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2021.4.6 UP

伊勢丹新宿で養蜂がスタート! “吸い”も“甘い”も知りつくす。 新宿生まれの天然はちみつができるまで。

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「しんじゅQualityみつばちプロジェクト」×「伊勢丹新宿店」 <MIEL ISETAN SHINJUKU>レポート第1回

構想から2年。大都会・新宿の伊勢丹ビル屋上でミツバチを育てる取り組みがスタートしました。「ISETAN FOOD INDEX」では、ミツバチの成長から採蜜、一つの商品になるまでを随時レポートしていきます。第1回は、伊勢丹新宿店と新宿区障害者福祉事業所等ネットワーク「しんじゅQuality」によるプロジェクト「都市養蜂」についてお届けします。プロジェクトは、どんなきっかけから始まったのか。また、健気で愛らしいミツバチの生態や、養蜂の極意まで、知ればさらにはちみつがおいしく味わえる、“きほんのき”をお勉強。

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新宿生まれの希少なはちみつ「新宿しQハニー」は、さまざまな花の蜜を集めた「百花蜜」。桜やバラ、ゆりの木など季節の味わいが楽しめる。(写真提供:しんじゅQualityみつばちプロジェクト)

 

 

はじめにお話を伺ったのは、新宿区内で障がい者が関わる初の都市型養蜂「しんじゅQualityみつばちプロジェクト」を発案した「社会福祉法人東京ムツミ会ファロ」の管理者・徳堂泰作さん。

「『ファロ』はおもに障がいのある方の仕事や生活をサポートすることを目的に活動しています。障がいのある方がイチから作りだせる“自主製品”を探すなかで、新宿区は日本で初めてセイヨウミツバチが飼育された新宿御苑を擁し、信濃町には養蜂場もあったという由緒ある土地柄、都市養蜂に興味がありました。はちみつは消費期限が長く、廃棄部分がほとんど出ないうえ、お菓子や化粧品にも活用できて需要が多い。さらに、養蜂作業においても、せっかちな人だとハチを興奮させてしまうのですが、障がいのある方ならではのゆっくりと丁寧な動作の作業が向いている人もいます。」 

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「新宿区障害者福祉事業所等ネットワーク」が掲げる目標の一つは、障がいのある方の工賃アップ。ムツミ会をはじめ事業所ごとでは障がいの種類によって受注できる職種が限られてしまうが、複数の事業所で共同受注することで、各事業所が得意とする工程を振り分けて、大量受注が可能に。(写真提供:しんじゅQualityみつばちプロジェクト)

 

 

「しんじゅQualityみつばちプロジェクト」では、障がいのある方が中心となり、ビル屋上での養蜂作業をはじめ、採蜜後に遠心分離機にかけ、漉して、瓶詰め、ラベルや値札貼り、箱詰め、使用器具や瓶の洗浄まで、障がいに応じてさまざまな仕事が行われているのだそう。伊勢丹新宿店では、1瓶のはちみつにたくさんの障がいのある方が関わるこのプロジェクトに賛同し、2020年9月より、各店舗でこの新宿産の天然はちみつを使ったスイーツを販売。今後、スイーツに限らず惣菜などでも、安定的・長期的にこの取り組みを一緒に続けていくため、養蜂できる屋外スペースが極めて少ないという新宿区内で3つめの養蜂場として、伊勢丹のビル屋上を提供することになりました。

今回、伊勢丹のビル屋上で飼育されるハチは、穏やかで育てやすいと言われるセイヨウミツバチ。このプロジェクトの養蜂アドバイザーであり、「東京大田青果物商業協同組合」副理事長を務めるかたわら、個人でもセイヨウミツバチの養蜂を行う中里仲司さんに、ミツバチの生態について伺いました。

「もともと私も養蜂初心者でしたが、長年、青果市場を見てきたなかで、花粉を運び農作物作りに貢献するミツバチのありがたさに気づき、趣味で養蜂を始めました。例えばいちごは、40〜50年前まで人間の手によって受粉をしていて変形したものが多かったのですが、今はミツバチがクルッと周って綺麗に受粉してくれるため、丸みの美しいイチゴが当たり前になりました。国連環境計画(UNEP)のアヒム・シュタイナー事務局長も『世界の食料の9割を占める100種類の作物種のうち、7割はハチが受粉を媒介している』と発表しています。ここ数年、ミツバチが世界中で絶滅の危機にあると各メディアが報じているのは、ミツバチがいなくなることは自然界だけでなく人類にとっても大きな問題であるからなんです」

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伊勢丹ビルの屋上で、5箱の巣箱をお迎えする準備中。

 

 

今回は、北海道・余市から越冬のため茨城県で育てられていたミツバチを新宿の伊勢丹ビル屋上に“お引越し”して育てるプロジェクト。都市養蜂には東京都への蜜蜂飼育の申請提出の義務があるほか、大きな任務があると言う中里さん。

「巣箱は、一匹の女王蜂と複数の働き蜂から成り立っています。毎年、春から夏にかけては週2回ほど女王蜂がきちんと育っているか、産卵などをチェックする『内検作業』があります。女王蜂の元気がなく卵の産みが悪かったりすれば、次の女王が育つように人間が手を加えることがあるのですが、女王蜂がいる間に働き蜂によって新たな女王蜂が擁立されることもあるんです。すると、古い女王蜂は新女王蜂に巣を譲り、半数ほどのミツバチたちを引き連れて、新たな住み処を探しに巣を出てしまうのです。これは『分蜂』と呼ばれ、春から夏にかけて、軒先などに大量のミツバチが巣を作っているのを見かけたことがあるかもしれませんが、『分蜂』が起きてしまわないようこまめに巣の中の様子をチェックすることが、都市養蜂でもっとも大切なことと言えます」

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春から夏にかけて、1箱(1群)で毎日約2000匹ずつ産卵が繰り返されるという。巣箱が手狭になると分峰が起こりやすくなるため、内検は小まめに行う必要がある。

 

 

一般的に、ミツバチとスズメバチなどの差がわからず一括りで怖がってしまう人が多いけれど、ミツバチは基本的に自分から襲ってくることはなく、分峰を見かけても蓋を開けたりして蜂を興奮させなければ向こうから襲ってくることはほぼないそう。それどころか、女王蜂の寿命が1〜3年(最長8年)に対して、働き蜂は最盛期でも15〜38日と短命。巣箱の中の湿度や温度を一定に保つため、何万匹がいっせいに羽ばたきで風を送ったり、持ち帰った水を巣箱に撒くなど、甲斐甲斐しい働き蜂の姿は「我が子のように思えてくる」と中里さん。

これから、伊勢丹ビルの屋上で育てられるミツバチたちの一挙一動が見逃せません!

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北海道・余市町から越冬のため茨城県を経て、新宿にある伊勢丹ビルの屋上へ。1箱に1万匹以上のミツバチが生息する。

 

愛すべきミツバチの生態に触れたところで、次回は、北海道・余市町から越冬のために茨城県で養蜂されていたミツバチたちを伊勢丹のビル屋上へお出迎え。巣箱の構造から、ミツバチたちを興奮させないための工夫など、現場ならではのリポートをお届けしますのでお楽しみに!

<MIEL ISETAN SHINJUKU>は随時情報公開中☟

https://www.mistore.jp/shopping/feature/foods_f3/honey_shinjuku_f.html

 

写真 福田喜一

取材・文 藤井存希(FOODIE編集部)

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