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2021.3.3 UP

スイーツの賢人が語る!“おいしい”の新常識2021

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日常の小さな幸せを見つめ直し、人とつながる大切さを再確認したこの1年。各分野でさまざまなイノベーションが起こり続けています。 たとえばお菓子の世界では、生ケーキとの違いが分からないほどレベルの高い冷凍スイーツが登場したり…。お菓子のプロフェッショナルたちが、この1年を振り返りながら、スイーツの“ニューノーマル”について語り尽くします。

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※写真左から、

<ピエール・エルメ・パリ>アジア支部代表 リシャール・ルデュさん

<ピエール・エルメ・パリ>創設に参加。日本の統括シェフ・パティシエを経て日本代表に。2018年フランス農事功労章シュヴァリエ受章。

 

<榮太樓總本鋪>代表取締役社長 細田 眞さん

文政元年創業。「温故知新」の社風の下、革新的な提案を続ける。2007年、あめ専門ブランド<あめやえいたろう>をオープン。

 

<パティスリー・サダハル・アオキ・パリ>代表 青木定治さん

単身渡仏後、2001年にパリで開業。あくまで基本に忠実に、独自のスイーツを展開。フランスで数々のタイトルを獲得し続ける。

どんな時にあっても、お菓子の本質は変わらない。

※以下、敬称略

[青木]

あれはちょうど昨年のバレンタインの時期でしたが、街から人の姿が消え、僕もパリへ帰れなくなって。準備していたたくさんのチョコレートの在庫も心配でしたが、これまでの日常がどこに向かっていくのかがまったく見えないことの衝撃は凄まじく、32年のパティシエ人生の中でも初めての経験でした。

 

[リシャール]

私もとてもショックを受けていましたが、自然の試練とともに生きてきた日本人は、どんな新しい生活様式にもしなやかに適応していけると信じていました。では私たち“お菓子屋さん”はそんな新しい世界の中でどうワクワクをお届けできるのか。これまで以上のたくさんのチャレンジを重ねながらお菓子の本質と向き合いました。

 

[細田]

我々はまず、このような非常事態でも、大福などのご自宅で召しあがっていただくような和菓子の需要が落ち込まないことにとても驚きました。どんなことが起きても、お菓子は人々の心を癒す、という本質を改めて認識することができました。

 

[青木]

僕は若い頃、チョコレートがピカピカに輝いていたり、何かと派手なデザインのお菓子を作るのが好きでしたが、今は、焼き立てをいただいてほっと心が和むような…、そんなお菓子の原風景に惹きつけられます。ギフトの需要が多い時期は、お菓子を作っている時間よりも包装している時間のほうが長いんじゃない? なんて思ってしまったり…。 もちろんそんなことはないのですが(笑)、お菓子の本質に立ち返る貴重な1年となったことは確かです。

 

[細田]

原点に立ち返る。洋菓子も和菓子も状況は同じですよね。

 

[青木]

立ち返ると言えば、昨年の自粛期間中、観ていたテレビでフルーツの生産者の方たちが打撃を受けていることを知り、なんとか力になりたいとコンフィチュールを開発することにしたんですね。軽井沢のアトリエで、糖度を測って砂糖の量を決めて…ということを繰り返す中で、同じイチゴでも1つ1つ甘さが異なるという当たり前のことに気付かされました。パリではここまでじっくりフルーツと向き合う時間もなかなかなかったので、僕にとってとても貴重な時間となりました。

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ピエール・エルメ・パリ〉リシャール・ルデュさん

 

冷凍スイーツの進化がお菓子の新常識を作る。

[リシャール]

ステイホームでなかなか出かけることができない日々が続きましたよね。そんな時こそおいしいお菓子が役に立つはず!と、昨年はご自宅に生のケーキをお届けするデリバリーサービスに初めて挑戦したんです。多くのお客さまに喜んでいただけましたが、良い状態でお届けするために、非常に神経を使いました。そんな中で、日本の優れた物流と組み合わせれば、むしろ冷凍にしたほうが万全な状態でお届けできるということに気づいたんです。冷凍スイーツの新作「チーズケーキ イスパハン」は、正しく解凍すれば食感や風味まで非常に理想的な状態で楽しめるんですよ。

