甘いものとお茶でほっとひといき。
凛としたプロダクトが生まれる現場には穏やかな時間が流れていました。
「地下の食料品売り場がすごく好きで、よく買い物に行きます。華やかで、おいしいものが揃っていて。訪れるだけでワクワクできる場所だと思います」
伊勢丹新宿店についてそう話すのは、器作家のイイホシユミコさん。和洋問わず、甘いものが好物だというイイホシさんがおすすめしてくれたのは、〈亀屋友永〉の「大納言」。その名の通り、上質な大納言を使っ
た和菓子で、大粒の小豆餡を白いすり蜜でコーティングしてあるのが特徴。
「もうずいぶん昔のことですね。『大納言』に出合ったのは。もともと京都に本店を構えるお店なのですが、私自身は伊勢丹新宿店で知りました。自分用のおやつにも購入しますし、お客さまに手土産として持っていくことも多いです。特に海外のお客さまからの評判はとても良いですね。どんな方にも喜んでいただけるお菓子です」
味について聞くと、「とにかく小豆がおいしい!」とイイホシさん。「甘さの中にしっかりと小豆の風味が感じられて、つい『もう一つ…』
と手を伸ばしたくなってしまいます。生菓子よりも大げさではないうえ、きちんと品もあるので、ちょっとした来客があった時のお茶請けにもぴったりです」
大げさではないけれど、きちんとしていて上品。それは、イイホシさんの作る器にも言えること。
「気軽に普段使いができて、だけどちょっと盛り付けると日常がパッと素敵になるような作品が作れたらいいなと思っています。基本的には量産型のプロダクトを制作しているのですが、どの作品でもいちばんに大切にしていることは、“清潔であること”。温かみがあり、普段使いの中にも、どこか凛とした雰囲気と適度な緊張感がうまれる商品でありたい」
撮影が一段落すると、「お茶を淹れたので休憩しましょうか」と声をかけてくれた。イイホシさんの器に美しく盛り付けられた「大納言」を、濃い日本茶とともにいただく。
「このアトリエは本当に静かで、制作するには最適の場所だと思っていますが、普段は仕事に追われがちなので、あまり穏やかには過ごせていないのが正直なところ。ただ、そんな慌ただしい毎日の中でも必ずお茶の時間はとるようにしていて。お店のスタッフにも『はい、お茶の時間にしてください』と配ってまわっています(笑)。ほんの5~6分のことですが、これがあるとないとでは大違い。私にとっては、心がほっと落ち着く大切な時間なんです」
〈亀屋友永〉大納言(20個入)1,296円
伊勢丹新宿店本館地下1階 甘の味/茶席菓子
「カラフルな箱が印象的。開けた時に新鮮な驚きがあります」。小皿とカップは伊勢丹新宿店でも取り扱いのある「ReIRABO(リイラボ)」シリーズ。※1 伊勢丹新宿店 本館1階 婦人雑貨/イセタンシード・三越伊勢丹オンラインストアで一部お取り扱いがございます。
1980年代に建てられた、コンクリート造りのモダンな建物がアトリエ。
ろくろで成形する時に、コンパスとして使う道具。
ヘラやカンナなどはあまり多くの数は使わないそう。
ろくろは電動タイプ。
ここでは作品や商品となる原型を作っている。
「 私は作ることはもちろん好きだけれど、それ以上に“食器”が好き。」と、イイホシさん。
電気窯はアメリカのもの。
自身作の花器に生けたチューリップが、彩りを添える。
イイホシユミコ
器作家
兵庫県生まれ。京都嵯峨芸術大学陶芸科卒業後に〈yumiko iihoshi porcelain〉を立ち上げる。東京と大阪にショップあり。3月31日より本館1階イセタンシードにて、コーヒーを愛するブロガー、ヴォーン氏がプロデュースする雑貨ブランド〈COFFEE TIME WITH VAUGHAN〉の期間限定ショップがオープン。それを記念して、ヴォーン氏とコラボしたオリジナルカラーのコーヒーカップが展開される。
写真:太田隆生
取材・文:瀬尾麻美