度の卵を混ぜていきますが、しっかりと混ぜると乳化状態が安定し、仕上がりがよくなります。全体が滑らかになればOKです。

 

焼く時間は12分程度。卵に火が入りさえすればいいので、長く焼く必要はありません。さきほど述べたようにカスタードの一種なので、湯煎焼きにしたほうが失敗は減りますが(焼く時間は同じです)今回は簡単にするためにそのまま焼きました。焼く時間が短ければやわらかい仕上がりになりますし、しっかりと焼き込むとケーキらしいややぼそっとした食感になります。

 

焼き上がりの目安はやわらかいくらいで大丈夫。原材料がチョコレートとバターなので、冷やせば固まります。冷えたものを型からとりだし、温めたナイフで切り分ければ完成です。

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チョコレートはロマンティックな気分になる食べ物。ここ最近はチョコレートの選択肢が格段に増えたので、かじってみて好みの味がするチョコレートを選べば、おいしくできること間違いなし。滑らかでクリーミー、濃厚な味わいなので、お気に入りの紅茶かコーヒーと一緒にどうぞ。バニラアイスクリームを一盛り添えるとさらにリッチなデザートになります。

 

 

 

Text&Photo:Naoya Higuchi 

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