 

[細田]

解凍方法も重要ですよね。〈あめやえいたろう〉でも今回、初めてご家庭で解凍されることを前提に、「スイートリップ×コガネイチーズケーキ」を開発したのですが、冷凍庫から冷蔵庫に移して解凍2時間、ぜひおいしい瞬間を逃さず召しあがってほしいです。この商品は、解凍時間をあえて短くすることでフローズンヨーグルトのような食感も楽しめるんですよ。つくる側にとっても、新しい発見の連続です。

 

[青木]

従来のアントルメグラッセ(アイスケーキ)などとはまた違う新しい楽しみ方やレシピが派生していくでしょうね。

 

[細田]

オンライン販売の需要も伸び続けている状況で、この新しい冷凍スイーツの流れをもっと深く追求していきたいですよね。私自身、自粛期間中には家での食事にこれまでにないほど冷凍食品を活用しましたが、本当においしくできていて、メーカーさんの努力に感銘を受けたんです。我々も負けていられないと奮い立ちました。

 

 

[青木]

お話ししながらさらに新しいお菓子のアイデアが浮かびました(笑)。たとえば、ゼラチンの量を減らしてゆるめのジュレに仕立て、解凍してフォークを入れた瞬間にジュレがとろとろ〜っと流れ出るような…。お菓子の着地点はショーケースではなく、お客さまが召しあがるその瞬間に持ってくるべきで。そこにフォーカスすることで、新境地がどんどん拓けていく予感がします。今回〈パティスリー・サダハル・アオキ・パリ〉からご紹介する「ヴァランシア」は、うちの定番商品より柔らかめに仕上げていますが、崩れる心配がない冷凍ケーキだからこそ叶えられたレシピなんですよね。

 

 

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〈榮太樓總本鋪〉細田 眞さん

 

[リシャール]

そんな冷凍スイーツならではの新しいおいしさを堪能していただくためにも、正しい解凍の手順を踏むことが重要になってきますよね。〈ピエール・エルメ・パリ〉では、日本人のアーティストとコラボレートして、説明書代わりにイラストで解凍のコツを解説したかわいいリーフレットを作ったんですよ。

 

[青木]

なるほど。そうやって作り手が工夫しながら発信していくといいですね。たとえばマカロンは、クリームの水分が生地に移動してからが食べ時。箱の内側につく水滴がなくなるまで冷蔵庫から出さないとか、食べる直前に常温で少し置くとか、細かい解凍のコツがいろいろあったりしますからね。

 

[細田]

ご家庭の冷凍庫は業務用のような瞬間冷凍ができないので、食べ物が乾燥しやすいという課題もありますよね。和菓子の世界では、食べ切れない分を冷凍されるお客さまが意外に多いのですが、水分が抜けて味が落ちないか内心ハラハラです。

 

[リシャール]

ショッピングの前にあらかじめ冷凍庫内のスペースを空けておくような計画性も必要かもしれません。つい数日前、冷凍ストックフードストアに市場調査に行った際、つい楽しくなって大量に買い込んでしまいましたが、結局、冷凍庫に入らず、ストックフードだというのにストックできないまま食べ切る羽目になってしまいました(笑)。

 

[細田]

新しい生活様式を受けて、ご家庭用の冷凍設備も今以上に進化していくとうれしいですね。冷凍スイーツがさらに発展していくには、作り手とお客さまの常識が共に進化していくことが肝心になってくると思います。

 

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〈パティスリー・サダハル・アオキ・パリ〉 青木定治さん

 

 

冷凍技術、それはワクワクを届けるための新しい様式。  

[リシャール]

頑なにこだわりを貫いてきた私たちお菓子職人も、この1年、お客さまをワクワクさせたいという一心で意識も常識もどんどん進化しています。冷凍の生ケーキという企画もその一つです。“冷凍なんて…”というネガティブなイメージもあるかもしれませんが、新しい常識になっていくだろうという確信もあります。

 

[青木]

冷凍という手段はこれまで、お客さまにわざわざお知らせすることのない裏方の技術でしたしね。でも、昨年実施した冷凍クリスマスケーキのデリバリー企画がとても好評だったこともあって、いよいよポジティブな技術として積極的に打ち出す時代が来たなと感じています。

 

[細田]

リモートワークという手段で“職場”の常識が一新したように、お菓子の世界もどんどん進化させていきましょう。リモートワークといえば、昨年は私もオンライン会議を初めて経験しました。最初はSFの世界のように感じましたが、移動時間も不要だったりとメリットが多く、これはいいなと。普段からきちんとコミュニケーションがとれている相手なら、まったく問題ないことも分かりましたし、出張や外出の回数が減った分、企画会議や新商品の試食に顔を出せる機会も増えました。さすがに試食だけはオンラインではできませんからね。

 

[リシャール]

オンラインではSNSのライブ機能を使ってお客様とコミュニケーションをとる企画を実施しました。初めての試みでしたが、お客様とつながれることの幸せを改めて実感した貴重な体験でした。

 

[青木]

繊細なスイーツをオンラインで注文できるだけでなく、全国のお客様と直接コンタクトがとれる時代が来るなんて!この先の新しい時代とともに、お菓子界もどんどん進化を遂げていくのでしょうね。

 

[細田]

今回、うちでは冷凍というテーマをきっかけにクリームチーズという洋の食材を使いましたが、そのうち“和菓子”と“洋菓子”という区別さえなくなるかもしれませんよね。

 

[青木]

それはあり得ますね。洋菓子に抹茶を使うのは邪道だなんて言われていた時代がありましたが、パリにいた僕は気にせず取り入れていました。その抹茶も今では洋菓子界で当たり前に使われる材料になりましたから。

 

[細田]

逆に我々が生クリームやチョコレートについて教えていただいたりして…。そうやって、そのうち何か一緒に作れたら楽しいですね。今後、世の中がまったく同じ元の状態に戻ることはないと思っています。ですが、こうやってしなやかに進化し続ければ、どんな状況下にあっても萎縮する必要はないと確信しています。

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〈ピエール・エルメ・パリ〉 チーズケーキ イスパハン(日本製/約直径15×高さ4㎝/1個) 4,536 円

[商品情報を見る]

ビスキュイ、ジュレ、チーズムースを組み合わせたチーズケーキ。多彩な食感にローズ、フランボワーズ、ライチの風味が溶け合う「イスパハン」の華やかなフレーバーが広がる。

 

おいしく召しあがるためのコツ:箱を開けるのは、冷蔵庫で解凍が完全に完了してから。賞味期限は冷蔵庫で解凍されてから2日以内。

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〈あめやえいたろう〉スイートリップ × コガネイチーズケーキ 各50g/3個入(1セット)2,484 円

[商品情報を見る]

みつあめをリップグロス状に仕立てた名物「スイートリップ」をオリジナルクリームチーズに合わせた新作。コンコードグレープ、あまおう、ゆずの3種類の味わいを楽しめる。

 

おいしく召しあがるためのコツ:冷蔵庫で2時間解凍。ねっとりという表現がふさわしいほど濃厚な食感に。

 

※販売期間: 3月3日(水)~3月16日(火)

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〈パティスリー・サダハル・アオキ・パリ〉冷凍 ヴァランシア&マカロン 5P(1セット)5,724 円

[商品情報を見る]

オレンジのクリームと香ばしいプラリネを重ねた「ヴァランシア」を冷凍でお届け。軽やかな食感に焼き上げ、なめらかなクリームをサンドしたパリ直輸入のマカロンとセットに。ケーキ:日本製/1本 マカロン:フランス製/5P 約縦5.5×横14.5×高さ3.5㎝/1本

 

おいしく召しあがるコツ:マカロンは半日〜1日、ケーキは約6時間かけて冷蔵庫で解凍。マカロンは食べる前に常温で10分置く。  

 

※いずれも三越伊勢丹オンラインストア限定

 

その他冷凍ケーキはこちら

[記事詳細を見る]

写真:福田喜一、和田裕也

スタイリスト:chizu

フード:尾身奈美枝、木村遥

文:藤城朋子

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